1ー2 接触①
目を開けたら、
さっきまでいた今日から通う筈だった通学路
ではなく
五年前まで住んでいた
決して今では戻れない両親と暮らしていた家のリビングにいた。
あの時と同じだ
鼻には嗚咽を掻き立てる錆びた鉄の臭い
目の前の壁は真っ赤でいて所々黒く染まっている。
本来の白い壁などまるで最初から無かったかのように全てが血色で
いや、色なんかじゃないただただ血で塗られていた。
「また、あの夢か? なんでいま?」
あの夢は、俺が寝ているときにたまに見るだけなのに
記憶が正しいならさっきまで鈴耶と紗来
二人と登校していたはずなのに
そんなことを考えていると
目の前のソファに黒い影が浮かび上がった。
あの時と同じ
形の定まらないけど、それでも人型と分かる形の黒色の化け物
そして、横の鏡に映っていたのは15歳の僕だった。
「は?なんだこれ?」
「夢にしちゃあ、おかしいぞ」
そう、これはいつもの夢じゃない
いつもだったら鏡に映るのは小学生の頃の
家族を救えなかった情けない子供の姿だ。
え?なんで?
そんな戸惑いが頭を、埋め尽くそうとしたとき、
目の前の黒色の化け物が少しずつ小さくなって
そこに現れたのは
人間のそれとは少し違うような白い肌
いや、まるで太陽など一度だって浴びたことのないと言っているような綺麗な白色の肌。
それに、腰まで届く長めの血を被った(ぬった)ような
絵の具の純粋な赤色で塗ったような
どちらの言葉も何か違うそれでもとても妖艶な赤い髪。
目は少し金色の
まるで月でも見ているような大きな目をしていて
リビングの割れた窓から少しばかり漏れて部屋を映し出す本物の月の光も相まってとても幻想的に見えた。
背は140cm位の中学生くらいなのだろうか、それにしては少し胸が成長していた。
その姿は、とても綺麗で奇麗で危麗で
極麗だった。
「オイ、燈也、燈也!」
そんな声が聞こえて、ハッと目の前の少女の顔と向き合った。
「我に見とれるのは分かるが、やっと話せるようになったのだ。
少しは話をさせろ。」
「は?」
何が起こっているのかさっぱり分からずそんな間抜けな声を上げた。
「は? では、ない! 我がずっと呼びかけているのに気づきもしないで」
「気づきもしないってさっき名前を呼んだときか?」
そんなことを、ずっとと呼ばれたらたまったものではない
そんなことを思っていると予想外の言葉が返ってきた。
「阿呆か、そんなことでずっとなど口にせんわ」
「そうじゃの~、どのくらい前かは忘れたが
主の燈也の胸を刺し
我を取り込んだときじゃ」




