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盗賊団狩り②

「それでは、翌朝までには戻りますので」



俺、逢坂悠斗おうさかゆうとは依頼の途中で盗賊団を撃退(?)した後、依頼主と仲間たちと共に近くの村にある小さな民宿で休んでいた。

日は沈み始め、辺り一帯は暗くなって来ている。そろそろいい頃合だろうと思い、依頼主に許可を貰い、一人で村を出た。



目的は依頼の一つである盗賊団の殲滅・・。昼に襲撃してきたやつからアジトの位置は聞き出しから、大まかは分かる。

問題を強いて言うなら精々距離だが、それすらも今の俺には問題にならない。

《飛行》と《加速》。この二つが俺の考えた長距離移動スキルだ。《飛行》は空中浮遊と空中移動を可能にし、《加速》で速度を付ける。そうすることで、俺は一人の時において、圧倒的な移動速度を身につけた。



本来なら、ワープでも作れば早いのだろうが、その手のスキルは一度行ったことのある場所であるという制限がつきそうだし、ワープを具体的にイメージしてスキル化することが出来なかった。



「ま、それでも十分速いがな」



魔力を込めると、身体がふわりと浮く。そのまま上昇して、丁度いい高度まで上がる。

今度は魔力を放出するようなイメージで《加速》を発動させる。身体が空を切り、風と一体化したかのような錯覚を覚える。



「おおっ、こりゃいいや」



空を飛ぶというのは思いのほか気持ちが良かった。空中でできることをなんやかんやと試しているうちに、目的の場所に着いた。

盗賊団のアジトは、出発した村から三十キロ離れた地点にある、ひっそりとした洞窟だった。

一見はただのどこにでもある洞窟だが、俺の真実の魔眼は不自然に漂う魔力の流れをしっかり視認していた。



「結界、か。」


恐らく結界の中に入れば、否応なしに嫌な光景を見させられるだろう。やはり二人を連れて来なくて良かったと心底思った。



特に何をする訳でもなく、結界を素通りする。案の定、結界は防犯用でもあったらしく、数人の盗賊達がやってきた。



「おい、なんだお前は!ここがどこだかわかっ────ブピョッ」



『え?』



なんか比較的高圧そうにしている奴に詰め寄って、《剣製けんせい魔法》で作った簡易的な片手直剣を振るう。男は言葉を最後まで話せずに、胴と首を泣き別れにされた。



「な、お前、いつの間に!」



「くそ、魔法だ!魔法を────があっ」



「マイルーッ! くそ、お前ぇぇ!」



もう一人、男を斬り捨てると、さらに別な男が斬りかかってきた。が、それよりもさらに速くこちらから詰め寄り、首を撥ねた。



「なあっ!ば、化け物め………」



「ありがとうよ。じゃあ死ね」



最後の一人もきっちり殺す。あの男達には俺が消えたように見えたらしいが、実際には違う。俺の身体に染み付いている技────逢坂流と呼ばれる技に“縮地”がある。それを使った。

武術的な足さばきで相手との距離を詰める技。それに《闘気》による身体強化と《加速》を使うことにより、ありえない距離を一瞬で詰めることが可能になったのだ。



「たのもー」



一応、礼儀として挨拶をする。返事は当然ないが、気にせず突っ込むと、正面から魔法の嵐が襲いかかって来た。



対武器付与ウェポンエンチャント、《魔法反射カウンターマジック》」



対武器付与《魔法反射》。《魔法剣》スキルで最初に覚える初期技の一つ。このスキルを纏った剣などで相手の魔法を切りつけると、逆に相手の方に飛んでいくというスキル。

ただし《魔法反射》は発動時に込めた魔力によって弾く事のできる上限や数が変わる。簡単言うなら、十の魔力を込めたなら、一の魔力で放たれた魔法を十回。五の魔力の魔法を二回。十の魔力の魔法を一回跳ね返せる。逆をいえば、それしか弾けないのだが、魔法を天敵とする剣士職には嬉しいものだ。



「ふっ!」



飛来してくる魔法の数々を《魔法反射》付きの剣ではね飛ばしていく。どこからか、「馬鹿な!こんな────グエッ」とか「ありえない。化けも────ノビャンッ」とくぐもった声が聞こえるが無視だ。



「お返しだっ」



パチンッと指を鳴らして魔法を敵の分だけ多重展開する。

発動したのは《剣製けんせい魔法》。ただし、完全な鋼鉄の剣を作るのではなく、剣を象った魔力の塊に留める。

予め作っておいたスキル《地形把握》と《誘導》に《索敵》を組み合わせ、反応した敵ほぼ全員に魔力の剣を向かわせる。

《闘気》を使い続けて習得した《魔力操作》を使って動かしているため、某赤服の弓兵の宝具のような魔法になった。



「名付けて、《形無き剣フォアマスブレードってね」



俺の放った魔力剣は、生きているかのようにスイスイ動き、確実に敵性反応の元に向かう。

所々で、「ぐあっ!」とか「あぐっ!」といったくぐもった声が聞こえるあたり、成果は上々と言えるだろう。



一つ、また一つと敵の反応が索敵から消える。そんな中で、今だ消えぬ反応が五つ。

恐らくそいつらがこの盗賊団の頭や幹部だろう。そいつらが集まっている奥の部屋に向かう。



「お邪魔しま〜すっ!」



一部に穴が空いた大きめな木の扉を思い切り蹴破る。力を込めすぎたのか、扉は大きく吹っ飛んでいった。



「おいおい、随分と礼儀のなってねえ小僧じゃねえか」



しかし、その扉は途中で細切れにされてしまった。声のした方を見ると、四人の男達がいた。



「ま、大方真ん中の椅子に偉そうに座ってる奴が頭で、その取り巻きが盗賊に堕ちた元高位の冒険者といった所か」



「ほお、よく分かったな」



俺の推測を頭と思われる男が肯定した。………ふむ。なるほどまあ、全員中々、強者の雰囲気だ。



「で、なんの用だ小僧。オレの可愛い部下達をいきなり殺してくれたんだ。楽に死ねると思うなよ?」



「ははっ、冗談。それはこっちのセリフだっての」



怒ったらしい。額に青筋を浮かべて取り巻きの男達に命令を下す。



「悪ぃな。これも俺達が生きるためなんでな。死んでくれや」



「いやなに。気にするな。簡単に負けるつもりはないからな」



「言うな小僧。名前を聞いておこうか」



「俺の名は逢坂悠斗だ」



「いい名だ。オレはテルマだ」


元冒険者達のリーダーらしき男が名乗る。


「………ケトラ」


重戦士のような装備の男が名乗る。


「ヤマナだ。よろしく」


少し軽薄そうな男が名乗った。



「御託はもういいかな?じゃあ、始めるか」



瞬間、空気が変わった。

実力者から放たれる、本物の殺気。盗賊団の有象無象を相手取った時とは比べ物にならない緊張感が、今の俺にはむしろ心地いい。


「《豪炎メガフレイム》」



ヤマナと呼ばれた男は魔法職だったらしい。火魔法の中級魔法、《豪炎》を放ってきた。込められた魔力の大きさから、かなりのレベルに達しているだろう。だが────


「《形無き剣フォアマスブレード》」


「なにっ!?」


さっきよりも魔力を込めた一発の《形無き剣》で相殺する。

流石に、相殺されるとは思わなかったのか、驚愕の声を上げて後ずさる。



「ヤマナ下がれ!俺達で行く!行くぞ、ケトラ!」


「承知っ!」



そう言って、俺の前に双剣を携えたテルマと大剣を構えたケトラが躍り出てきた。


「疾!」


「おおおっ!」



テルマは巧みな剣さばきで。ケトラは力強い一撃で攻めてくる。そんな彼らの攻撃を、俺は《形無き剣》で作った魔力剣で切り払った。



「………っ!?」


「馬鹿な!お前は魔法職じゃないのか!」



どうやら彼らは俺のことを魔法職だと思っていたらしい。まあ、洞窟内だと魔法しか使ってないからな。



「んー、魔法職と言ってもあながち間違いではないけども………剣士職でもあるしなー。………なんて解釈したものか?」



「魔法職であり剣士職………お前、魔法剣士か?」



「お、惜しいっ!正確には魔剣士だがな」



「なんだと!?」


「………この歳で魔剣士とはな」


「魔剣士でもここまでの魔法は撃てないはずだ!精々中級魔法を多少使える程度。なのにヤマナの《豪炎》を打ち消す程の魔法を………それも無詠唱なんて………不可能だっ!」



へえ、そうなのか。説明ご苦労さん。




「ま、できるからやったんだけどね」



動揺しつつも、攻撃の手を緩めないところを見ると、やはり元々はなりに高位の冒険者だったのだろう。


「はあっ!!」


「………っ!!」



どちらも、当たればひとたまりもない攻撃だ。しかし、その全てを俺は躱してみせる。



「くそっ!なんで当たらない!」



剣を振るいながら吐き捨てられた言葉を右から左へ受け流しながら、魔法をいくつか準備しておく。

テルマとケトラに使う訳ではない。剣士職には剣で、魔法職には魔法で戦うことにしたからだ。つまりは────



「二人とも下がってくれ。俺の最大威力の魔法が完成した!」



ヤマナの言葉に、弾かれたように後退する二人。流石のチームワークに俺が驚いているとヤマナが勝ち誇った顔で魔法を放ってきた。



「さあ、こいつで終わりだ!

我が炎、太陽の熱を以てくれないの灼炎とならん《紅炎プロミネンス》!!!」



ヤマナの持っている杖の先から出ていた魔法陣にあかい炎が収束して、球体になっているのを見た。

紅炎こうえん。またの名をプロミネンス。その正体は太陽から溢れ出ているガスだ。まんまな名前の魔法だが、秘められている威力は本物だろう。流石に俺でもまともに受けるのはごめん被りたい。

だから、まともに受けない。



「《消滅バニッシュ》」



一言。それだけで、俺に向かってきた圧倒的熱量の魔法は消え去った。防いたわけでも、躱したわけでもなく、消した・・・。これが俺が今回のために創ったじゃじゃ馬スキル《消滅》だ。俺がただ一言、スキル名を口にするだけで対象を完全に消滅させる。文字通り、何もかもを消して、滅する。

とんでもないチートだろう。だがスキルというのは、何も万能ではない。このスキルは生物を消滅させることは出来ない。さらに、消費魔力が多い上に、物事の『核』を捉えなくてはならないので、そう簡単に発動できる訳ではないのだ。と言っても、『核』そのものは《真実の魔眼》で簡単に確認できるのだが………。



「ば、馬鹿な………そんな………俺の魔法がっ、なんで!?」



どうやら錯乱しているようだ。あっさり消されたのが余程ショックだったのだろう。まあ、無理もないと言ったら無理もない。

けれども、それに対する慈悲をかけてやれるほど俺は聖人君子ではない。


「《形無き剣》」


俺の魔法に気が付かなかったのか、錯乱したまま魔力剣に貫かれてヤマナは息絶えた。



「や、ヤマナぁ!お前、よくも!」


仲間を殺されていよいよ余裕が無くなってきたのか、怒気をあらわに斬りかかってくる二人。


「《獣宿しビーストオーラ》!!」



テルマの雰囲気が変わった。攻撃スタイルも。さっきまでの技を突き詰めた攻撃から、どこか荒々しさを伴った獣じみた動きだ。

恐らく《獣宿し》と呼ばれていたスキルだろう。………ふむ。


「オラァッ!」


「ふっ!」


凄まじい俊敏性でこちらに迫るテルマに、俺も同じく縮地による高速移動で対抗する。

重戦士のケトラには到底参加出来ないだろう高速戦闘。めまぐるくしく視界が動き、近づくと同時に打ち合う。

幾度となくその作業を繰り返して、その末に勝ったのは────


「ぐああっ!!」


俺だった。と言っても殺した訳ではなく、膝蹴りを入れて地面に叩き落としただけだ。俺にはやりたいことがあるのだから。



「くっ、何をする気だ!」


俺がテルマに近づくと、彼の顔が恐怖に歪む。逃げようにも先程のダメージが思っていたよりも深刻なのか動けずにいた。

テルマを助けようとケトラがこちらに向かうが《形無き剣》で足止めをする。

俺はテルマの腕を抑えながら、言葉を紡ぐ。



「《技能狩猟スキルハント》」



何気に初めて使うこのスキル《技能狩猟》。所得するのは当然、《獣宿し》だ。

何故《技能創造》で創らないかと言うと、正確には創れないのだ。《技能創造》でスキルを創るには、相応のイメージが必要だ。つまり、そのスキルを使うとどんなことが起こるのかというビジョンを持たなければならない。少しでもあやふやだと、スキルは創れない。故に、こんな時は《技能狩猟》が役に立つのだ。



「はい、もういいよ。バイバイ」


《獣宿し》を奪い終わったので、魔力剣を突き刺し、テルマの命を刈り取る。



「おおおぉぉお………!!!」



その光景を見て怒り狂ったケトラがこちらに一気に走って来た。



「それは悪手だせ。《雷槍》」


雷中級魔法、《雷槍》。雷で形成された身の丈以上もある槍を雷速で飛ばす魔法。いかにケトラの鎧に魔法耐性が宿っていても、魔法による物理的な攻撃はどうしようもあるまい。

《雷槍》はケトラの鎧の隙間を縫って突き刺さり、その身を内側から焼き尽くした。



「これであとはあんた一人だぞ?」


「くっ、こ、この糞ガキ………っ!」



最後の一人になった盗賊団の頭に魔力剣を向ける。


「これだけは使いたくなかったのだがな………」


そう言って、盗賊団の頭は座っていた椅子のすぐ側にあった、壁に埋め込まれている檻を解放した。



「出てこい!冥界の番犬ケルベロス!」



出てきたのは、三つの頭を持った黒いワンコ………言わずと知れた伝説の怪物、ケルベロスだった。






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