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今、君と 4




 ようやくお互いの温もりを分かち合えた、ルルとルーカス。


 けれど、ほんの少しルーカスが体を離そうとすると、ルルがその細い腕にグッと力を込めて嫌がる。

 そんなふうにされると、ルーカスとてまたたまらなくなるというもの、再度力強くルルを抱き締めなおすのだった。


 そんな二人のやりとりが、どれくらい続いただろうか。

 ルーカスが安心させるように、その手でルルの背中を何度もぽんぽんと撫でてやると、ルルはやっとのことで腕の力を緩めたのだった。


 ルルの濡れた顔を、ルーカスが優しく拭う。

 けれど、そんなルーカスも自身のその頬を濡らしていて、目尻はまだ赤いままだった。


 おもむろに、ルルがそっと手を伸ばして、ルーカスの頭を撫でてやった。

 お互いがお互いを、どこか小さい子どもにしてやるように、あやしていた。

 けれど、そんなことが、今は、ただ幸せだった。


 そして、お互いの鼓動と息が少しずつ整うと、ルーカスはルルの手を両手で包み込み、ついに自分の今の素直な気持ちを、彼女に告げたのだった。


「ルル。こんな情けない今の自分には、まだ君を幸せにすると言い切れる自信はない……。でも、君と一緒なら、俺は絶対に幸せだという自信はある」


 ……。

 やっとの思いでルルに伝えたルーカスのそんな告白に、それまで二人の様子を見守ってきた一同は思わず目を丸くした……。


「あら、まぁ、今までにない斬新な告白ねぇ……」


 いち早く気を取り直したライアンが、とりあえずそう言った。

 ロマンス小説的な熱烈な愛の言葉を期待していた彼(?)にとっては、少々物足りなく感じたのかもしれない。


「リリィの忘れ形見でもあるルルには、幸せになって欲しいのですが、いささか頼りないような……。あ、こ……これは、失礼いたしました。申し訳ありません」


 二人の詳しい事情はまだよく把握してはいなかったものの、ルルが決めた相手ならと思っていたのだが……。

 ルルに比べて、いささか頼りない印象のルーカスに心配気味のココ。

 しかし、隣にいるサマンサがその祖母である事を思い出すと、すぐさま謝罪したのだった。


「いやいや、こちらこそあのような不甲斐ない孫で申し訳ない……。ただ、今のあれにとってはこれが精一杯というとこじゃろうて……」


 正直、ココが心配するのも無理もない。

 サマンサとて、同じ気持ちなのだから……。

 しかし、申し訳なさを感じつつも、それでもルルが(ルーカス)を選んでくれたことに最大の感謝をしていた。


「はぁ。……っんとに、どうしようもない奴だな!」


 そしてアランの、心底呆れたような声――。


 背中越しに聞こえてくる皆の言葉が、ルーカスにぐさりと突き刺さっている。


 けれど、そう言いながら皆がどれほど自分達の行方を案じていたか……。

 どれほど、祝福してくれているか。


 その優しさが、痛いほど胸に沁みる。


 一方ルルも、これまで一緒に過ごしてきた皆に祝福されながら、今、ルーカスの腕の中にいられる……。そのことに、あふれるほどの感謝と幸福がその胸に押し寄せていた。


 だから、ルルは涙ぐんだまま、でも、精一杯の笑顔で……。


「ずっと、ずっと……そばにいてください。私、これから一生懸命ルーカス様を幸せにしますから!」


 ルルの力強いその言葉に、ルーカスは思わず笑ってしまった。

 本来なら、それは自分が言うべき言葉のはずなのに……。


 けれど、これ以上にないくらい自分達らしい気がして、今はこれで良いのかもしれないと思ってしまった。


「うん、俺を幸せにして。ルル」


 今、ルーカスは、心から幸せになりたいと思えた。

 ルルを、誰よりも幸せにしてあげたいと思った。


 ルルが言ってくれたその言葉を、いつか自分からも自信をもって言える日が来るように……。


 今、君と……ここから始めよう。

 


「ルル。君を、愛してる」




 ――愛してる。




 


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