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萌えよ 戦場~オタクの最終戦争(ラストウォーズ)~  作者: Kureo
ユニット・オブ・サード
13/42

発現せよ 唯一無二の力



理沙によって作戦の変更が通達されると、三人は再び私の元へと近付き直した。


「いい?チャンスは一回よ。その一回で失敗しても、もう次はない。おとなしく援軍を待つわ。」

「分かってる。今なら出来る気がするよ。」

「・・・しくじるなよ?」

「ミズミちゃんをよろしくねぇ。」


少しの言葉を交わすと、敵に向き直る。


ここから先は、失敗は許されない。


「・・・作戦開始!!!」


理沙の合図で、すももがハンマーを肩に担ぎ神経を集中させた。


「みんなぁ、合図で飛んでねぇ・・・3、2、1・・・ぶっ飛べぇ!!!」


彼女の合図に合わせて飛ぶと同時に地面が砕け散り、衝撃波が周辺のアニマを数メートルほど吹き飛ばした。


大きな隙、これを見逃しはしない。


「行くぞ、身体を縮めろ!!」

「了解・・・スカート覗いたらひっぱたくからね!?」

「握り潰されたいのか貴様ッ!!!」


軽く冗談、のつもりなんだが少し起こらせたみたいだ。


私は膝を抱えて身体を出来るだけ小さくすると紅の龍の掌に収まった。


とりわけ固いわけでも柔らかいわけでもない、何とも言えない不気味な感触の鱗に包まれ、彼は私を持ったまま振りかぶり、


「着地は受け身を取れよッ!!!」


そのまま上空へ放り投げた。


身体を縮めていても空気の圧が身体を押し返し、それを強引に突破するかのような速度で撃ち上がると、


失速した体は横にあったビルの屋上に転がった。


「すごいコントロール・・・ちょうどこの高さになるように投げたんだ。」


高過ぎても低過ぎても大惨事は免れない、


彼の能力の高さを認識させられた。


「このまま逆側に直行・・・って訳にもいかないみたいだね・・・!」


鳥類アニマが数体、私の後を追ってきていた。


しかし、どうするかと迷った数秒のうちにアニマは地上からの攻撃により全滅、落下していった。


「強すぎでしょ理沙・・・こんな小さい的だよ・・・」


だが今は下に向かってお礼を言う時間はない。


全速力で床を蹴りビルの反対側へ駆ける。


フェンスに張り付き下を覗くと、そこにも戦場が広がっていた。


無数のアニマの死骸の中に一体だけ活動しているのがいた。


その殺気に満ちた目は確かに何かを捉えている。


視線の先に、彼女はいた。


「ミズミ・・・!!!」


装備もない、味方も周辺にはいない、おまけに足を怪我していてまともに動けない様子だった。


獣が飛びかかり、大きく口を開けた。


「避けてッ!!!」


避けれるはずはない、だが、彼女は無事だった。


アニマはただ彼女を飛び越えただけだったのだ。


遊んでいる。


目の前の小さな命を使って遊んでいるのだ。


簡単に殺す気は無いのだろう。ゆっくりと遊んでから殺すつもりなのだ。


「こいつ・・・!」


思わず拳に力が入る。


アドレナリンが大量に生産され、心臓の鼓動と共に頭に血が上ってくるのがはっきりと分かった。


尋常ではない苛立ちと殺意。


武器を持たない自らが歯がゆい。



━━━あなたに、覚悟はあるの?━━━


あるに決まっている。


無ければこんなにイライラすることもないだろう。



━━━全てを背負う事になる━━━


意味の分からないことを言わないでほしい、


私はただこの状況を覆してやりたいだけ。



━━━あなたは、何を求めるの?━━━


そんなもの分からない、いや、分からなかった。


今はわかる。今なら分かる。



聞こえてる?誰だか分からないけど、多分神アニメの精霊とかでしょう。


私は外部の人間、おまけにスパイ。


さっさと始末してしまいたいだろうけど、その前に私にも、



力を頂戴・・・


「━━━私に、戦う力をッ!!!」



私の体は無意識のうちに動き出していた。


フェンスを乗り越え、身体を重力の自由落下に委ねる。


超速度で近づく地面とアニマ。


やつがこちらに気づくのにそう時間はかからないだろう。


私は戦闘経験が浅い、と言うか無い。


今までなんの不自由もない平和な空間で育ってきたんだ。当たり前のはずだが、今は違う。


目の前に迫る死と隣り合わせの世界。


負ければ死ぬ、勝てば生きる。


恐怖がないわけではない、むしろ恐怖の方が大きかった。


それでも、怖くても、助けたい!


「うわああああああッ!!!」


アニマがこちらを向く、


それと同時に私はビルの壁を蹴り、右手を突き出していた。


誰に習ったわけでもない、ただ感覚的に分かったのだ。


こうすれば武器が出るはずだと。


そして、


その予想は的中した。


ゆっくりとスローモーションで流れる景色のなか、


その粒子は私の右手から伸びていき、やがて一つの形となった。


刹那、アニマの爪が眼前に迫り、とっさの判断で握られたそれを使って弾くが、残っていた腕に吹き飛ばされてしまった。


地面に叩きつけられ、転がるようにしてアニマから距離をとる。


「がはっ!!!げほげほ・・・っ!」


肺の酸素が一気に抜けるような苦しさが私を襲う。


幸いにも転がった先がミズミの近くだった。


これで敵の攻撃を掻い潜って守る必要はない。


「雨音っ!大丈夫でヤンスか!?」

「ごめん・・・援軍、私だけでさ・・・でも安心して。助けが来るまで、あなただけでも守ってみせるから・・・!」


右手の武器に体重を預けるようにして立ち上がり、それを両手で握るとアニマへと向けた。


軽く両手を広げたほどの長さに、太すぎず一直線に輝く半透明の刀身。


西洋等のおとぎ話の騎士が使うようなその見た目は、刀剣と呼ばれるものだった。


「はは、どうせならJKらしい可愛いのが良かったなー、なんて、ね・・・」


軽く冗談をこぼし、自らを鼓舞する。


アドレナリンが痛みを感じさせないうちに援軍が来てくれると良いけど。


アニマの視線は今、完全に私の方に向いている。


危険因子を潰すためか、それとも単に新しいおもちゃとしか見てないか。


どっちでもいい。


今はとにかく生き残る!


「ミズミ!こいつの情報、何でもいいから教えて。」

「まさか戦う気でヤンスか!?無謀でヤンス!こいつはクインライオン・アニマ、純粋な戦闘力は理沙にも引けをとらないでヤンス!!」


なにそれ、本物の化け物じゃん。


確かに見た目はさっきのアニマに酷似してるけど、特徴的なたてがみが無くて、猫に近い。


こいつらの生体が普通のライオンと同じなら、


メスライオンはオスより狩りに特化している。


戦闘力が高いのはそういうことか。


「大丈夫、戦うつもりはないよ。ギリギリまで私に引き付けるからその隙に逃げて。ついでに援軍も呼んでくれると助かるかな。」


さっき奴と一瞬だけ衝突した。


その一瞬で吹き飛ばされ、手はしびれて使えなかった。


だが、それで確信した。


完全にかわすことはできなくても、動きながら受け流せば直撃は避けられる。


私は手に力を込め、アニマの側面へ走った。


今までより体が軽い、速度も切り返しも断然速い。


これも神アニメの力なのか。


「いける・・・!」


アニマの大木の尻尾が右側から撓りながらこちらに迫る。


私は左足に力を込め、背面飛びの応用でかわす。


着地は転がりながらと不格好だったが、今までの私にこんな動きが出来たことがあっただろうか?


その今までとの動きのギャップに、かつてないほど混乱し、同時にかつてないほど興奮していた。


「反撃、してみちゃう・・・?」


私は一度後ろに飛び、アニマとの距離をとる。


そして着地と同時に全速力でアニマ目掛けて駆け抜けた。


近づくにつれて威圧感が増していく。


アニマの攻撃射程圏内に侵入すると、巨大な腕が振り下ろされるが、右足を軸にターンをし、最小限の動きでかわす。


私のもといた場所は腕が深く突き刺さっている。当たればひとたまりもないだろう。


だが、どうしたものか。


先ほどまでの恐怖は完全に消えていた。


それどころかこの戦闘を楽しんでいる自分がいる。あまりに夢中になりすぎてミズミを逃がすための戦闘ということを忘れてしまいそうなほどに。


「うおりゃあああああ!!!」


軽く切り付け撤退し、再び接近して切り撹乱する。


一撃一撃は恐ろしく浅い。


だが、アニマも確実にこの異様な光景にのまれているようだった。


「な、何でヤンスか・・・一体雨音は、何者なんでヤンスか!?」


止まらない


止められない


止めたくない!


アニマの血飛沫と私が加速する度に蹴りつけヒビ入ったコンクリート片が辺りに雨のように降りつける。


敵も抵抗を試みるが、攻撃をしようとしたとき、そこにもう標的はいない。


上に下に、四方八方から切り付けられ混乱さえしているようにも見えた。


やがてアニマの動きが鈍り、最後の力を振り絞り大気中の空気を吸い込み出した。


断末魔だ。


これをやられれば敵の大部隊を呼び寄せてしまう。


私は一度それを見ていた。


二度も同じことはさせない!


アニマの正面に回り込み全身に力を入れる。


そして、


全ての力と、思いと、叫びを乗せて


「うおおおおおおおッ!!!!!!」


開かれた口の一点迷いなくを狙い、


手にした剣を突き刺した。





耳に痛いほど静かな静寂を破るかのように、鈍く重い音を響かせてアニマが倒れた。


その巨体が再び動き出すことはなく、


辺りには風の音だけが聞こえていた。


「あ、はは・・・倒した・・・?倒せたんだ・・・」


糸が切れたように全身の力が抜けていく。


強烈な眠気も襲ってきた・・・


周りにアニマの姿はない、


ミズミはもう安全だ・・・


少し、休んでしまおう・・・


いっぱい動いたから、


明日はきっと、筋肉痛かな・・・





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