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決闘

長らくお待たせしました!


え、待ってないって?そんなこと言わないでください。

「やあ、遅れずに来たようだね」


マーレやミルとパーティーを組む話をした翌日。俺はいつも通りの準備を終わらせ、冒険者ギルド前に来ていた。


理由は昨日、赤竜討伐のことを不正と言って、俺を追放しようとしたギルドのサブマスが、俺に決闘を挑んだからだ。


そんなわけで、ギルドを訪れた俺を出迎えたのは、決闘を挑んだサブマスではなく、ギルマスのシュピーゲルという男だ。


蛇足だが、シュピーゲルはエルフの男性で、かなりの美形だ。あと強い。


「まあな。少しでも遅れると、あのサブマスがうるさそうだし………」


「あははは、随分と余裕そうだね。勝算はあるのかい?」


「別に。ただ、やってみるだけさ。あのおっさんからは、赤竜以上の威圧や覇気を一欠片も感じないからな」


あのおっさんとはこの冒険者ギルドのサブマス、アッソレである。名前を初めて聞いたときは吹きかけたのを覚えている。


「彼はまだ、二十五歳だよ。ぷぷぷ……おっさんって……あはははは! だめだ、おかしい! し、死ぬ〜〜〜!」


なんか笑い転げてやがる。どうやら、俺がアッソレをおっさんと言ったのがツボった様だ。………て、言うかあいつ、まだ二十五歳なの!?ありえな!


「そー言えば、言い出しっぺの奴はどこだ?」


時間には、ベストタイミングで来たから、いてもいい時間なのだが………


「うーん、彼はね、有名貴族の次男でね。爵位はないけど、子供の頃から甘やかされてきたから、自分こそが絶対だと思っているからね………いつも重役出勤なんだよ」


「要するに遅刻魔か」


確かに、あのおっさんが時間を守るとは思えないな。



そのまま、シュピーゲルと数分に数分に渡って話していると、いかにも高そうな服を身にまとい、漫画や小説に出てくるような悪徳貴族感全開の男がやってきた。アッソレだ。


「 ふん、まあ、逃げずには来たようだな」


「そっちこそ、負けた時の言い訳は浮かんだか?」


「きっ、貴様ぁぁぁぁぁ!」


皮肉を皮肉で返され、憤激するアッソレ。今にも掴みかからん勢いで俺に迫るが、突如、突風が走り、俺とアッソレの間を隔てた。



「こらこら、決闘は、ちゃんと指定した場所で公平にやらなきゃだよ。いいね、アッソレ君?」



無言の威圧。アッソレと俺を隔てたのは、シュピーゲルの風魔法だった。シュピーゲルはやんわりとした笑みを浮かべて優しく説くように注意するが、眼だけは笑っていなかった。


無詠唱の高速魔法展開と脅威の魔術コントロールは流石ギルドマスターといったところだろう。その威圧感は、規模こそ違うものの、赤竜に迫る強さと鋭さがあった。



「う、ああ、すいません………」



「うん、分かればいいんだよ。さあ、訓練所行こうか」



アッソレのせいでなんとも言えない雰囲気になってしまったが、気にせず、決闘会場であるギルドの訓練所に向かう。



「おっ、来たぞ!」


「おお、随分若ぇのが来たな!」



着いた先には、中々広い、コロッセオの様な場所と、上でこちらを見ている多くの冒険者達がいた。



「………どういうことだ?」


「いやぁね、どうせやるなら、面白い方がいいでしょ?」



この男、ある意味でまともじゃない。実に食えない男だ。



俺の意図など関係なく、話は進んでいく。促されるままに、訓練所の真ん中の方に立つ。それに向かい合う形で、アッソレも立つ。………何が悲しくてこんなおっさんと顔を付き合わさないのいけないのか………。


観客の冒険者の間では、既に賭けが行われている。ちっ、人事見たいに。魔法ブッパしてやろうか。


「さあ、決闘の始まりです! 二人とも、準備はいいですね?駄目でも始めますよ」


なんじゃそりゃ、と思いつつも、この戦いで使うのは刃引きされた長剣。様は、死なない程度に殺す気でいけということらしい。


「レディ………」



シュピーゲルの声に合わせて軽く身構える。どんな相手でも油断だけはしてはいけない、そう教わったからだ。


………………誰に教わったんだっけ?まあ、いいか。



「ファイト!!!」



開始の合図と同時に、バックジャンプ。アッソレから距離をとる。


何があってもいいように身構えていると、アッソレが手をこちらに向けて掲げている。



少し、怪訝に思った瞬間、アッソレの手に魔法陣がうかんだと思いきや、大きな火の球を飛ばしてきた。



「ちっ、魔法もありかよ!」



確かに、説明では魔法禁止とは言われていないので、ルール上全く問題はない。剣を持っているので、奴は前衛だと勘違いしていただけなのだから。


襲い来る火球を、剣で振り払う。火の粉が舞い、俺の肌を掠めた。



「ひゃはははは、隙ありぃ!」



火球を放ったあたりから、走っていたのか、アッソレは、言葉が聞こえる頃には、既に剣を構えて突撃していた。



「そらっ!」



横薙ぎの一撃を重心移動で躱し、空いた隙に蹴りを入れる。今は<闘気>で身体強化はしてないが、レベルも上がり、表記されないが、ステータスもかなり上がった為、それなりに重い一撃になった。



「うがっ! きっ、貴様〜〜〜!」



なんか一人で盛り上がっているアッソレを尻目に、俺はの一連の流れで感じた違和感に意識を傾けていた。



弱すぎる。率直にそう思った。冒険者ギルドの幹部クラスになるには、知力や品格だけでなく、実力も必要となる。特にサブマス以上はB級冒険者くらいの実力があるはずなのだが、奴にはそれを感じない。


気になった俺は固有スキルの<真実の魔眼>で鑑定してみる。



◇◇◇◇◇◇


アッソレ 男 ジョブ 貴族


スキル

<火属性魔法>*装備品のスキル


<魔力増強>*装備品のスキル


<剣術>


<闘気>



装備

刃引きされた鉄剣

貴族服

火精霊の指輪……<火属性魔法>

<魔力増強>

<詠唱破棄(レベル5まで)>

強化のペンダント……<身体強化(大)>



◇◇◇◇◇◇


………なるほど、違和感の理由これか。

面白いじゃあないか!


「アイテムで不正とは、面白いことするな?アッソレさん」


「な、何のことだ?」


おーおー、面白いくらいに動揺しているな。さて、決着を着けるかな。



「行くぜ?」



ダンッと音がなり、地面を蹴る。特に移動系のスキルを使ったわけではないが、俺の身体は、一本の矢の様に加速しているだろう。



受ける風に、お気に入りの外套が、ばさばさとはためく。アッソレの目の前で急停止し、勢いそのまま剣を突き出す。


「ひっ、い、痛い!?」


刃引きした剣とはいえ、突きは危ないので一応手加減したため、流石によけれたようだが、掠ったらしく、頬から血が出ていた。


「まだ、終わらないぜ?」


一呼吸。刹那、怒涛と言っても過言ではない連撃。記憶が無くなる前の俺は剣道の有段者だったのか、<剣術>スキルの補正とレベルによって上がったステータスも相まって、漫画の様な攻撃をしている。我ながらドン引きだ。



「ひ、ひいいいい!」



同じ、剣術スキルで何とか凌いでいるアッソレは余裕がなさそうだ。


「はあああああ!」



少し気合いを入れて打ち込む。アッソレの剣は半ばで折れた。



「あ、ああああ………ま、まだだ!」


剣が折られてなお、負けは認めないらしい。最初の余裕は嘘のように霧散していた。


「おおおおお!」


せっかく装備品に詠唱破棄があるのに、わざわざ声を出して魔力を溜めるアッソレ。恐らく、撃てる最高の魔法を最高の魔力で撃つつもりだろう。



「喰らえ、<ブレイズブラスト>!」



奴が撃ったのは火属性魔法Lv5<ブレイズブラスト>。灼熱の砲弾が、俺を焼き尽くすためだけに襲いかかる。それに対し俺はーーー



「はああああああ………」



力を込める。魔力を込める。俺の力と魔力を一身に受けた刃引きの剣は、ぴしっ、と音をたててヒビが入っている。


俺は襲い来る炎に対し、ありったけを込めて剣を振り抜く!



「はあっ!!!」



ゴウッと轟音がなり、大気が震える。


同時に俺の手の中で刃引きの剣が硝子ガラスの様な音をたてて崩れた。


一刀両断。その言葉がぴったりだった。


俺の放った一撃は飛ぶ斬撃となって、アッソレの魔法を斬り裂いた!



アッソレは信じられないのか、口をパクパクしている。



「お返しだ」



俺は一言言うと、詠唱破棄で雷魔法Lv5<ライトニング・フォール>を放つ。



別にライトニング・フォールは、落雷の魔法だが、屋内で使えないわけではないので、割と気に入っているこの魔法をブッパする。


ただし、赤竜の時のように複重展開ではなく、単発だが。


「ぎゃあああああ!!!」



ズドン、と落雷一丁。まともに受けたアッソレは黒焦げだ。


シュピーゲルはニヤニヤしながら、結果を叫ぶ。



「そこまで! 勝者、ユウト!」



会場に、わああああっと歓声が響いた。

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