prologue *三度目の転生*
自分がまたもや『貧乏娘×御曹司=✕✕✕✕!?』の世界に転生したと気付いたのは、私にしか判断できないような高密にできた犯罪を犯した、すぐ後だった。
私を守るように抱く義理のお母様。足の感覚が消えて震えながら泣く私。
傍から見れば、まるで悲劇の親子。
でも、違うのよ、本当は。
全て、私の犯行なの。私がお母様をこの手で殺したのよ。
お母様と散歩に寄ったお寺の誰もいない階段で、突然立ち止まった私を不審げに振り返ったお母様に思い切り抱き着いたの。
当然お母様と私は転げ回った。階段の下につく頃には、お母様の頭からは大量の血が。私の足は感覚が無くなった。
人だかりができて、救急車に乗せられて。気絶しそうになったとき。
今の私が転生した少女、前世の私が友達になれなかった木戸口毬ちゃんの声がら聞こえた気がした。
『ごめんね、お母様。』
謝罪の言葉を発してるのに、その口元は笑っていて。
視界の裏で彼女と目が合ったとき、私は気を失った。
前世の前世、この『貧乏娘×御曹司=✕✕✕✕!?』の読者だった私の記憶によれば、木戸口毬は悲惨な過去を持つ悲劇の少女だった。
漫画の終には、前世の私であったヒロイン、遠山美弥を守るヒーロー、榊朱里くんに色々と暴かれ幼馴染みの好で最後に大好きだったよと言われた瞬間になって逃亡し、行方不明になるエンドを迎えるニュータイプな性格の悪役だ。
作者さんの公式ブックでは、その過去が明らかにされていた。行方不明エンドのことも書いてあったけれど。
毬は、長く柔らかそうな白髪に、鮮やかな赤色の瞳を持つアルビノだ。そして、ヒロインが話し掛けた最初のクラスメイトでもあり、ライバルになると友好的な態度から一変、敵になる女の子として、描かれている。
それが、今世の私。