表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/189

選ばれた少女 5



 村の長の家に着くと、ルーカスは何よりも真っ先に、手早く用意してもらったベッドにルルをそっと下ろした。

 と、不意に何かに引っ張られたような感触がして見てみると、少女が自分の服の端をきゅっと掴んでいた。


 少女の無意識でのその仕草は単純に可愛らしかったので、ルーカスの表情がほんの少し和らいだ。


 けれど、それだけ怖い思いをしたという事でもある。


 無意識に何かに縋るように掴んでいないと、不安なのかもしれないそう考えると、無理にルルの手から離す事はためらわれた。



 正直、ルーカスもアランもひょうひょうとした態度を装っているが、内心は少女をこんな目に遭わせたことへの怒りと、自分たちの救助の遅さに対しての後悔の念が押し寄せていた。


 なぜ、もっと早く駆けつけてやれなかったのか……。


 けれど、嘆いていても起こってしまった事は変えられない。

 ほんの少し、冷静さを取り戻すと、ルーカスはおもむろに上着を脱ぎはじめた。その行動をアランは訝しげに聞いた。


「……おい。なぜ服を脱ごうとしている」


「だって、この子の手を解くの可哀想だろ。掴んでる上着だけだよ」


 アランからは、お前の服なんか汚いとか臭いとか何とかブツブツ文句を言われて、一瞬むっとしたルーカスだったが、少しでも少女に温もりという安心を与えたかったのだ。そしてそのまま自分の服を少女の身体に掛け、その上から布団を被せた。


 これから、村人達との話し合いをしなければいけない。自分達が駆けつける前に少女がどれだけの悲惨な目に遭わされたのか、より鮮明に知る事になるだろう。

 そう思いながら、目の前の少女の寝顔を見ていると、このままずっと傍に居てやりたかった。


「アラン、話し合いはお前に任せる」


 冗談ともつかない感じでそう言い、その場に留まろうとするルーカスの頭を、アランがゴツンと殴る。


「……ってぇ!」


「馬鹿な事言ってないで、行くぞ」


「分かってるって、冗談だよ……」


 アランとてルーカスと同じ気持ちに違いないのだが、自分達はこれから早急に今回の事態に陥った経緯を聞き出さなければいけないのである。

 やらなければならない事がそんな相棒をまあまあとなだめてその場をあとに、話し合いの席に向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ