テンプレ
大きな体に穴を開け、血を流しながら倒れているティラノサウルスもどきを見下ろしながら俺、逢坂悠斗は考え事をしていた。
「(え、ナニコレ。どうなってるの?おかしくない?あ、そうか分かった!こいつは見かけだけで本当は弱い魔物なんだ。うん!)」
無理やり納得しつつ、俺はライトノベルの例に習い剥ぎ取りをしてみようと思ったが、重大な事を思い出した。
「俺、剥ぎ取る為のナイフ無いじゃん。」
そう、剥ぎ取る為のナイフが無いのだ。ついでに戦闘用の剣も。あ、そう言えば俺の固有スキルの<時空間魔法>って、なんか別次元の空間作って物を保管出来るんだ!
「……どの世界でも魔法は”イメージ”って言うしなぁ……よし!やって見るか。」
まずは暗くて、時間という概念も無い、空間を思い浮かべる。そして、今度は先程倒したティラノサウルスもどきを思い浮かべた空間に収納するイメージをもつ。するとーーー
「お、消えた。」
なんと俺の目の前から消えたのだ。今度はもう一度空間をイメージして、仕舞ったティラノサウルスもどきを取りだそうしてみる。
「うお、出てきた!」
すると今度はティラノサウルスもどきがいた場所に再びティラノサウルスもどきが現れる。取り出しは可能だな。因みにこの後も様々な実験をした結果、物は生きている生物以外何でも入る。また、異空間は時間が凍結しており物が腐食、劣化する事は無い。他にも収納量は無限、質量や規模も無制限、一定の範囲なら取り出す場所も指定出来る事が分かった。この魔法は<異空間倉庫>と名付ける事にした。
「次は武器だな。折角<剣術>のスキルがあるから剣が良いか………よし!」
今度は<技能創造>を使い武器を、主に剣を作るスキルや魔法をイメージしてスキルに魔力を込める。余談だがスキルに魔力を込める際にはスキル名を念じたり呼んだりしながら魔力を放出すれば勝手に魔力を吸い取るようだ。便利だなぁ。
「くっ……さすがにチートだけあってリスクも大きいな。」
説明にあったようにかなりの魔力を持っていかれた。やっぱリスキーだなぁ。<技能狩猟>も今度試させて貰うとしよう。
(<技能創造>によりスキル<剣製魔法>を習得しました。)
<技能創造>を使って数秒後、脳内にそんな声が流れる。<闘気>のスキルを得た時も聞いた声だ。まあ、まず<剣製魔法>の効果を見よう。
☆☆☆☆☆
<剣製魔法>………魔力を使いあらゆる剣の類いを生み出す魔法。
☆☆☆☆☆
……あれ、フツーに強くね?もうさ、チートを使いこなしてるような気がするよ。もういっか。ボクしーらない!
「さて、ちょっと作って見るか。」
頭の中で<剣製魔法>を唱える。イメージするは、簡素な一振りの直剣。すると、光の粒子が手の上に集まり形を成していく。現れたのは、イメージ道理の簡素な直剣だ。
「ふん、ほっ、やっ、とうっ!………軽いな。」
この世界には”ステータス”が無いし、記憶も無いので自分の筋力がどれ程のものか俺は分からなかったが造った剣は俺にはやけに軽く感じた。
◇◇◇◇
<剣製魔法>にも慣れ、剣で魔物も何回か倒した俺は取り敢えず道に出た。それはもう長い道のりだった。
「そう言えばそうと、今日は随分と昼寝日和だなぁ。」
そう、まだこの世界で目覚めて数時間しか経って無いが今日は絶好の昼寝日和なのだ!広がる青空。清々しいそよ風。暑くも寒くも無い、いい気温。そしてーーー助けを求める叫び声………
「いやいやいや、言ってる場合じゃねえ。早く行かなきゃ!」
そう言って俺は<闘気>で体を強化、全力で走る。強化の具合は凄まじく、かなりのスピードが出た。うわあ、これ使える人の普通はもっと凄いだろなぁ。
あっという間にSOSのあった場所に駆けつける。そこでは恐らく盗賊かなんかの集まりが馬車を襲っていた。その数なんと八人。
「へへ、大人しくしやがれ。お前らには助けなんてこねぇよ!」
などとありふれた台詞を言う頭っぽい男。何て言うかね……もうね、テンプレキタコレ!!
「頭!あそこに誰かいますぜ。」
やべ、見つかった。それはそうとやっぱりあいつ頭だったか。
「あぁ!?……ち、なんだ一人か。まあいい見せしめに殺せ。」
え、嘘。なんかいきなり殺せとか言われたよ!?しかも一人こっちに来たよ!
「へ、運がねえなぁ兄ちゃんよう。まあさっさと死ねや!」
そう言って盗賊(?)Aは持っていた曲刀で斬りかかってくる。だがしかし、その攻撃速度はあり得ない程遅い。
俺は盗賊Aの手首を掴んで攻撃を止める。すると攻撃した本人は「ばかな!」見たいな顔をした。そして体が思い出したかの様に動き盗賊Aを掴んだまま”一本背負い”を極める。
ドゴーーーーーーーーン!!!とあり得ない勢いで鳴ってはいけない音を鳴らして盗賊Aは地面にめり込んだ。
・・・・・・・・え?
「え、………はっ!てめぇら、やっちまえ!」
「「「へ、へい!!!」」」
今度は三人同時。いくら何でも分が悪い。しかし突如俺の頭の中でスパークが弾けた。記憶が戻った訳じゃない。身体が覚えていたことが脳内に流れる感覚。身体が軽い。調子がいい。今なら何でも出来そうだ。
取り敢えず、<剣製魔法>を発動して刃の無い両刃の長剣を作りだす。<闘気>を練り直し、盗賊達へ向かって走りだす。
「ふっ、はああああ!」
日の光を受けた刃が鈍く光り、電光石火の如く駆け抜ける。俺の放った斬り上げ攻撃は盗賊Bの曲刀をへし折りそのまま盗賊Bを空高く吹き飛ばした。
次は近くにいた盗賊Cに狙いを定める。相手も油断無く攻めこんで来るが、その攻撃を長剣で弾き飛ばし盗賊Cの胸元にパンチを浴びせる。すると、殴られた盗賊Cはギャグ漫画よろしく吹っ飛んで行く。最後に<剣製魔法>で創った切っ先を潰してある投げナイフを盗賊Dに当てて、意識を刈り取る。
盗賊Dを倒し終わったところで先に倒していた盗賊Bが落ちてきた。この間僅か一分未満。まあ凄い。
「て、てめぇ!おい行くぞ!」
のこりの二人も来るが、これまた持っていた長剣を煌めかせ意識を奪う。馬車の中にいる人は何か凄いモノを見たように唖然としている。
そして、遂に頭っぽい男が前に出てきた。
「どうやら、俺はお前のことをあまく見ていたらしい。だがもう本気だ。生きて帰れると思うなよ!」
そう言って男は両手斧を構え、突撃してくる。それも今までの雑魚とは比べられない速さで。
しかし今の俺には遅く見える。しっかりと振り下げ攻撃を避け、間を取る。手練れ相手に無理に突っ込んだりはしない。
よく見ると攻撃を受けた地面は抉れていた。かなりの膂力だ。
「おぅら!せいや!どうりゃあ!」
繰り出される怒涛の攻撃を俺は避ける、避ける、避ける、そしてーーー
ギャリイイイイイン!!!
鼓膜をつん裂く様な甲高い金属音が鳴り響き、男の両手斧を跳ね上がる。俺が隙を見て跳ね上げさせたのだ。そして微かな記憶の中の体術を思い出し、渾身の一蹴りを男の顎に見舞う。
「あ、あぐ……あっ……」
<体術>スキルで補正された俺の蹴りは確実に男の脳を揺らし、昏倒させる。
馬車の中の人が再び唖然とするなか、俺は一言。
「あの~、ロープとかあります?」
すいません、遅れました。