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このエッセイはフィクションです  作者: 神楽ユリ子
第一章 二十九歳の諸々
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004.自分を大切に

 ぼーっと電車に乗ってると、興味があるわけでなくてもやはり車内の広告が目に入る。なんとなく見てると見過ごしてしまうけど、雑誌の煽り文句とか結構冷静に見ると面白かったりする。「着回し三種の神器!」とか、一瞬「なんだなんだ、洗濯機的な話か?」とか思ったけど、多分「あの人いつも同じコーディネートね」とか思われないために、○○を買いましょう! 或いは同じアイテムでもこんなに違う着こなし方ができるよ! っていう趣旨なのよね。読んでないから真相は知らないけど。

 そんなふうにぼんやりと、あまり頭に入らないなりに広告を見渡してみたところ、某消費者金融の広告が目に入った。女優のIさんの広告だ。かわいいなIさん。しかし、そのIさんの写真の横に書かれた文面の内容に、私は大変ショックを受けた。

 どうやらIさんの設定は、その会社で働くOLで、お客様のことを一番に考えるとてもかわいくて優しくて仕事ができる女性のようだ。それはいい。しかし、しかしだ!

 Iさんは常にお客様のことを第一に考え、どうしたら喜んでもらえるのだろう、と職務を追究するあまり、一日中そのことを考えているという。しかも、全然飽きないというのだ。

 いやいやいや、一日中は考えすぎだろう! 仕事中だけならまだしも。

 一日中、お客様、そしてまだ見ぬ未来のお客様の喜びのために考え続けているという……いやぁ、それちょっと病気じゃないかな。病気じゃなくても、なんかちょっと問題抱えてそうだ。

 他者から評価を得ることでしか自分の存在意義を感じることができない、自己評価の低さが「一日中他人の喜びのことを考える」というちょっと常軌を逸した行動に走らせているのではないのか? 自分で自分をある程度は肯定できないと、生きてるの苦しいと思うよ!

 しかも人のことばっかり考えてる人って、相性もあるのだろうけど私は一緒にいて逆に息苦しい。どうしたいの? どうしたいの? と問い詰められても、そりゃ目的がはっきりしてるときはいいけど、日常生活なんて大抵、「なんとなく」「こんな気分」で物事すすめるじゃん。それをいちいち言語化することを求められるのも、めんどくさくてたまならい。適当にお互いの気分をぶつけあって、なんとなく妥協点探ればそれでいいじゃないか。

 もしくは、「あーそういう気分だった、うん」と、私の気分を察知し言いたいことを見事に代弁してくれる人だとしても、それはそれで、なんか頭使わなくなって自分がダメ人間になりそうだし、「こういう気分でしょ! わかってるよ!」とドヤ顔されるのも腹立たしい。

 あと個人的に、必要以上に尽くすタイプの人が幸せになっているイメージがない。たいていやりすぎて疎まれて振られている。そして大概こう言う。「あんなに尽くしたのに」。

 仕事で人に尽くさないといけないということもあるだろうが、一日中はさすがにやりすぎだと思うぞIさん。人に尽くすことは、結局は「人の役に立った」という自己満足を得ることであるのだ。その辺りの認識と覚悟がないままその生活続けたら、いつか何かに裏切られたとき、恨み節かまさないか心配だ。

 もっと自分を大切にして!

 そうひと通り考えてみたけども、あれはCM上のキャラクターであって、別にIさんご本人がプライベートでどうかといえば、もしかしたら自分のことしか考えてないわがままさんかもしれないのだ。それは事実はどうであれ、私には知る由もない。

 故に、そんな心配は杞憂であり、私の自己満足でしかないことをぼんやりと次の駅に着くまでの間に思ったのだった。

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