森での再会 4
ルルはヴィリーの後をついていくと、家からほんの少し離れた場所で、二人の青年が倒れているのが見えた。
驚いたもののすぐには近付かず、注意深く周りを観察していると、青年の傍らに白い小さな花が咲いているのを見つける。
口元をハンカチで覆い花粉を吸い込まないように慎重に近づくと、ひとまず二人の青年の心臓が動いているかを確認した。
意識を失っているだけで、心音はしっかりとしていた。
この花粉には、眠気と痺れを起こさせる作用があるので、たぶん倒れている原因はそれだろうか。
「あら、この人達は? もしかして……」
青年の様子を見ながら原因を考えていると、ふと倒れている青年の顔に、ルルはかすかに見覚えがあった。
しかし、今はその事は後回しだ。とりあえず、このままにしてはおけない。
「ひとまず家に運ばないと……」
ルルは、一旦家に帰り、透けるくらいの薄い布地に水を含ませ、青年達のところに戻ると、青年達の顔や服を簡単に拭うと、最後にその濡れた布を広げ白い花を覆った。これなら、花もあまり傷まずに花粉も飛び広がらないはずだ。
しかし、この青年達をどうやって運ぼうか思案していると、ヴィリーが髪の長い方の青年の服を咥え、ずるずる引きずっていく。
すごい力だ。少々乱暴だが仕方ないと思い、ルルも同じように紅茶色の髪をしたもう一人の青年の服を掴むと、ずるずると引きずっていった。
幸い家まで近かったが、それでもルルにとって青年の体はとても重くて、たちまち汗だくになってしまった。
部屋の中に入れる前に、汚れた上着を脱がせるとあちこち擦り傷が出来ていた。引きずった時に出来た傷だと思い、仕方ないとはいえ申し訳なく思った。
「あとで、ちゃんと治療しますからね」
意識のない青年のそう声を掛けると、その後も少々荒っぽい方法ではあったが、なんとか二人を寝室のベッドに寝かせることに成功した。
ここは昔、泊まり込みで研究をしていた時、親子三人がくっついて一緒に眠っていたから、大の男が二人というのは多少、窮屈かも知れないが、何とか収まっていた。
へとへとだったが、力を振り絞って残りの服を脱がすと、まずは擦り傷の手当から始めた。
傷口を水を含ませた清潔な布で汚れを拭いとり、薬を塗り込む。その他の汚れている所も拭いて回った。青年はほぼ裸の状態であったが、今のルルは治療に専念しているためか、恥ずかしいという感情は吹き飛んでいた。
二人の怪我の治療が終わると、次は痺れの解毒薬を飲ませたいところだが、眠っている状態で飲んでくれるのか不安だった。
とりあえず、薬草を煮出し薬の準備をする。少し冷めたところで、スプーンで掬うと、奥に寝かせた髪の長い青年の頭を少し浮かせて飲ませてみると、無意識ながらも、ほんの少し口に含んでくれたようだった。
今度は手前の、短い赤髪の青年にも同じように、スプーン一杯分の薬を飲ませてみたが、こちらはあまり上手くいかず、ほとんどこぼしてしまっていた。
「やっぱり、目を覚ましてからじゃないとダメみたいね……」
痺れの方は、後遺症が残るほどの強い作用はないはずなので、起きてからもう一度ちゃんと解毒薬を飲ませて、後はたっぷり水分をとらせれば、2〜3日もすれば、体から抜けてくれるはずだ。
「ヴィリー、二人の様子見ててね」
目を覚ますまで、二人の汚れた服を洗濯でもしようと思い、ヴィリーにそう言い残すと井戸に向かった。




