息吹
これは少し昔の物語。
あるところにとても仲の良い6人組がいました。
6人はそれぞれ特別な才能を持っていました。
一人は透き通った宝石のような声で人々を魅了する元気な子、
一人は引っ込み思案だけど、お絵描きが大好きで、
一人はお話が大好きな愛らしい子で、
一人はいつも音楽と共に生きる自由人で、
一人はお洒落と服を作るのが生き甲斐の強気な子で、
一人は誰よりも輝きたいと願う星のような高飛車な子で。
趣味嗜好は違えども、互いの良いところも悪いところも理解し合える、
そんな6人でした。
ある時のことです。
一人が言いました
「皆で、何か最高のモノを残そう」
他の5人は口を揃えて言いました。
「何を残すの?」
「とにかく最高のものを。いつまでたっても色褪せることのない、私たちの思いでのモノを。」
この意見に反論する人はいませんでした。
6人もいつかは離ればなれになってしまう。
そうなる前に、何か形になるものを作っておこう、と全員が思ったのでした。
しかし、全員の意見は一致しても、案までは合いませんでした。
「声を残そう。いつまでも耳に残り続けるような素敵な声を。」
「絵を残したい。誰もが目を止めるような素敵な絵を。」
「お話を残すの。心を掴んで離さないようなそんなお話を。」
「音楽を残そうよ。みんなに聞いてもらえるような楽しい音楽を。」
「衣装を残しましょう。華やかで美しい衣装を。」
このままでは皆の趣味嗜好を語り合うだけになってしまう、
そう感じた一人はこう言いました。
「じゃあ、アニメーションを残しましょう。耳に残り続けるような声で話し、誰もが目を止めるような素敵な絵で動き、心を掴んで離さないようなお話で、みんなに聞いてもらえるような楽しい音楽の、華やかで美しい衣装を着たキャラクター達が、誰よりも輝く、そんなアニメーションを!」
他の5人は声を揃えて言いました。
「そうしよう、それがいい!」
━━━後に伝説となるアニメーション誕生の息吹が上がった瞬間でした。