第8話 ユキワリソウ
ものすごくつかれた日だった。
ベットに倒れこむ。体が、一瞬布団に沈むがすぐに浮き上がってくる。
驚かされた日ともいう。
学園長は、キャラこいいし、そろいもそろって、俺を女だと勘違いしやがるし。
俺はれっきとした男だってのにさ。そりゃ、女装しているほうが悪いんだろうけど。
むかつくけど、それほどまでオウカちゃんのメイク力がすごいと考えればいいか。
どうしてみんな俺が男だって気づかないんだ。おかしいだろうよ。
それにしても、オウカは男装していてもかわいいな。
まぁ、元がいいからな。男装したって女装したって、何を着たってあいつは似合うのかもしれない。
友達と呼べるかどうかわからないけど、話せる人間いるしいいか。
ちょっと思い出すのは、とても暗く濁った色をした過去の記憶の断片
そんな、ホムラの考えを振り払うようにドアをノックする音がした。
コンコン
ホムラの部屋は、男子寮の3階
ドアが外側からノックされるはずはない
幻聴か……。
カーテンの向こう側にいるのはきっと人間ではないものだろう。
ホムラにしか聞こえないのならば、魑魅魍魎の類
しかし……
(ホムラ、とっとと開けなさいって!)
頭の中に響く
聞きなれた声
「っ!オウカちゃん」
急いで、カーテンを開けてドアを開ける。
窓の外には、飄々とした表情のオウカちゃんがいた。
どうやって上ってきたんだ?
「やっほー。ホムラ、中入れて!」
ひらりと、室内に入ってくる幼馴染の姿。
試行していた脳がようやく動き始める。
「どうして、オウカちゃんがここに?」
目の前にいるのは男装姿の恋人は、太陽のように眩しい笑顔でとんでもないことをほざきやがった。
「女子寮追い出されちゃった。アハっ」
…………
!!何やったら女子寮追い出されることになるんだよ!
だいたい、女子寮追い出されたからって男子寮来るのおかしくないか?
それもこんなに夜遅いんだぞ!
いくら学内だからと言ったって、襲われたらどうするんだよ!
オウカちゃん、自分が女だって自覚ある?こんな夜更けに出歩くなんて!
それもここ、思春期の男たまり場だぜ。
あれ?
「なぁ、オウカちゃん。」
「なに?」
にこにこ
こっちの考えをどうせ読んでいるから口にしなくてもわかっているはずなのにどうやら口に出させたいらしい。
「おまえ、男だとまだ勘違いされてるだろ」
「うん」
これまたすがすがしいほどの笑顔で言う。
そのきれいな笑顔造るよりも先に、女子寮の奴らに自分はれっきとした女ですって言ってこい!
とりあえず、目の前の男装少女の頭にチョップを落とすことにした。
「いあいっ」
当たり所がよかっ……悪かったらしく、涙目になりかけているオウカちゃん
そんな目したって、ダメだ。
これはそう、この間女装させられたとき気絶させられたときに殴られたお返しだ。
アレは、痛かった。まさか、気絶なんて人生で体験するとは思わなかったよ。
っていうか、女子寮の奴らもこいつが女だって気づけよな。
右から見ても左から見ても、どう見てもこいつは女だ。
そもそも、名前からして女の子の名前だろうがよ。
お前ら揃いも揃って、馬鹿なのか?
そして、俺の恋人はとんでもない破壊力を持つ一言をの賜った。
「今夜ここに泊めて。」
結果から言おう。
泊めました。
別に何もなかったぞ!
あわててるところが怪しいと言われても何もなかったんだからしょうがないだろ?
シャワー上がりのオウカちゃんに発情しかけたり、余っている方のベットにコロンと眠る姿がかわいくて悶えたりは断じてしていないからな!
そういう姿や、それ以上の姿を俺はなんだも見たことがあるしさ。だって、同じ施設で暮らしてたんだぜ。寝顔を見る機会なんて、何度もあるだろ。
興奮して眠れないっていう事態が起こるわけなく、俺も眠りについた。
そう、問題が起きたのはどちらかというと朝だ!
いくら男装していてもオウカは男ではない。女だ。そして、寮監は俺が男であることを知っている。そしてあの寮監は、すべての両性の顔と名前をすでに一致していやがる!どうやって、オウカを外に出すかということだ。いくら幼馴染とはいえ、寮に女を連れ込むのは問題だろう。いきなり退学処分なんて冗談じゃない!あぁ~どうして俺そういうことに昨日の夜頭まわらなかったんだろう。
やばいじゃん!
どうすればいい?どうすれば問題ない?
すぅすぅと心地よく眠るオウカを横目に考える。
俺が連れ込んだわけではなくこいつが勝手に入り込んできたのだ。
とにかく、この眠り姫を叩き起こすことにした。
布団を剥ぎ取り、床に落とす。
ごとん
嫌な音が鳴ったが気にしないことにする
「むにゃむにゃ。ほむぅらぁ」
床に落とされ布団がはぎ取られたというのに、まだ寝ている
今の状況の危機感など全く気にしていないように寝言までいう
どんな夢を見ているのか、正直気になるけどさ。
それどころじゃないんだよ!
「とっとと起きろ!!」
そして、近所迷惑にならない程度で怒鳴った。
「おはよぉ。朝ぁ?」
「あぁ」
もぞもぞと起き上がり、かわいらしく首をかしげる
そのせいで、寝巻が少しはだけているのだが……本人は気が付かない
あるいは、わざとやっているかのどちらかだ。
寝起き早々に、俺の心を読んだのかにまぁとわらいやがる
今考えたことや脳裏に浮かんだことが勝手に読まれている
まぁ、慣れたよ。人間なれる生き物なのさ。
「ホムラ、ボクの着替えみたい?みたいなら見てていいけど、どうする?」
意訳:着替えたいからさっさとむこういって!お前も着替えなさい!
ホムラは、自分の服を持ってオウカの前から逃げるように姿を消した。
15分後、着替え終わった俺が室内に戻った時
オウカの姿は忽然と消え、置手紙だけが残されていた
寮監に怒られないように、先に食堂いってま~す。ホムラも急いでね♪
PS 窓締めておいてね♪
ひらひらと風にあおられるカーテン
間違いなく、来た時と同じように窓から帰ったのだろう。
そして、今日も窓から来る気がする
いや、絶対来る
締めておいてね、そして開けておいてねという言葉が隠れている気がするのは俺の被害妄想ってやつですか?
俺が朝悩んだ、問題はあっという間に片付いてしまった。
俺悩む必要なかったんじゃない?
食堂にいるオウカを待たせるわけもいかず、先を急ぐことにした。
花言葉は信頼です。
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