森での再会 1
「何だとっ! あの子を村から追い出しただと?」
アランの剣幕に、村の長は思わず下を向いた。そんなアランをなだめまず事情を聞こうと、努めて冷静に言ったルーカスであったがその表情は険しい。
「それで、あの子は今どこに?」
「この先の、森へ……」
王都へ戻り、救援物資の手配や、水路事業の申請、その他もろもろの報告をこなしている間も、二人は助けた少女の事が気がかりで仕方なかったが、手続きが多く、他の仕事もあったため、なかなか身動きがとれなかった。
そして、やっと一段落したあと、水路事業のためすでに王都から村へと派遣された指導兼責任者への資料や連絡事項を届けに行く口実を作り、あの少女の様子を見に行こうと、再びルグミール村を訪れたのだった。
しかし、時はすでに遅く、村に少女の姿はなかった。
その事を知りどういう事かと、ものすごい剣幕で村の長に詰め寄るアランをルーカスが何とかなだめ、事情を聞くことになった。
そして、村の長から衝撃の事実を告げられる。
自分達が助けたあの時の少女が、何と森の中で生活をしていると言うのだ。
その事にまたもや激怒するアラン。ルーカスも確かに彼女の考えにも一理あると、理解は示しても、彼女へのこれまでの仕打ちを思うと、やっぱり、女の子が一人森で暮らすなどあってはならない事だと思った。
そして、そのような事態に陥った事に、ぶつけようのない怒りを覚えた。
そして少女が森で暮らす事になった事を知ると、すぐさま、その森の家へ向かおうとするルーカスとアランを、村の長が慌てて引き止めた。
「お待ちくだされ。あの森は神聖な森とされとりますが、同時に「迷いの森」とも呼ばれ、ここらでは恐れられており誰も近付かん場所です。ルルは幼い頃より、両親と一緒に森へ出入りしていて迷う事は無い様ですが、あなた方が森へ入ってもルルの家に辿り着けるかどうか……。連絡手段として、森の入口に郵便箱を置いております。まず、手紙で知らせてみてはどうですかのう?」
村の長の言うことももっともだったが、二人の脳裏には、あの日、涙でぐしゃぐしゃに濡れたあまりにも儚い少女の姿と、そのあとふわりと花が綻んだように微笑んだ顔が思い浮かんだ。
――もう一度、会いたい。
会ってひと目あの子の元気な姿が見たい。
迷いの森だろうが、何だろうが二人は迷いもなくそう思った。
こうして、村の長の引き止める言葉を振り切り、二人は少女が暮らす森へと向かった。
普段手紙のやり取りをしている郵便箱とやらを探す。
自分達は警備隊という仕事柄、日々体も鍛えているし、野営も慣れっこだ。村の者は神聖な森だとか迷いの森と言って、頑なに近づこうとしないと聞いたが、実際は少女がその中を行き来している森なのだ。
少女がここまで取りに来ているのなら、自分達も大丈夫だろうとそう思っていた。
そして、目的の物を探り当てると、そのまま突き動かされるように森の中へと足を踏み入れたのだった。




