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夜の街と飯

はい、お待たせしました。

しかも短いです。ほんとにすいません。

今回は戦闘なしの飯テロ回でございます。

楽しんで頂けると光栄です。

「だぁーーー!! 疲れた!」


俺、逢坂悠斗おうさかゆうとは冒険者ギルドのサブマスター、アッソレとの不毛な決闘に危なげなく勝利を納め、宿屋の自室でゴロゴロしていた。



「なんだよあのおっさん共、俺よか強えんじゃねえか?」



何を隠そうこの俺が疲れた理由、それはアッソレに勝利したあと、俺に群がってきた冒険者のおっさん共に揉みくちゃにされたからだ。


やれお前すげぇなだの、一杯奢るだの、一杯奢れだの、一発ヤラないかだの困ったものだ。


俺は禁断ホモのお誘いは受けない主義なのだ。


そんな訳で疲れた俺はベットでゴロゴログダグダしている。動きたくないったら動きたくないのだ。



「とは言ったものの、腹は減った。どうにかならないものか?

……………助けて、ドラえ〇ん!」



……………すいません、やっぱ今の無しで。マジで恥ずかしいです。



「しゃーねぇ、動くとするか」



俺は、疲れきって萎えた身体に鞭打って、街に出ることにした。








◇◇◇◇◇◇



「ふむ、時には出かけて食べ歩きというのとも、悪くないな〜〜〜」


今いる都市パステルはイタリア中部の都市の街並みに似ている。


石造りの、日本とは違い味があるどこか落ち着く様な建物の並木は、夜だというのに、いつも明るい。


店だけでなく、露店も多くあり、すれ違う人の半分は、各々美味しそうな食べ物を頬張っている。



かく言う俺もその一人だ。近くの露店でいくつか美味そうな串焼きを買って食べ歩いている。



何の肉かは分からないが、焼き鳥の様なもので、歯ごたえがあるが、程よく噛みきれる肉に恐らく秘伝であろう、あまじょっぱいタレをたっぷり使い、香ばしく焼き上げている。


なんとも言い表せぬうまさだが、強いて言うなら『タレの宝石箱やー』とでも言ったところだろうか。



「それにしてもまあ、異世界は娯楽や食に乏しいものだと思ってたけど、案外違うっぽいな」



串焼きを貪り尽くした俺は、そのまま近くの店に入って見ることにした。



「へいらっしゃい! 何にしやすか?」



その店はあれだった、ラーメン屋だった。店の雰囲気も、店主も、料理も!!!



「取り敢えず、ここのオススメ頼む」



「はいよぉ!」



気合いの篭った返事を返す店主。その腕は残像もかくやという速度で絶え間なく動いている。


シュババッ! と鋭い音がなると、次の瞬間には皿にラーメンが。今度は焦らずゆっくりとした動きでスープをお玉ですくい取り、我が子の頭を撫でる様な手さばきでスープをかけていく。


かけられたスープはどこか赤みの差した黒。脂でだしをとっているらしく、かなり本格的なのだろう。


慣れた手つきで海苔、ゆで卵、メンマ、チャーシュー、そしてナルトっぽい何かを載せる店主。


何故ナルトだけ、何かと表したのかと言うと、確かに見た目はナルトなのだ。しかし、決定的に違うところがあったのだ。そう、色だ。そのナルトは、真っ黒だったのだ。



「へいっ、ラーヌンお待ち!」



と、考察していたらラーメンがきた。どうやらこの世界のラーメンはラーヌンと言うらしい。


この真っ黒いナルトは気になるが、頼んだからには食べるとしようと思う。



「頂きます……ズズズッ、んん!?」



ラーヌンを口にしてみた。勢いよく、啜った。するとどうだろう。ものすごく美味い!



「なっ、なんだこれは!美味い!」



地球のと比べて………って、俺は自身の記憶を失っているけど、かなりの美味さだ。


麺は太すぎず細すぎない、見事なストレート。なのにしっかりと醤油ベースのだしが効いたスープを絡ませている。


味からして醤油ラーメンだろう。味の染み込んだゆで卵やチャーシューも、口に含んだ瞬間にスープが拡散し、なんとも味わい深い。


最近、ギルドの食堂でよく分からない料理ばかり食べていたので、新鮮だ。


別にギルドの食堂の飯が不味いわけではないが、日本人としてはやはり、ラーメンが恋しくなるのだ。そのタイミングでこの料理。俺は今、モーレツに感動している!


「さて、問題は………」



ラーメンーーーもとい、ラーヌンを楽しめるか否かの最後の関門。ナルト。



「………ごくりっ」



思わず、唾を飲み込む。口の中にはまだラーヌンの味わいが残っている。すぐ取れる位置に水を用意してあるので、いざとなっても問題ない。



慎重に、箸で持ち上げる。ナルトもどきから、スープが滴る。最後の一滴が、落ちた瞬間ーーー



「はぐ!」



俺はナルトを口に入れた。続いて噛む。口に広がるのはラーヌンのスープの味。そしてーーー



「………ごくりっ。うん、美味かった」


普通のナルトの味だった。何の変哲もない、ただのナルトだった。



「ご馳走さん、美味かったよ」




ラーヌンをスープの一滴に至るまで食べ尽くした俺は、代金を払い店を出た。因みに、ラーヌンは日本円にして一杯三百円という驚きのお値段。まさに、ベストプライス。



「むぅ、あんだけ食ったのにまだ足りねぇな」



最近、沢山動くせいかヤケに腹が減る。冒険者とは大体こんなものなのだろうか?



「まあ、考えてても仕方がねぇ。幸い、金はそれなりにあるから、今日だけでも楽しむとするか」




何も考えず、ただ歩いてみる。今になって考えると、夜の街をゆっくり出歩いたのはこれが初めてかもしれない。



こうして、サブマスターとの決闘から始まった俺の一日は、魔力灯の光と人々の笑い声に包まれて、その幕を下ろしたのだった。

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