初めての狩
周りからは生温かい目で見られている事など気が付く筈もなく槍で無双した気になっていた俺だが、もちろん稽古以外にも忙しい日々を送っていた。
基本的にこの村は自給自足だ。子供と云えども働かざる者食うべからずが、基本だ!つまり槍を振り回してたりするとこう言われる。
「二郎!何時までも遊んでないで仕事手伝いな!」
大人は分かってくれない・・・・ちなみに弟からはこう言われた。
「兄ちゃん一人で遊んでないで一緒に遊ぼうよ!」
誰も分かってくれない。
弟に兄ちゃんは遊んでいるのではない旨を優しく教えても残念ながら家族には分かって貰えない。
「二郎!家の事もしない、弟の面倒は見ない、当たり前の事が出来ないようじゃマトモな大人にはなれねえぞ!」
到底マトモとは言えないアル中に言われた。
畑仕事の間に稽古!家の手伝いの間に修行!弟の面倒見ながら槍を振り回す日々!
そんなストイックな日々を送っていた俺に村長が声をかけてきた。
「二郎や、そんなに暇なら大人達と一緒に物見を兼ねて狩に行ったらどうじゃね。」
何度も言うが、暇じゃない!
しかし、この村の人々には何故か理解されない。
まぁ国境偵察や狩はいい修行にはなりそうだから良いけど。
「うん、分かった。」
「そうか、分かってくれたか。村の皆も二郎は頭を打って壊れてしまったかと心配しておったんじゃ。良かった良かった。」
全然良くない。皆分かってくれない。
「二郎は狩は初めてか?」
「うん。」
ふむ?ならばアイツが良かろ。
「二郎や、まずはアレクに狩というものを教わってこい。」
唐突ではあるが、うちの村における一番の狩人といえば、自称愛の狩人アレクさんだ。
父ちゃん曰くチャラいそうだ、しかし近所の未亡人達からは凄く好かれている。そんな所もあって男衆からは余り好かれてない。ちょっぴり変わった人らしい。
「ハ〜イ君が二郎ちゃんダネ。僕の名前はアレク、アレクちゃんとよんデネ。他のレディ達見たいにダーリンとは呼ばないデネ。僕の愛は残念ながらすべての女性の為にあるカラネ!」
ちょっとじゃない父ちゃんあんたが正しかった。
「あ〜よろしくお願いします。」
「オッケーそんなに固くならないデ!硬くて良いのはアソコダケ!」
ウワ〜いきなり下ネタかよ!村長と同じ匂いがする、まさかこいつ紹介したのもその辺が理由じゃないだろうな?
「聞いたヨ、二郎ちゃん、ストレス溜まっちゃって槍持って暴れちゃったんダッテ?」
全然違うし!
「ワカルヨ、僕も昔はいっつもナイフ振り回してる用な子だったヨ。15になって女性を知ってからは違うナイフを抜く様になったけどネ。」
結局下ネタかい!
「とにかく狩でストレスを少しでも解消してネ!」
「はい!」
「それじゃあ 一狩行こうゼ〜!」
その掛け声は駄目な気がする・・・
「あの〜?」
「なんだい二郎ちゃん?」
「さっきからズ〜ット何やってるんですか?」
「ナニッて罠を仕掛けてるのサ!」
「でもこの2日間こんなんばっかし!穴掘ったり竹槍仕込んだり、もっとこう獲物相手に大暴れてきな!せっかく槍も持ってきたし!」
プーックスクス!
「二郎ちゃんはオモシロイナ。」
「狩は待つのも仕事なんだヨ。焦らず騒がず為すべき事をやるダケ!サァ今日も元気に獣道のパトロールに励もうじゃナ〜イ!」
ハァ。 「ハ〜イ。」
と返事はしたものの暇だわ。あ〜マジ帰りたい、ヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマ・・・・・
「二郎ちゃん二郎ちゃん!」
えっ?
「お・待・た・せ!」
"ウワッ!"
"デカッ!"
"GyaO〜ガルルル、"
「アレクさんこいつは?」
「コレ〜これはネ〜キングブルさんダヨ。」
頭は獅子、牛の角に熊の体、体高は3メートルを超える。
コエ〜!なんじゃこりゃ〜!ゴブリンなんて目じゃねぇ〜!狩嘗めてたわ!アレクさんはこんなん狩ってたんか!マジパネェ!チョ〜リスペクト!
「じゃっ二郎ちゃん後ヨロシク!上手い事罠の場所まで誘導シテネ!」
ハ?・・・ハァ?・・・ナニイッテンノコノヒト・・・
「ムリムリムリムリ無理だから!アレクさん冗談もホドホドに」・・・いない・・・
"グルルル・・・"
こういう時こそ慌てない。そーっと 振り替えると
大口開けたキングブルさんが・・・ギャー!
「ほら早く走んないと死んじゃうよ!」
クソが〜言われんでも走るわ!走り抜くわ!
ウオオオオー
「アレク〜自分だけ隠れてないで、出てこ〜い〜!助けろ〜!」
「ふぅ、それが人にモノを頼む態度ナノ?」
「すいませんでした。調子乗りました、堪忍してください。アレクさん出てきて下さいってゆーか助けて〜!」
「二郎ちゃん僕が女の子の為ならまだしも男の子の為にそこまですると本気で思ってるのかい?何よりこの状況で出てくの無理だから!
何度も言う用だけど罠の場所まで逃げ切りな!
しゃべってる暇があったら、もっと速く走る!」
"ハァハァハァ"クソアレク、
"ゼィゼィゼィ"ぶっ殺す、
罠〜罠の場所〜まだかよ?何処へ仕掛けたっけクソックソッこの辺のはずなのに・・・
"GyaO〜"
ヒィ〜来るな来ないで〜!
グガァ〜ドサッ!
えっ?
"ガァ〜"ズルズル"ゴァ〜"グサッ"グルル"・・・
"ポカーン"
スゲー!気付いたらキングブルさんが落とし穴にハマってる、穴の中の竹槍に刺さって這い上がれないんだ一つ一つの罠がきっちり仕事してる!
「はい!二郎ちゃんお疲れ〜」
「アレクさん!」
「どうだった、狩は?」
「スゲー怖かったです。」
「うん。それが分かっただけでも大したもんだ。
いいかい、強い奴が生き残る訳じゃない、生き残った奴が強いんだ。二郎ちゃんが今日は生き残った、その事を忘れないデネ。」
「はい!」
「あぁそうだ!せっかく槍持って来たんだから、トドメ刺しナヨ。」
「でも・・・」
「相手を苦しませないのも優しさだよ。」
・・・「はい。」
ブルさんあんたスゲー怖かったよ、
間違いなく俺より強いし・・・俺あんたを殺してもっと強くなります。
"グルル・・・"
"グサッ!"
「さぁさぁ二郎ちゃん、ボーッとしてる暇はないヨ!血抜きして村まで運ぶんダヨ!こっからが一苦労ダヨ。」
"はい!"




