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002話 家族にすら緊張する始末

 目が覚めたら赤ん坊となっていた。

 

 よく解らないがそのことだけは、理解していている。不思議だ…

 一応、神様を名乗る美人のお姉さんが出て来たのだ、これも神様クオリティなのだろうか?

 視界がぼやけて良く見えないが、俺を見守る視線が3つ…

 その中の1つが声を発した。


「キャーーーーー、見てみてエド!!!

 この子動いたわ!! ほら、見て《ぴくっ》て、ほら!!」


「ああ、元気そうな子だ。君に似て賢そうな顔をしてる」


「そうなのよっ!! 

 瞳はエドに似てるわね♪

 キャーーーー、将来はイケメンに育つわよ!!」


 騒がしい人達だな。

 依然視界はぼやけたままだったが、近付いて来るソレはハッキリと見えた。

 手だ、まだ幼い子供の手である。


「コニー? あたしはおねえちゃんですよー。

 ヨロシクね♪」


 ああ、うん、やめて、近付かないで。俺に触れないで。怖い。コワい…

 コミュ力ないんだよ俺は…な、泣くぞ!!


『オギャー、オギャー…』


「きゃっ、おかあさん、コニーが泣き出した!」


「ミア? コニーになにか悪戯したの?

 あんなに大人しかったのに…

 ほ〜ら、お母さんですよぉ〜」


「あ、あのミーシャ、後で良いから僕にも抱かせてくれないだろうか?」


「ならエドぉ、いまから抱いてみない?」


「ああ、抱かせてくれ。

 おーい、コニー? お父さんですよぉー」


「ズルい、ズルい。ミアも抱くの!!」


 それから、この三人に抱き回されるのだけど…

 

 勘弁してくれええええええーーーーーーーーー

 人と…人との距離が近すぎるぅうううう。

 やめて、触らないで!! 心拍数上がるから!!

 顔、赤くなっちゃうからああああ!!


 俺の対人能力で異世界転生は難易度が高そうです。



 産まれてから数ヶ月経った。

 俺こと《コンラッド・ウィスタリア :愛称はコニー》は、いつもの様に大人しくベッドの上に座り、窓の外を眺めて過ごしている。

 俺の居る家は、小高い丘の上に建てられているらしく、眺めが良いため、前世の趣味が人間観察と観光地巡りだった俺は十分に楽しむ事ができた。


 窓の外に広がるのは、緑豊かな田園風景。植えられている野菜は米の稲のような野菜(見た目は稲と変わらない、が、微妙に違うみたいだ)で、その光景にどこか懐かしさを感じる。ああ…多分、田舎の婆ちゃん家から見える光景に似てるんだ。

 そこを牛のような動物(角がめちゃくちゃ大きくて鋭利…あれを牛とは俺には言えない)が、農家の人(?)に連れられて畑を耕す光景は穏やかさを感じずにいられない。

 

 視線を変えれば、人の住む民家が見える。

 一際大きい西洋風の建物から、子供達が出て来て遊び始めた。

 そういえば、俺の姉であるミアさん(4才)もあの場所に行ってるらしい。

 どうやら、学校みたいなもののようだ。

 

 あそこは…もう少しコミュ力身につけないと死ぬな…

 目を凝らすと、3〜13歳までの子供が居るみたいだし…タイムリミットは、後、二年か…


 近付く恐怖の日に震えながら、俺は自分の現状に恐怖した。


 俺はどうやら《剣と魔法の世界》に転生したらしい。

 まぁ、それは良い。問題はソコでは無い。なんとなくだが、どうにかなりそうな気がするし…

 問題は、俺がこの世界でもボッチで居たいかだ。


 答えはNO。

 何が悲しくて、転生してからもボッチでいなければならんのだ。

 出来ることなら、友達が欲しい。転生モノの小説の主人公みたく、仲間に囲まれてみたい。美少女とのフラグも建ててみたい…

 だが…だが、今の俺にそれを可能とするコミュ力があるのか?


 答えはNO。

 俺にはそんなコミュ力無い。

 今だって…


「コニー♪ ご飯のお時間ですよぉー」


 あ、来た…我が母こと《ミーシャ・ウィスタリア》…ウェーブの掛かった薄い紫色の髪。まるで引き込まれるかの様に澄んだ蒼い瞳。まるで、映画女優のような美しい外見。…とんでもない美人が、笑顔ニコニコで、俺を追いつめて来る…俺は、俺はこの人が苦手なのだ!!

 中でもそう、このご飯の時間が一番苦手だ、だって、だって…赤ちゃんの食事って…母にゅ…


 俺には、俺には無理だぁあああ!!!


「こら、暴れないの!!

 ご飯食べないと大きくなれませんよ(ニコニコ」


 ヤメテーーーーーー…

 

 もう、アレだよね…

 コミュ力云々言う前に、対人能力ゼロなのが問題だよね。

 実の親相手でコレじゃ…先行きOUTじゃね?



 夕方近くになるとミアさん……我が姉・《ミア・ウィスタリア》さんが帰って来る。

 俺はその時間が怖くてたまらない…

 何故なら…


ニコーーーーー


 ミアさんは帰って来ると、俺のベッドまでやって来て、俺の様子をじっと見続けるからだ。

 俺はこの視線に耐えられない。耐えられないのだ!!

 徐々に頬が赤くなり、思考が真っ白になって行く。

 無理だ、無理だ、無理だ、無理だ!!

 ここまでならまだ良い。だが…


「コニー♪ 今日ね、今日ね、ルーカスがねぇ〜」


 ああ、始まった、彼女は帰って来るとその日あった事を俺に聴かせるのが趣味のようだ。

 話を聞くのは良い。しかし…見続けられるのが耐えられない!!

 しかも、ミアさんはおそらく、美少女に分類される程の外見だ。

 愛くるしい蒼い瞳、赤みの強い金髪、愛くるしい所作…ロリコンホイホイな人なのだ。否、ロリコンじゃなくてもホイホイされちゃうぐらいの可愛さだ。

 そんな彼女に見つめられると…通常の3倍の速さで、頭が真っ白になる…

 しかも、彼女は話し始めたらノンストップだから、晩ご飯までの数時間話しっぱなしだ…勘弁してー…



 我が父・《エドヴァルド・ウィスタリア :愛称はエド》の話をしよう。

 彼はイケメンだ。ソレ以外の何者でもない。

 前世で男性のアイドルを何人もテレビで見て来たが、その人達に勝るとも劣らない程カッコイイ顔立ちだ。

 顔だけじゃ無い。鍛え抜かれた身体は同性でも惚れ惚れするものがある。

 短く切られた金髪と、彼の穏やかさを表してるような深緑の瞳、穏やかな口調…外見だけなら100点満点だ。

 しかし…


「コニー、ただいま。

 今日も良い一日だったよ。

 コニーは元気だったかい? 今日は、お父さん、コニーと何時でも剣の稽古が出来る様に木刀を二本買って来たんだ。早く、一緒に剣の稽古しような♪」


 確かに、真新しい木刀を二本持ってらっしゃる。

 でもさ、コレって、産まれたばかりの赤ん坊に《大きくなったら一緒にキャッチボールしような》って、グローブ買って来る親バカのお父さんと一緒なんじゃ…


「エド?

 まだ、コニーは生後間もないのよ?

 木刀買うのは、少し速すぎない?」


 ああ、やっぱりオカシイらしい。

 母が優しくいさめに来た。

 しかし、父も食い下がる。


「う…でもさ、ミーシャ。

 ほら、コニーは男の子だから直に剣の修行を始めても…」


「ミアのときも直に買って来たよね、エド?

 で、その時買った木刀、エドの分まだあるよね?

 二本も買う必要、あったのかなぁ?」

 

 なんとなく、父の劣勢はみてとれた。

 大変だな、うん…


 それにしても、剣か…

 この世界で生きて行くには、剣術を身につけなければならないだろうか?

 とりあえず、我がお父様は剣術を必要とする職業に就いてるらしい。


 エドは毎日朝早くに、軽装の鎧を身に着け仕事に出かけている。

 なにやら、カッコイイ剣をモチーフにした紋章が施された鎧だ。

 何処かの団体に所属しているのだろうか?

 騎士団とか…

 

 団体か…

 

 今更だが、この世界にはテレビやネット環境なんて無い。

 絵に描いた様な典型的な剣と魔法の世界なのだ。

 魔法は、母が使っているのを見た。剣は、父様がそれを生業にしているところから必要なのだろう。

 だが、そう言う世界なのだから、尚更、引き蘢るわけにはいかない。


 苦手意識をしている暇はない。

 早く、早く、コミュ力を身につけなければ…


 急がないと…駄目だ!!

 転生してから数ヶ月、俺は脱ボッチを心に誓った。




 

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