2/18
--- p ro logue
人々が手に汗握り叫ぶ中、闘いは続いていた。
熱い視線の先には、身の丈ほどあると思われる長い両手剣を手にした二人の剣士。
刃と刃がぶつかり合い、躍動感溢れるリズムを刻む。
剣士が動くたびに足元から舞い上がる砂埃が、小さな天窓から差し込む日の光を受けて輝く。
幾度となく繰り返される駆け引き。……しかし、この戦いもどうやら終焉を迎える様だ。
「はッ!」
短い気合いと共に繰り出された剣。その黒色の刃は、迷うことなく相手の首へ添えられた。
「……っ、参った。」
小さな呟きが聞こえたか、聞こえていないか――――
「うおおぉぉぉぉぉ!」
耳を劈かんばかりの喚声が、闘技場の中で弾けた。
この物語の主人公は―――
黒い長髪をなびかせた、鋭い眼をもつ勝者の剣士でも―――
金髪を汗で顔にへばりつかせ、灰色の眼に悔しさを滲ませる敗者の剣士でもなく―――
観客席の一番前、騒ぎ立てる人々に押し潰されながらも、興奮に目を輝かせる一人の少年、セミリオ=フィニアルスである。
ここは小さな街イルス。今日も相変わらず、平和に時が過ぎてゆく。