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このエッセイはフィクションです  作者: 神楽ユリ子
第一章 二十九歳の諸々
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006.日本の夏、特撮の夏

 特撮博物館がもうすぐ終了らしい。

 特撮博物館とは言わずもがな、日本のオタク四天王の一人(安野モヨコの『監督不行届』からの引用)とされる庵野秀明監修による特撮に特化した展覧会で、実際の撮影に使われたミニチュアや小道具、デザイン画などの資料を500点以上展示している。

 私のこの夏の思い出は、これに行ったことだけだ。しかも二回も。そしてそのうちの一回は無理やり津田くん(仮名)を連れて行った。

 なぜ津田くんが巻き込まれたのかというと、そもそも最初から二回行くつもりだったので前売り券を二枚購入していたのだけども、すでに行った人のブログ見たら「自分が巨大化した風に写真撮れるエリアは、一人だと気まずい。誰か写真撮ってくれる人を連れていくべきだった」と記述されていたため、まんまと夏休みだった津田くんを連れていったのだ。

 ちなみ津田くんにこのいきさつは説明していないので、なんで自分が連れて行かれたのかよくわかってないだろうが、特に説明も求められなかったので支障はなかった。

 一応、人と一緒に行くのだから、あまり人を放置して自分の世界に没頭しないでおこうと思っていたのだが、津田くんは津田くんでゴジラの背中のチャックを必死で探したり、デザイン画の前で突然長考し出したりして勝手に堪能しているようだったので、私は思う存分マットアロー2号に夢中になり(帰ウルファン)各々それなりに充実した時間を過ごした。こういうのって、今更だけど一緒に行く人のチョイスって大事だよな。

 そして注目の「巨神兵、東京に現る」では、わりとマジで恐れ慄き、見た後にある制作過程を紹介するエリアがなければ恐れ慄いたまま博物館を後にするところであった。

 あー、しかし面白かったなぁ! 湯水のごとくお金と時間と手間がかかる技術だけど、やはり人が実際に手をかけて作ったものって、どんなに精巧でスタイリッシュなデザインであっても、月並みな言い方だけど温かみがあっていい。

 昔の番組って子ども向けでも、結構エグいエピソードとかあって今だったら絶対放送できないんだろうな……っていうのもあるけど、どこかに手作り感というか、人の手で作ってるのが滲みでてくるから、ショックを受け考えさせられながらも、いい意味でつくり話として消化できるのだと思う。

 もちろん、それを見ていた子どもたちが大人になって素晴らしい人間になったかというと、それは人それぞれなので、昔のほうが良かったというわけではないけども。

 これからの日本、こんなにお金と時間と手間をかけて特撮やる余裕なんてもうないのだろう。でもこの国に、それができた時代があったことは喜ばしいことであり、その爪あとと情熱にこういう形で触れられたことは幸せに思うのであります。

 ちなみに帰り道に津田くんは、延々と日焼けに失敗した話しをしていた。特撮関係なし。

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