表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

EP.002[占星術師]

 狼が跳ねる。

 その狂爪が振るわれる。


「フハハ、吾輩の堅牢なる城塞に傷ひとつ付かぬわ!」


 ノワールの交差した腕に火花が散る。

 しかし、その言葉の通りに傷付いた様子もなく……。


「……HPは減ってる」


 クルーネが突っ込んだ後、回復魔法でノワールの回復をする。


「ぬぉおん! 吾輩の拳で粉砕してくれるわ!」


 ノワールが拳で狼に殴りかかるが、スッと避けられた。

 殴る対象を失った拳が地を打つ。

 衝撃で砂埃が舞い、視界を埋め尽くす。


「ちょっとー、わんちゃんどこ行ったか分かんないじゃないの」

「吾輩が悪いのか!?」

「全面的に悪いよ! ……風よ、巡りたまえ。風よ! 吹き飛ばしたまえ!」


 アリエルの呪文により砂埃が風に流される。

 その姿を見た瞬間、手にしたライフルのトリガーを引いた。

 火薬の爆発する音と共に薬莢が排出された。

 空気を切り裂きながら銃弾が飛んでいき、狼に当たる。

 ――しかし、当たったのは足。狼の前足が吹き飛ぶ。


「とどめは貰うぞー!」


 足を失い、バランスを崩した狼に巨大な影が差した。

 身の丈ほどの大剣でジークが叩き斬る。

 その重量により、狼のHPが一瞬で消し飛ぶ。

 そして、脳内に電子音が響いた。

 レベルアップだ。


挿絵(By みてみん)



 レベル10になった。

 そして、スキルポイントも増えてるはずだからスキルを呼び出す。



[Skill]__________________________[×]


【Learning】

<リロードLv5>

 ┗[A] SPを消費して銃弾を再補充する。消費SP5。

<ロングショットLv2>

 ┗[P] 有効射程距離が10m広がる。

<ヘッドショットLv3>

 ┗[P] 銃弾が頭部に当たった場合威力が12%アップ。


【UnLearning】スキルポイント残り[0+5]pt

 ┗スキルの種類、レベルに寄らず習得にはスキルポイント1ptを要する。

<リロードLv6>

 ┗[A] SPを消費して銃弾を再補充する。消費SP4。

<ロングショットLv3>

 ┗[P] 有効射程距離が15m広がる。

<ヘッドショットLv4>

 ┗[P] 銃弾が頭部に当たった場合威力が16%アップ。

<魔装弾Lv1>[New!]

 ┗[A] MPを消費して物理耐性を無視する銃弾を放つ。消費MP10。

<麻痺弾Lv1>[New!]

 ┗[A] SPを消費して20%の確率で麻痺させる弾を発射する。消費SP10。

<グレネードLv1>[New!]

 ┗[A] SPを消費して爆弾を投擲する。消費SP10。


[P]……パッシブスキル。

[A]……アクティブスキル。

 _____________________[Expedition Online]



 新しいスキルも追加されたし、ボーナスでスキルポイントを5pt貰えたし、内心うっきうきだ。

 今まではレベル1につき1ptだったんだが、レベル10では5pt貰えるようだ。


「よーし、みんなもスキル振りたいだろうし始まりの街まで戻ろうか」


 皆に声をかけて撤収する。


「吾輩はまだまだ行けるのだがな!」

「……さすがに休憩」

「あー……だなぁ、10時間ぐらいたったか」

「だねー、一旦落ちようかー、ご飯とかあるだろうしー」


 思い思いの言葉を返しながら街へ移動する。

 何度か敵とエンカウントしたが、特に問題もなく往なして街についた。

 時計を見ると狩りを始めてから12時間経っていた。

 おい、ジーク。体内時間ずれてるぞ。

 パーティを解散して、各自、自由行動にする。


 ……さて、どうしようかな。

≪Expedition Online≫は体感時間加速機能を備えており、現実の3倍の速度で時間が進む。

 つまり現実では4時間しか経ってないという事であり、ログアウトするほどでもない。

 ふと、自分の装備を見る。



[Weapons]_______________________[×]


[Main-Weapon]

 ┗ノービス・ライフル

[Sub-Weapon]

 ┗

[Head]

 ┗

[Body]

 ┗ノービス・ガンナーズ・シュミーズ

[Arm]

 ┗

[Leg]

 ┗ノービス・ガンナーズ・スカート

[Foot]

 ┗ノービス・ガンナーズ・ブーツ

[Accessory]

 ┣

 ┣

 ┣

 ┣

 ┗


 _____________________[Expedition Online]



 まんま、初期装備である。

 ……しかし、装備更新しようにも生産職が育っているとも思えない。

 うーん……。


「すみませーん、どなたか腕に自信のある人いませんかー?」


 中央広場でふらふら歩いていると、叫びながら練り歩いている女性を見かけた。

 亜麻色の髪をツインテールにしてる女の子だ。


「強そうなモブを見つけたので、一緒に倒してくれる人を探していますっ! お礼にドロップしたDEXを10上げる指輪をあげるのでどなたかっ!」


 しかし、彼女の呼びかけに応える者はいない。

 サービス開始早々、始まりの街に居る人は、今始めたばかりの人だろう。

 ある程度育ってきてる人は最速攻略を目指して開拓しているし。

 でも、彼女のお礼の指輪は魅力的だ。

 銃はDEXの値により弾のブレが抑えられるようになる。

 つまり俺にとっては喉から手が出るほど欲しいわけで……。


「すみません、お話を聞かせてもらっても?」


 気が付いたら彼女にそう話しかけていた。

 彼女は嬉しそうに笑ってくれた。


「はいっ! 西の森でレッドオーガというモブを発見しまして、他のモブのレベルが2や3なのに比べて7もありました」

「なるほど、確かに高いね……レアエネミーか、フィールドボスか……」


 何だろうと面白そうな手合いてはある。


「それでごめんね、レベルはいくつなのかなっ?」

「あー、ごめんごめん。ガンナーのレベル10だ」

「なるほどなるほど、高いですねっ!」


 スタートダッシュしたしな、ある程度高い方ではあると思う。


「えっと、君は?」

「僕は占星術師のレベル8だよっ」


 ……へぇ。高いな。


「パーティ居るの? 結構レベル高いけど」

「いえー、ソロですよー。たまたま見つけた、ゴールデンホーンラビットっていうのを倒したら一気にレベルが上がったんですよっ」


 なんだそれ……はぐ○メタル的な?

 レッドオーガにしろ、レアエネミーに遭いすぎだろう。


「この器用の指輪もその子から落ちたんですよ」

「なるほどな……」

「じゃ、これあげるね」


 直後、電子音が鳴って目の前にトレード画面が現れた。


「いいのか?」

「いいよ、それにガンナーならDEX重要でしょっ?」


 そう言っている間にトレードは成功して、器用の指輪が手に入った。

 早速、装備させてもらう。


「あとは向かいながら話そうかー、あ、パーティくもっか」

「りょーかい」


 電子音が鳴り、パーティ申請か現れたので了承する。

 パーティメンバーのところに[Flax]と表示された。


「えっと、フラックス……でいいのかな?」

「そうだよっ」


 西の街門を目指して歩く。

 なんとなしに周囲を見渡すが、やはりショップの類は見当たらない。

 普通のMMOならばNPCショップ等が有ったり、NPCからの依頼をクリアすることにより装備を入手できるのだが……。

 インスタンスダンジョンなどで、ドロップするのを待つしかないか。

 だが、そのインスタンスダンジョンも未だに見つかっていない。

 次ログアウトしたときにでも、某匿名掲示板を覗いてみようかなぁ。


 街門を通り過ぎて森に入る。

 といっても、周りにプレイヤーが多いから街の外という感じもしないが。

 ふと、目の前にホーンラビットが現れた。


「連携確認しようか?」

「そだね……<ドロー>っ」


[♎]


 彼女がそう、唱えた瞬間に彼女の目の前にカードが浮かび上がった。

 そのカードには[♎]という紋様が浮かんでおり……。


「天秤座ね。DEXとSPに補正ねっ」


 そういって彼女はカードを消費して、俺にバフをかけてくれた。

 ステータスを見ると8%ほどの補正がかかっている。

 器用の指輪と合わせてDEXの数値が高くなっていた。

 それに満足してホーンラビットに照準を合わせて引き金を引く。

 薬莢の排出と共に、ホーンラビットの頭に風穴が1つ空いた。


「うひー、1撃」

「照準通りに弾が飛んでいった。すごいね、この占星術の補正」

「でもソロでバッファーは難易度高いよ」


 それもそうだよなぁ。

 パーティでならその効力を最大限に活かせるバッファーではあるが、ソロでは途端にその価値は落ちる。


「じゃあなんで占星術師なんて?」

「えへへ、名前に魅かれちゃって」


 照れながら頬を掻くフラックス。

 まぁ、その気持ちは分かる。


「はは、じゃあ狩りしながら向かおうか」

「そうですねー、こっちです」


 フラックスの先導により森を進んでいく。

 北西の方向に向かって。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ