チートバトル(?)は異世界ファンタジーの中で。
オーガキングとの戦闘から早くも三日が過ぎた。俺、逢坂悠斗の冒険者ランクはFのままだ。特にランクに拘っているわけではないが、高ランクになれば特典が付くらしいので上げておきたいところではある。
オーガキングとの戦闘で出会った少女達ーーーマーレとミル曰く、オーガキングは災害級の魔物の為ギルドに持っていけば即Sランクも夢ではないとのこと。でも、今持っていっても恐らくインチキ呼ばわりされて終わりだと思うのでまだギルドには持っていってない。今は<異空間倉庫>の中に眠っている。あそこなら腐らないしね!!!
したがって俺は今日の食い扶持を稼ぐ為に、狩りに来ていた。場所はオーガキングと出くわした平原とその近くの森だ。ここは最初に出てくるのは低レベルの魔物で奥に行けば行くほど出てくる魔物も強くなるというお約束の詰まったフィールドである。そこの中盤辺りで俺は戦っている。
「グガアアアア!!」
森の中盤に出てくる異形の魔物。名を”リベル”と言うらしい奴は、固定の形を持っていない。人型の奴もいれば蜘蛛の様な奴、牛の様な奴、ライオンの様な奴もいる。その全てに共通するのが体の何処かに”リベル結晶”と呼ばれる結晶体を持っており、そこから全身に流れる魔力が線となって身体中に浮き出ている事だ。
そして今戦っているのは人型のリベルだ。胸の真ん中辺りにあるリベル結晶とそこから引かれた魔力のラインの光が点滅を繰り返している。ぶっちゃけ、カ○ネに見える。
「グギエエエエエ!!」
カバ○ーーーもといリベルが正直、身の毛もよだつ様な奇声を上げて突っ込んでくる。いくら異形の人型といえど、所詮は中堅レベルの魔物。知能は低く、ただ突撃するだけの工夫も何もない攻撃だ。
「<剣製魔法>、んでもってウェポン付与<魔法剣・雷>」
とりあえず、リベルから距離を取る。その際、同時に<剣製魔法>でロングソードを作り、スキル<魔法剣>で剣に雷魔法を付与する。
リベルの異形の腕から放たれる一撃を体に染み着いた剣さばきでいなす。中堅レベルの魔物だけあってその膂力は凄まじく、いなした先の木が七割程抉れ、その木はへし折れた。
当然、熟練の戦士ではないリベル攻撃直後の大きな隙を俺に見せることになり、その隙を逃す程俺も甘くない。高電圧の雷を纏った魔法剣が易々とリベルの強固な肉体を切断する。横一文字に胴体を両断されたリベルは断末魔の悲鳴を上げることなく、その場に崩れ落ちた。
「ふー。これで一体っと。<解体>」
俺はリベルの遺体に触れてスキル<解体>を発動。遺体が光の粒子となり、その場に残ったのはリベル結晶のみとなった。
スキル<解体>は触れた対象を解体し、使える素材とドロップアイテムのみを残して対象を光の粒子に変えるスキルだ。因みにリベル結晶はリベルの素材でもあり、ドロップアイテムでもある。リベル結晶は他の魔物から採れる魔石よりも魔力の伝導率や蓄積量が多く、様々な物に利用出来る為、高価な取引アイテムである。
「これで良しっと。さて、次は…………っ!」
俺が次の獲物を求めて<索敵>を使うと、妙に魔物が集まっている場所を感知した。その中心には人間の反応もある。どうやら囲まれている様だ。フム、せっかく集まってくれているし行ってみるか。
<闘気>を纏って移動する事、約一分。めっさ魔物が群がっていた。どうやら、中心の人達は善戦しているがピンチの様だ。所々、必死な声が聞こえる。
最近、図書館で魔法の基礎の本を読んで勉強した俺は元から使えた雷魔法以外に風魔法と水魔法、火魔法に土魔法の五属性魔法が使える様になった。今回は森の中なので環境に優しい風魔法を使おうと思う。
「おーい真ん中の人達。今から風魔法撃つから伏せてね。荒れ狂え、暴乱の豪風。<ウインドブラスト>」
最初に声を掛けた事で俺に気が付いた魔物が近づいて来るが時遅し。風魔法Lv2<ウインドブラスト>。辺りの空気を圧縮して、敵前で解放する魔法。魔法陣を回転させ空気を集めて圧縮するので射程も短いし、威力も大して無い。その為、余り人気の無い魔法だ。
しかし、俺は何故か魔力尋常じゃない程高いらしい事が分かった。例えば、周りが普通にやれば五の威力になる魔法を行使したとしよう。俺がその魔法を普通にやると五百になる位の魔力を俺は持っていたのだ。その為、<闘気>で魔力による肉体の強化をすると俺は凄いことになるのだ。
つまり何を言いたいかと言うと例え、Lv2で低射程、低威力の魔法でもあーら不思議。爆撃よろしくな風の砲弾がこっちに来た魔物も群がっていた魔物も全て纏めて吹き飛ばした。そう、例えるならボーリングでストライクを出した時のピンの吹っ飛び方のような、まるで三文芝居でも見ている様な光景だ。
吹き飛んだっ魔物の血と肉片が周りの木々にべちょっとこびりつく。即死していない魔物は頭上に<剣製魔法>で作った剣を落とし、命を刈り取る。
何か見覚えのある少女二人を尻目にこの場で唖然としている全ての生物に向かって告げる。
「あっゴメン。加減ミスった。マジゴメン!!」
「「「「「「「………………は?」」」」」」」