一話
あれから、2年。体は子供、頭脳は大人、名探偵コ〇ン状態の私はもう六歳になった。
正確には、今日。そして、今木戸口の屋敷では盛大な誕生日パーティーが開かれている。
木戸口と親密にある各名家の方々が次々と、私の前に現れては祝いの言葉を告げて行く。
それにお礼を言いながらも、私は会場を見渡してあの人が来るのを待っていた。
あの日、事故と見せかけてお母様を殺した後、私は病院のベッドで目を覚ました。
隣には、椅子に座り、心配そうに私を見るお父様の目は少しだけ腫れていて、多分泣いたのだろうと分かった。
お母様の姿はない。私がお母様は?と聞くともう、帰ってこないんだ。とまた泣いて、私を抱き締めた。
なのに、私の思考にあるのは『良かった。成功したんだ。』と言う、達成感だけだった。
けれど、人を殺した罪悪感はこの先いつになっても消えないだろう。
車椅子の日々は歩かなくていいのが素敵。まぁ、なんとか歩けるようにと練習した回があって五分は立てる。階段は登れるようにはなった。連続は無理だけど。
あの日から、お父様が私に対して過保護になり、毎日食事を共にしてくれるようなったのは、いい傾向だ。
ボーッと、あの日のことを思い出していると私の前に二つの花束が差し出された。
片方は赤い薔薇の花束。もう片方は白薔薇だ。
そして、それを差し出したのは、誰でもない、私が会いたかった親愛なる二人、朱里と乖離だ。
「毬さん、この度は六歳のお誕生会パーティーにお招き頂きありがとうございます。
そして、お誕生日おめでとう御座います。」
「誕生日おめでとー!俺、榊乖離!こっちが榊朱里!
足が弱いんだって?俺らが守ってあげるよ!」
「乖離、毬さんに失礼ですよ。」
漫画では、毬と双子が出会う場面は描かれていない。作者の個人ページに番外編として小説だけが残されていた。
確か、車椅子に乗る毬に双子が守ってあげるのだと約束していた気がする。だけど。
「…折角のお言葉ですが…私、守ってもらうほど弱くないです。」
私の発した言葉に二人がえ?とゆうような表情をする。
そりゃそうだ、これだけの美形に守ってもらうなんて言われて断るなんて予想外だろう。
守ってもらいたいけど、朱里は心の強い人が好きだから。強く成らなきゃいけない。自分の心を自分で守れるように。
「私の誕生日パーティーに来てくださり感謝します。よければ、守るとかそういう立場ではなく、友人になって頂けませんか?この体だし、立場上、友人が少ないんです。」
友人がいないことはない。一人いるのだ、お母さんが早くに死に、今は父親と共にケーキ屋を営んでいる女の子。
美弥。これから先、私が未来を変えるからには、二人が出会うときも変わるかも知れないのだ。マークはしとかなくてはいけない。
だから、前もって私はケーキを買いに彼女に接触した。彼女達の作るケーキは本当に美味しかったし、今日私の誕生日に使われているケーキは私がお父様に我儘言って、美弥の家のケーキを作らせた。
「友達か…うん、宜しくな、りーちゃん!」
「…りーちゃん?」
「うん、ニックネーム。俺の事は、かいって呼んでくれよな!」
「ほら、朱里も!」
「分かってるよ。宜しくお願いしますね、毬…さん。」
呼び捨てで言うのが少し恥ずかしいのか躊躇う朱里。
私がニコリと笑えば改めて毬と呼んだ。
「宜しくお願いします、かい、朱里。」
木戸口毬、お友達を手に入れました。
***
パーティーから三日後の今日。
お昼の三時にかいと朱里がこのお屋敷に遊びに来る。
じいやと私が呼んでいる古くからの執事、前橋さんに頼んで車を出してもらい、車内にゆっくりと乗り込む。
「毬様、どこへお出かけですかな?あと四時間で乖離様と朱里様がこられるのですぞ?」
「わかってる。美弥に二人に出すケーキの作り方を教わりながら作るの。
二時間で完成するわ。」
「なんと、毬お嬢様がお作りになるのですか!?」
「そう。私が作るの。二人とも、是非私の手作り料理が食べたいって。」
そう。二日前、パーティーが終わって、お屋敷に止った二人と三人で料理の話をしていたのだ。
「料理はやっぱり手作りだろー」
「手作りですか…まぁ、心が入ってる方がおいしいですね。」
「…私ね、スイーツを作るんだけど明後日にケーキを作るから食べに来てくれる?」
私が提案した予定に二人は快く受け入れてくれた。
だから、心を込めて作るの。
二人が喜ぶ顔が目に浮かんだ。