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約束を胸に 2



 ルルが家にこもっていた間の事を話し終えると、ロッティが涙を(にじ)ませていた。


 この親友が涙するというのはとても珍しいことなのだ。

 だからこそ、逆にルルの笑顔は広がるばかりだった。


「心配かけてごめんね。泣かないでロッティ。私はもう大丈夫だから、これから頑張るわ」


 ルルがロッティの頭を()でながら優しくそう言うと、少しの間大人しくそのままでいたのだが、不意にさっきまでぎゅうっとしがみついていた体を離すと、何やら、むぅ、としたふくれっ面でルルを(にら)んできた。


「そんな姿で何が、頑張るわ、よ」


「え?」


「ちゃんと食べて体力つけないと、あっという間に倒れちゃうんだから」


「ふふっ、そうだね。心配かけてごめんね」


「……ご飯食べてくれたら許してあげる。ほら、たくさん料理を持ってきたから、すぐに用意するね」


「い、今から? あのねロッティ……まだそんなに多くは食べられないから、ちょっとずつね……」


「わかってるって。じゃあ、待っててね」


 ロッティを見送りながら、ルルは「ホントに、分かったのかな……」そうポツンと呟いた。

 しかし案の定その不安は的中し、ロッティがよそった料理の量を見て、ルルは別の意味で倒れそうになった。


 それから、じっくり体力を回復させながら、ルルは本格的に薬師の勉強に取り掛かった。


 最初、ルルの作った薬は村の大人達に無料で利用してもらうことから始めた。

 もちろん両親のノートに忠実に慎重に作っているが、経験が浅いのも事実、お金を取れるレベルかどうかルルには判断がつかなかった。


 確かに、最初は子どもの作った薬に不安を感じる者もいたが、村としては他にあてもないのが現状で、正直助かったと感じる部分もあったのだった。


 最初は傷薬からはじまり、それが思いのほか評判を呼ぶと、そこから徐々に腹痛やせきに効く薬の注文も受けるようになり、少しずつそれらの薬を食糧と交換するようにもなった。


 そして、両親が亡くなってから4年、ルルは16歳になっていた。


 今では、行商に出る人に頼み、王都でも少しばかり薬を売ってもらうようになって、ほんの少しずつ硬貨も手に入るようになっていた。


 両親のいない寂しさが消えることはないけれど、父と母に愛された記憶と、あの約束がルルの胸に今もしっかりと残っている。

 だからこそ、それを支えに何とか独りでも生活をしていけるようになったのだ。

 



 けれど、ひたむきに頑張っているそんなルルに、残酷な現実が迫っていた。



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