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そして森の少女は、幸せに包まれる 8




「ちゃんとお弁当持った? 何かあった時の薬は持った? 忘れ物はない?」


 ルーカスの怪我もほぼ癒えた頃合いを見計らって、ついに森の奥へ出発する日を迎えた。

 見送る側のライアンの心配ぶりといったら、それはそれは大変なものだった。


 確認の質問もこれで何度目だろうか。

 ルーカスやアランなんかは途中でうんざりして、返答も適当になり最終的には無視を決め込む始末……。

 しかし、ルルだけはそんなライアンの繰り返される質問を邪険にすることなくその都度、丁寧に答えていた。


「サマンサ様が作ってくださったお弁当はルーカス様が、必要になりそうな薬はこの腰に巻いているポシェットに、その他の道具もアラン様とココ様の鞄にちゃんと分類して収納していますから」


 それでライアンの心配が少しでも晴れてくれるならと、根気よく答えるルルだったが……。


「あぁぁぁんっ! もうっ! やっぱり心配だわっ……!」


 そんなルルの健気さがこれまたライアンの琴線に触れるのか、定期的に発狂している。

 だが、いつまでもそれに付き合っているわけにもいかない。


「ライアン……。お前の気持ちも分かるが、こっそりついてきたりするなよ。お前にもいざという時の役割を任せているんだからな」


 先程まで無視を決め込んでいたアランが、とうとう重い口を開きライアンをたしなめる。


「そんなの……、分かってるわよ」


 めずらしくしゅんとした様子のライアンに、ルーカスも声をかける。


「ここにお前がいてくれると思うだけで心強い。何かあればきっと応援を呼んで駆けつけてくれると信じているからな」


「やだぁぁぁ! ルーカスったら、アタシのことそんなふうに思ってくれてたのね!」


 自分を信頼してくれている言葉に、思わず感極まった声を上げたライアンだったが、何故か言った当人を通り越して、その向こうにいたアランに突進した。


「おいっ……! 何故、俺に……抱きつくんだ。今の流れでいうと、抱きつく相手はコイツだろ!」


「もう、野暮なことは言いっこなしよ!」


 ライアンの熱烈な見送りのターゲットがアランに移ると、ルルとルーカスはサマンサと静かに出発の挨拶を交わした。


「サマンサ様、朝早くからお弁当まで用意してくださって、ありがとうございます」


「なんの、なんの。早起きの年寄りが出来ることといったら、これくらいさね。晩ごはんも腕によりをかけて準備しとくから……無駄にならないように、ふたりとも無事に戻るんだよ」


「サマンサ様……。はい、無事に戻ると約束します」


「ああ、俺も。ばあちゃんのご飯楽しみにしてるから」


 ライアンとは対照的に落ち着いた様子のサマンサはルルとルーカスの手をそっと取ると、互いの手を重ねるようにして無事を祈った。


「皆さん、そろそろまいりましょうか」


 そうこうしているうちに、頃合いを見計らってココが出発を促すように声をかけた。


「それでは、まず森の奥への先導はヴィリーにお願いしましょう。その後ろは様子を見ながら交代して進むのがよいかと思われます。とにかくルーカス殿とアラン殿はルルとヴィリーどちらかとはぐれないようにすることが大事ですが、咄嗟の事態にも慌てず冷静に対応しましょう」


 ココの言葉に出発メンバーは互いに視線を交わし合うと、気を引き締めるように頷いた。




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