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このエッセイはフィクションです  作者: 神楽ユリ子
第一章 二十九歳の諸々
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002.空想と正義

 366日分、生まれた日ごとに基本的な性格や隠れた自己などを解説してくれる本が、いくつかの出版社から発売されている。あれを見るのが結構好きだ。自分の分のみならず、身近な友達の分も読んでみたりしている。

 出版社によって占いの方法や解釈が多少違うだろうから、本によって結果が異なるのは当然なのだけど、私の場合、どの出版社の本を見ても、たいてい「空想家」「想像力豊か」と評される。

 ま、まぁ、基本は多分どれも西洋占星術がベースだろうからな。

「類まれなる想像力を持っています」、このへんはいい。褒められた気分だし。

「些細な出来事でも、面白くすることができます」、このあたりもいい。生き方上手って感じで。

 しかし読み進めていくと、「トンデモナイ話しでも臨場感たっぷりに喋るので、聞いてる人は嘘か本当かわからない」「想像力の豊かさ故、突拍子もないことを言い出し、時々周りを困惑させる」「自覚なしに嘘をつく。本人に悪気は一切ない」。

 ……うーむ。地味にタチ悪いな。特に「自覚なく嘘をつくが悪気なし」のあたり。

 そして自分は自覚なく嘘をついている可能性があるということに気付いたため、深く反省する。ウソツキハイケナイヨー! 世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です!

 ついでに違う友人の分も読み比べてみたりしたのだが(暇だな)、友人の津田くん(仮名)の占い結果を見てみると、彼はだいたい「正義感が強い人」という結果であった。うーむ、彼が正義感が強いという印象はあまりない。曲がったことが好きではないだろうが、大嫌いという印象はないなぁ……と、占い結果を流しかけたところで、この夏の思い出をふと思い出した。

 その日はたまたま津田くんとふたりで飲んでおり、日本酒飲んで完全に出来上がっていたのだが、動物園の話しになった際、津田くんは突然大真面目にこう言った。

「……僕はねぇ! 猿が嫌いなんですよ!」

 突然の猿嫌い宣言。どうした津田くん。

「動物園とか行って、みんなサル山にきゃーきゃー群がるじゃないですか! でも僕は違いますよ! 猿に対し、誰もがお前らに対してきゃーきゃー言うと思うな! というかもう俺の中ではサル山なんて存在しないんだよ! お前らには興味ないんだよ! という勢いで、サル山には一切目もくれてやらないんですよ!」

 昨今、サル山にきゃーきゃー人が群がるかは別として、相当猿が嫌いな様子。どうした津田くん。

「どうした、常に冷静な君らしくない! 猿に対してなんのトラウマがあるのだ!」

「トラウマっていうか…最近、野性の猿が山から降りてきて、店の商品食い散らかすとかするじゃないですか! あれが許せなくって! 人が食ってるものをスキあらば横取りしようとしたり、車を傷つけたり! 一体何様なんだ! お店の人は一生懸命頑張ってるというのに、ちょっと山から降りてきたお前らに食い散らかされる云われはない!」

 ちなみに津田くんは、学歴だけ見れば日本トップクラスの学歴である。こんなところで私と酒のんでグダグダしてるので超エリートではないのかもしれないが、それでも十分エリートである。その彼が、何を言い出す。猿には猿の都合があるのだ。

「なんだい、ご実家とかおじいちゃんおばあちゃんのお家が、猿の被害にでもあったのかい?」

「いや、別にそういうわけでは。でも、ただ、猿のその自己中な行動が許せないんです!」

 動物に自己中うんぬん言ってもなぁ……。

「そりゃ、サル山に花火を投げ込んだ、とかそういうニュースを見たら、猿がかわいそうと思いますし、やった人間を腹立たしく思いますよ。でも基本的に、僕はあいつらが嫌いです。別に存在していてもいいけど、僕の生活に必要はないし入れる気もありません!」

 そして彼は猿との断然を宣言した後、猫画像を見て幸せそうにしていた。頭がいい人ってよくわからないな。

 そんなことを一通りぼんやりと思い出し、あぁやはり、彼は正義の人だな、という結論に至り、なんとなくその占い結果に納得したのだった。

 しかし、そんな正義の人が、自覚なく嘘つく私とよく仲良くしてくれてるな。

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