ジョブ#2
物凄い短いです。
「<魔剣士>でお願いします。」
俺、逢坂悠斗がそう言うと結晶が眩い光を放ち、視界を真っ白に染め上げる。それと同時に断片的だが映像の様なものが脳に直接流れ込んで来た。
薄暗く、鉄と火薬と血の匂いが充満する部屋で少年は素振りをしていた。年頃の少年が持つ様なバットやラケットではない。部屋を微かに照らす光を受けて冷たく輝くナイフだ。近くには穴だらけのサンドバッグが幾つも転がっている。少年の手は血豆だらけで、恐らくナイフを持つのも厳しいのだろう。額には脂汗を浮かべて肩で息をしながら、それでもナイフを振り続ける。その憔悴しきった顔は8、9歳の子供とは思えないものであった。
映像は変わる。同じ部屋で剣を練習していた。再び映像は変わる。今度は屈強そうな男と戦わされていた。何度も殴られ、蹴られ、叩きつけられ、吐かされて、骨を折られた。それでも闘うしか無かった。
何が少年を動かすのか分からない。でも分かったことは、やらなければ死ぬという事実だけであった。
その映像を最後に光は消えて、辺りは元の静けさ戻していた。さっきの映像は恐らく俺の記憶だろう。ほとんどの何も分からなかったが、まともなものではないことは理解出来た。それよりもーーーー
「これでジョブに就けたんですか?」
「はい、これで貴方は<魔剣士>のジョブに就いた事になります。」
どうやらジョブに就くことは成功したらしい。どれ、新しくなったステータスでもみるか。
「ステータスオープン」
☆☆☆☆☆
逢坂悠斗Lv25 ジョブ 魔剣士
称号 ”異世界から現れし者” ”突発的苦労人” ”兇竜殺し”
スキル <体術> <剣術> <雷魔法> <空歩> <言語理解> <魔法剣> <付与魔法> <魔剣>
固有スキル <技能狩猟> <技能創造> <時空間魔法>
<真実の魔眼> <超成長> <剣製魔法> <捕食者>
”兇竜殺し”……兇竜を殺した者に贈られる称号。
<魔法剣>……魔法剣を操ることが出来るスキル。
<付与魔法>……自身や味方を強化したり、相手を弱化させたりする魔法。
<魔剣>……魔剣を操ることが出来るスキル。
<捕食者>……魔力で捕食者を作り出し、意のままに操る。魔法は無理だがスキルを食べることは可能で、食べたスキルはある程度の条件が合えば会得可能。食べたモノは魔力となったり表記されないがステータスになったりする。
☆☆☆☆☆☆
はぁ、すごいや。もうこれで異世界での危険性が減ったわー。なんて考えていると、疑問が浮かぶ。
「すいません。この<魔法剣>と<魔剣>の違いって何ですか?」
「あ、それはですね、<魔剣>は<魔法剣>の上位互換なんです。<魔法剣>のスキルを持つ人は自分の剣に魔法を付与させたり出来るようになります。<魔剣>は自分の剣に魔剣の力を付与出来るそうです。因みに、<魔法剣>スキルが覚えられる<魔法剣士>や<魔剣士>のジョブで熟練度を上げると、自分の魔剣や魔法剣を喚ぶ事が出来る<魔剣召喚>や<魔法剣召喚>が覚えられますよ。」
「へえ、ありがとうございます。あと、ここらの情報が載ってある本とか売ってませんか?」
「でしたら、新米冒険者に渡されるパンフレットに書いてあるのでお読み下さい。」
「ありがとうございます。では一狩りしたらまた来るので、その時は宜しくお願いします。」
「はい、お気をつけて♪」
☆☆☆☆☆
ギルドから出た俺はそのまま平原に来ていた。平原にはゴブリン等の下級魔物からオーク等の中級魔物等、様々な魔物が存在するし、平原なので見渡しが良く逃げやすい。初心者には絶好の狩り場だ。
「<剣製>、……ユニットエンチャント<魔法剣>」
早速、オーク見たいな奴に出くわしたので<剣製魔法>で剣を作り、<魔法剣>スキルで雷魔法を纏わせる。<闘気>を使っているので体が軽い。俺は剣を構えると、意識を集中させ、オークに向かって走り出す。
今更になって分かった事だが、テンプレ通り俺は強くなっていた。まあ、記憶が無いので元々強かったかも知れないが………。そんな感じで60m位の距離を一瞬で縮める事に成功した俺は片手直剣を震い、斬り付けてみる。オークはいきなり近付いてきた俺にビビるが、こん棒でガードし、直撃を防ぐ。
「グオオオオオ!」
こん棒を俺の魔法を纏った剣によって切断されたオークは怒り、素手で殴り掛かって来る。それを俺はーーー
「セイッ!はああああああ!」
剣を持ってない方の手で迎え撃つ。直撃した互いの拳がグシャッ、と音を鳴らす。オークは見た目通り、膂力が自慢の魔物だ。拳闘士の上位ジョブの高レベル冒険者でもない限り、オークの拳を同じ拳で受けようとする人間はいない。故に、オークは勝利を確信し俺の腕を見た。正確には、俺の拳によって骨が砕かれ、血まみれの自分の腕をーーー
「グ、グギャアアア!」
「煩い!」
絶叫しているオークの首を斬り飛ばし、戦闘を終わらせた。
「うし、剥ぎ取り、剥ぎ取り」
俺は倒したオークをひとまず剥ぎ取る。するとーーー
「きゃ、いや、何をするの!!?」
そんな声が聞こえて来た。聞いてしまったからには取り敢えず行かないと後味が悪い。<闘気>を全開にして、声の方へ向かう。
「いや、止めて!」
「止めて下さい!誰か、助けて……」
「けけっ、そんなに良い身体して男だらけのパーティーに入るからだよ!」
「恨むなら、間抜けな自分を恨みな!」
「ちがいねぇ!ぎゃはははは!」
行ってみると案の定、二人の女の子が今、正しく犯されようとしているところだった。面倒事には首を突っ込みたくないが見ちまったらやるしかないだろう。
「あー、取り敢えず、俺近くにいるんで胸くそ悪いことしないで頂きます?」
「ああん、なんだてめえ。俺に指図すんじゃねえ。」
「良いぞージョワ!やっちまえ!」
声を掛けたらジョワと呼ばれた男が剣を抜いてきた。
「おい、死にたくなけりゃ金置いてさっさと消えろ。」
相手の方は戦う気満々だったので、念のために警告しておく。
「剣を抜いたからには覚悟して貰うぞ。」
「抜かせ、糞が!」
別に油断した訳でも甘く見ている訳でもない。ただ、今の俺の方がコイツらより強いと直感しただけだ。
「そのなめ腐った口、叩き斬ってやる!」
ジョワが突っ込む。持っている剣を乱暴に振り回しているだけなので避けるのは容易い。
「吹き飛べ……!」
俺は、自身に筋力アップの付与魔法を掛けて、男の腹を殴る。すると男はかなり遠くへ飛んで行った。
※(<闘気>は纏っておりません。)
「まだまだ、行くぞ。」
一人を倒した後は残りの取り巻きも同じように飛ばす。そして後ろの二人に向かって声を掛ける。
「大丈夫か?」
ブクマお願いします。