戦いを終えて
なんかよくわからないテンションのままオーガキングを討伐した俺ーーー逢坂悠斗は何とも言えない気分だった。
俺はこの世界に来て一日も経たないうちに様々なイベントに巻き込まれ、戦ってきた。
そして戦うごとに、俺のぽっかり空いた自分に関する記憶の穴にスパークが弾けるように記憶と技が流れ込んでくる。
もし俺がこのままこの世界で戦い続けていけば俺の記憶は完全に戻るかもしれない。それは喜ばしいことだ。
でも、同時に怖くもあった。記憶の中の子供ーーー恐らく幼少期の俺だろうーーーは、いつも暗い場所にいた。ひたすら武器を振るい、自分を押し殺してきた。
俺が記憶する日本人の生活にはありえないものだ。俺のよくわからないチート能力といい、記憶の技といい、ピンポイントで無い記憶といい、ますます訳が分からない俺の記憶は一般的に見てあまりいいものとは言えないだろう。
本当に思い出していいものか。いっそ忘れたままの方が幸せなのではないか?なんて疑問まで浮かんでくる始末だ。
俺は………俺は…………
「あっあの、大丈夫……ですか?」
「っ、ああ。」
後ろからの声に振り返るとマーレとかいう少女と一緒にいた赤毛の少女が心配そうな顔でこちらを見ていた。
「いや、問題ないさ。君は確か………」
「マーレです、ユウト様。こっちの赤毛の女の子はミルです」
「マーレのいう通り、ミルだ」
「んで、どうしたんだ?マーレ、ミル」
「っ!あの、歩く災害とも呼ばれるオーガキングをたった一人で討伐したのに元気が無いように見えたので、何かあったのかと思いまして………」
歩く災害!? 何それ!? もしかしてグルルドってそんな強いの!?
「それにしても君は強いな………君はーーーいや、あなたのギルドランクは何なんだ?」
ギルドランクとはGからS以上まである階級の事だ。Gランクは基本的に身分証明のためにギルドカードに登録した人間の階級で、冒険者として始めるとFランクになる。
基本はSランクが最上だが、例外は英雄的功績を残した者はSランク以上、つまりSSなどがある。
そして俺のランクはというとーーー
「うーんと、Fランクだなぁ」
「「はあああああぁぁぁ!!!」」
戦場跡に可憐な少女達の悲鳴か響き渡った。