ー二話目の略奪ー
車がゆっくりと停車し、車椅子が素早く出される。
私は、ゆっくりと車椅子に乗って、美弥の営むケーキ屋の中に入った。カフェなように気軽に入れる。優しい雰囲気が漂っている。
美弥は、私と同じく四歳の頃に母親を亡くした。まぁ、私のは私が殺したんだけどね。
今は、父親の亮さんと二人で営んでいるんだそう。って、私の前世なんだから知っているけど。
「美弥、美弥。」
「毬ーっ!会いたかった!長いこと来てなかったじゃない。」
私が声を出すと美弥が気付いて手を振り、近付いて来る。
そして、じいやと車椅子の取手を変わり、厨房へと入っていく。
「おっ、毬ちゃんじゃないか。ケーキを作りに来たんだね。」
「はい、お世話になります、亮さん。」
「いいよ、今日は水曜。お休みの日だからね。」
「うんうん。毬は椅子に座って料理してね。私が素早く材料とるから!」
そう言って、高い椅子を出し、パパパッと準備してみせた。
私は、車椅子からゆっくりと降りて、高い椅子に座る。
ケーキ作りが始まって、初めてだったから、上手く出来ないこともあったけど、美弥に教えてもらいながらだと、それなりに上手くできた。
最後にチョコレートの面に乗せたクリームの上に苺を乗せて完成。
完成したときは、嬉しくて立ち上がり美弥と手を組みやったー!と叫んだ。
「あっ」
「わっとと!」
いきなりに足がついていけずその場で崩れるところで美弥が支えてくれる。けど、流石の美弥も私の体重を支えきれないのか、ふらふらしているところにじいやがきて、私を車椅子に座らせてくれた。
「ふぅ…あ、もう二時…?お客さんが来ちゃう。
美弥、亮さん。今日はありがとうございました。」
「いやいや、是非ともまた来てくれ。」
「まってるからね♪」
二人のお見送りに感謝しながら、車内に乗り込み、手作りのケーキを大切に持つ。
「かいと朱里は美味しいって言ってくれるかな」
「いいますとも。毬お嬢様が作ったのです。言わなきゃおかしいですよ。」
「ふふっありがとう。」
そうだよね、二人なら喜んでくれるよね。それが美味しくても美味しくなくても。
だって二人は優しいから。
***
屋敷の前について、車椅子に乗る。
沢山の召使いがお帰りなさいと言ってくれた。
お部屋ではなくお庭で食べようかしら。
でも、少し暑いから、やっぱりテラスでいいかなって。
考えたりもして。にやけてしまう。
「じいや、テラスでたべるから用意しておいてね。
私は、二人を出迎える準備するから。」
「仰せのままに。」
部屋のことはじいやに任せて、私は、身を整え、二人が来るのを待った。
わざわざ屋敷の玄関に手押しで車椅子を押して、道路を見る。榊家の白い車が来たのが見えて猛スピードで屋敷の中に入り、笑顔を準備。変だよね、遊びに来るだけなのに。
楽しみにしてる。
***
「おや、毬。出迎えてくれたんですね。」
「わざわざありがとなー。」
「ううん、楽しみにしてたから。私の部屋のテラスで食べよう?」
車椅子を押して、二人を案内する。階段のところでから降りて、ゆっくりと登っていく。優雅とは言えず、手をついて歩く。まぁ、かいと朱里が途中で肩を貸してくれたけど。
また車椅子に乗り込み部屋の扉をあけた。