終わった後の色々~赤竜戦~
お久しぶり振りです。短いですが楽しんで頂けたら光栄です。
「………で、話を聞かせて貰おうか」
「だから何度も言ってるだろ。取り敢えずその辺で狩りしてたら、なんか赤竜が現れたから、取り敢えず倒しただけだよ」
「それを「だけ」とはいわないよっ!!??」
俺ーーー逢坂悠斗は赤竜討伐後、ギルドに来ていた。これはマーレの提案で、今回は目撃者が多すぎる為、前回のオーガキングの様に秘匿は出来ないだろうとの事だ。
そんな訳でギルドに言って赤竜討伐の証である鱗を見せたら、奥に案内され、なんか偉そうなこの男と会わせれ、今に至る。因みにこの男、この冒険者ギルドのサブマスのアッソレというらしい。名前を聞いた瞬間に吹きそうになった。
「………さて、前置きはここまでにして結論を聞こう。どんなイカサマを使った?」
「………は?」
いや、まて。言っている意味が分からない。いやまあ、意味は理解できるけど、なんでこんな事言われるのかが分からない。
「は?ではない。当然だろう。冒険者登録したてのFランクの貴様が災害級の魔物である赤竜を討伐出来る訳ないだろう?どんな手段を使って赤竜の鱗を持ってきた?」
ああ、そう言うことか。俺がズルしていると思った訳だ。まあしょうがない事だ。フツーはそう思うだろう。
「別にズルなんてしてませんよ。あの場には他の冒険者もいたんだ。その人達と協力して倒したんです」
「ふん、その他の冒険者は皆一様に止めを刺したのはお前だと言っているが、怪しいものだ。金で買収して口裏を合わせただけではないのか?」
何なんだこのオッサン。何が言いたい。
「貴様の様な怪しい男は、この冒険者ギルドにはいらん。貴様の冒険者ギルドから永久追放だ」
な、このオッサン、どういうつもりだ!?永久追放はなんて普通はあり得ないだろう!?
「なんでだ?俺は事実として他の冒険者と共に赤竜を討ち取った。なのに永久追放なんて横暴が過ぎるんじゃないか?」
「黙れ!いいか、この世にはな、あらゆる事情が複雑に絡んで来ることがあるのだよ。分かったかね」
ああ、なるほど。つまりこいつは俺を嘘で階級を上げようとする質の悪い冒険者にしたてあげ、追放する事で自身の株を上げて出世を目論んでいるわけだ。この推測に確証はない。ただ、この男の眼は明らかな薄汚い出世欲に染まっていたと感じただけだ。
別に出世欲を持つことが悪い訳ではない。寧ろ、出世欲はその人物の動力となり、結果的に社会により大きな利益をもたらす。しかし、他人を貶めて成り上がろうとする欲はとても醜い。
「断る。と言ったらどうしますか?」
「無論、実力行使だ」
アッソレは自分が座っているソファーに掛けていた長剣を引き抜く。シャアアアアっと音が鳴り、剣身が反射した光が俺の顔を照らす。俺は奥の部屋に行く際に武器の所有を拒まれた為、今は手ぶらだ。まあ、時空間魔法による異次元倉庫にも入っているし、いざとなれば<剣製魔法>で作れるから問題はない。
俺は今、どんな顔をしているのだろうか?鏡の様に美しい剣身を文字通り鏡の様に使い、確かめてみる。そこに写っていたのは自分でもドン引きするように笑っていた俺の顔だった。何故笑っているのか自分でも分からない。俺には現代日本の記憶はあるが、自分の記憶がない。でも、今分かる事がある。俺は、人を殺せる。まるで子供がオモチャを壊すかの様に。何の躊躇いもなく。不思議と、そう思えた。
「貴様………何を笑っている。何が可笑しい!」
「いや、別に何も?」
「貴様ァ!」
アッソレは日光を受けて輝く剣を構えて、俺に降り下ろそうとする。しかし、遅い。丸腰の相手などとるに足らないと思っているのだろうが、赤竜と一戦交えてレベルも上がった俺には、この男の動きは余りにも遅すぎる。
大上段に構えたアッソレが、剣を降り下ろす瞬間、いやに間延びした声が響いた。
「止めたほうがいいよ~アッソレ君。君じゃ勝てないからね~」
その声を聞いたアッソレは一瞬、ビクッと震えると、剣を下げた。
「なんで止めるんですか、ギルドマスター!」
どうやら、声の主はこのギルドのギルドマスターらしい。振り返ってそのご尊顔を除き見る。エルフだった。イケメンの、エルフだ。特徴的な長耳にまるで絹のような金髪の男。
「やあ、初めまして。僕はこのギルドのギルマス、シュピーゲルだよ。よろしく」
「逢坂悠斗だ。こちらこそよろしく」
因みにどうでも良いことだが、シュピーゲルはドイツ語で”鏡”という意味だそうだ。
「その反応を見るに、君はエルフを見るのは初めてかい?」
「ああ。話に聞いていたし、本でも調べたが、いざ見るとホントに美形ばっかみたいだな」
「ははは、お褒めに与り光栄だね、ユウト君」
この男、一見ただのギルマスだが、それだけじゃねえな。なんか強者の感じだ。
「質問答えて下さい!どうして私ではこやつに勝てないと言えるのですか!?」
「う~ん、だって君、弱いじゃん」
「弱、いだと?ギルドの幹部になるにはある程度の武力が必要で、Bランク冒険者に匹敵する実力のこの私が、弱い、ですと?」
「じゃあ、試してみる?君が彼より強いかどうか。決闘で」
シュピーゲルの気配が変わった。今まで隠していた何かを解き放ったかのような感覚。濃密な殺気が部屋に充満する。しかし、その空気にアッソレは気付いていない。
「望む所です。こいつは私が倒して見せましょう」
「と、言うわけだから頼んだよ」
「おい、俺の希望は無しか!」
勝手に話が進んでしまった。めんどくせぇ。
「じゃあ、決闘は今から一時間後。それまでは何をしてても良いからね。じゃあ、解散!」
「何を言われたんだ?」
カウンターに帰ってくると、ミルが話掛けてきた。
「ああ、ただ、イカサマしたんじゃないかって疑われて、アッソレって奴に決闘を挑まれた」
「むう、大変だな」
「確かに、大変ですね」
いつからいたのか、マーレも話に参加する。
「まあ、ユウトさんなら大丈夫でしょう」
と、思ったら速攻で話が終わった。
「それよりも、お願いがあります」
「お願い?」
一体なんだろうか?彼女達には赤竜戦で世話になったから、極力力になりたい所だ。
「私とミルで話合って決めました。私達を、ユウトさんのパーティーに入れて下さい!」
「………なんで?」
予想外の質問が来た。
「私達は、ユウトさんに何度も助けられました。だから、恩返しがしたいんです。何ができるか分からないがお願いします」
「お願いだ!」
マーレとミルが頭を下げる。なんでそんなに入りたいの?
「いや、男と一緒のパーティーだよ?襲われるとか考えないの?」
「!?。ゆ、ユウトさんがどうしてもと言うなら、夜の相手も吝かではありませんが………ゴニョゴニョ」
「わ、私も構わないぞ。で、でも最初は優しくしてくれると、その、嬉しいかな………ゴニョゴニョ」
「いやいや、冗談だよ?まあ、パーティーに入るのは構わないよ。でも、特に特別な事する訳じゃないから、その辺はあしからず」
まあ、美少女二人が仲間なんて、いい目の保養になるしな。
「そ、そうか!これから宜しくな、ユウト!」
「お願いしますね、ユウトさん!」
「ああ、よろしくな、二人とも」
パーティーに美少女二人が入りました。バンザーイ。