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00――いつも通りのプロローグ

※注意※

・作者の妄想と気紛れの産物です。

・最強物なため、そういう類のものがあまり好きでない方はご遠慮ください。

・設定があやふやだったり、プロットがおかしいことがあります。

・というか、そもそもプロットを殆ど考えずに書かれています。ご都合主義満載です。

・一切の断りなく更新変更される事があります。

・更新は不定期です。

・誤字脱字に関してはコメントで知らせてくれると助かります。

・応援コメントとか送ってくれるとやる気出るかも。


以上の事を承諾してくださる方は、駄文ですが楽しんでいってください。

朝。

濃い夜闇が支配していた世界を気の早い太陽が侵食する。

朝日を受けて、静かに澄んでいた世界は急速に騒がしくなり始める。

森に住むモンスター達の鳴き声が響き始め、街に住む人々の歌が微かに聞こえる。


この世界で最も高い山の頂上で、今日もまた朝を迎えた。

「やっぱり、何度見てもいいねぇ……」

普段は旅人達に景色なんてどうでもいいと一蹴する俺だが、ここからの眺めの特に朝日は何度見ても素晴らしい物だと思う。


絶望した時、疲れ果てた時、死にたくなった時。

この朝日を見ると、自分がちっぽけなものに見えて、世界の大きさを感じて。

傷を癒すとまではいかなくても、立ち上がる事力を貰った。


「さて、それじゃ。本日も頑張って生きますか」

今日もまた、朝日に後押しされて立ち上がる。



――――この、【エンディッド・ファンタジア】で生きるために。




  ・・・・α・・・・




出来るだけの勢いをつけて、ツルハシを振り下ろす。

「ハァッ!」

結構な力で振り下ろされたソレは足元の土へとぶつかり、火花のライトエフェクトを散らした。

地面に刺さったツルハシを引き抜くと、若干その先っぽを削りながらもその代償としてこぶし大の茶色い石ころを提供してくれる。

そのまま足元に転がった石ころは、数秒間実体化した後、僅かに残像を残して消えた。

予め指定してあったアイテムポケットへと収まったのだろう。

いちいち解析するのも面倒なので、石ころはそのまま雑多に入れておいたまま再びツルハシを構える。


この世界において、ツルハシを下す速度は関係無い。

ツルハシの切っ先が鉱石を穿つ事で鉱石を掘り起こす訳では無く、ツルハシの持つワーク・スキル【ピック】が作動して鉱石と言うアイテムを生成しているためだ。

よって、別にツルハシを全身全霊をかけて振り下ろす必要はなく、むしろ片手だけで行動しつつ空いた手で鉱石の解析でもしていた方が良いのだろうが、しかし今までの経験から運命の女神様は真面目な奴に微笑んでくれる……と信じている。


「ハァッ!」

もう一度ツルハシを振り下ろし、鉱石の欠片を出現させる。

今度のは銀がかった白色。レア度が茶色に比べて若干高く、茶色は銅等の4thクラス程度が中心なのに対してこちらは銀等の6thクラス程度の物が出やすい。

けれどもこれもまたすぐにアイテムポケット行きにして、ツルハシを構えなおす。


こんな作業を朝の4時ごろから繰り返し、もう300回を越えただろうか。おかげで鉱石用アイテムポケットには比較的レアなはずの白色の鉱石が50コ以上入っている。茶色に至っては200オーバーだ。

ウィンドウ上に無機質に表示されている数字であるからこそ持てるものの、常時実体化されていたらリヤカーでも持ってこなけばとても全てを運べなかっただろう。

最も、ツルハシの消耗度も目立つようになってきたし、今日はここまでかもしれない。

白鉱石のノルマである50コは超えたし、これ以上掘っても良いものは出ない可能性が高い。

けれども、半分寝てても繰り返せるほど体にモーションが染み込んでいるからか、それともネトゲ廃人の悲しき習性なのか。未だにここで未練がましくツルハシを振り続けている。

そんな事を思いながらツルハシを引き抜くも、残念ながら今度は茶色だ。


「出ないなぁ。オレンジ」

オレンジ。とは橙鉱石の事で、この辺り一帯で採れるかなりのレア鉱石である。

解析すれば最低でも7thクラスは保証。運さえよければ金等の8thクラスのレア物が出る可能性がある。

しかし、それだけ確率は低く今日の様に300回振っても1回も出ない事も多い。


「ハァッ!」

お願いします女神様ー。もし出たらお祈りの1つや2つぐらいするから出てくれよー、と祈りつつ再びツルハシを振る。


ガキィン! という音と軽い火花のライトエフェクトが舞って、ツルハシが地面へと刺さる。

そしてそれを引き抜くと――そこから現れたのは、緑色(・・)の鉱石だった。



  ・・・・α・・・・



この世界の名前は、【グローム・ウィル】と言う。

大分前からこの名前で呼んでいないので、あっているかどうかは怪しいが。

何せ、今やこの世界の住人の殆どがこの世界を【エンディッド・ファンタジア】と呼ぶため、元の名前なんて使い所が無いのである。

その名前にこめられた意味と皮肉は簡単にして明瞭。

エンディッド・ファンタジアの名前の通り、この世界は終わって(・・・・)しまっているのだ。


事は約5年前まで遡る。

当時大人気だったシリーズ、『ウィルシリーズ』もしくは『ウィル・サーガ・シリーズ』という物があった。

先程の『グローム・ウィル』の様に『~~~~・ウィル』という名前であるため、ウィルシリーズと呼ばれている。

意志(ウィル)という名を冠したこのゲームは、濃厚なシナリオと強烈なサブキャラクター達そして感情移入しやすい主人公を売りにしたRPGだった。

どのシリーズ作品でも、主人公自体の性格は薄くなく、むしろサブキャラクターに負けぬほど濃いぐらいである癖に妙に人間臭い所があるのが特徴で、不思議とその物語に入り込んでしまうような錯覚を起こさせるRPGだった。

またRPGでは珍しくジョブフリーの完全スキル制を採用していたためプレイヤーの思うような道へと進めたり、独特の世界観が勇者と魔王のファンタジーという王道でありながら面白く、「ハズレが無い」などと言われるほど全作品がそれぞれ完成されていたこと等から、ライト・コア問わず様々なプレイヤーがこのシリーズに熱狂的になった。

一時期はハードの売り上げとウィルシリーズの最新作の売り上げがほぼ同じだったというのだから驚きだ。


まぁ、ウィルシリーズ自体の事はともかく。

俺こと、二之宮時雨(にのみや ときあめ)が、このRPGの代表作である大作『ウィル・シリーズ』の最新作を買ったのはただの気紛れだった。

ゲーム屋に寄った日がたまたま最新作の発売日で、さらにはたまたま残り1本しか残ってないとなれば運命とやらを感じてしまって参考書の代金をほんの少し(・・・・・)減らして買ってしまったのも仕方ないだろう。無論、ただの言い訳ではあるが。

だが、どうやら運命の方は本物だったらしい。

家に帰って嬉々としてゲームを起動した瞬間、異常な頭痛に襲われ、そして気が付いたらこの世界に立っていた。

この世界に同じくやってきた30万人のプレイヤーと共に。


俺達がやってきたこの世界は、公式サイトやCMで見たウィルシリーズのグローム・ウィルにそっくりな世界観で出来た代物で、ゲームの世界としか表現のできない代物だ。ゲームと世界観が同じなのでは無く、まさしくゲームの世界という表現が正しい。

視界の右上にはHPバーとMPバーが表示され、特定の手振りをすることで【メニュー】を呼び出せ、物質はアイテム化してアイテムポケットに入れられる。

具体的に表現するのは難しいが、ついこないだアメリカか何処かの企業が開発したヴァーチャルリアルという奴に似ている。もしあれでMMORPGを作ったらこの世界の様な物になるのだろう。

中途半端にゲームに浸食された、リアルでもゲームでもない世界。

こっちに来る前に読んだ小説でもそんな奴があったが、それに近い、まさしくお伽噺の様な世界だった。


始めは何か悪い夢か、それとも大規模なゲームイベントかと思った。けれども、どちらもまた外れだった。

本家グローム・ウィルの旅立ちの街、【ルピス】の大広場でただ茫然と立ち尽くしていた30万人のプレイヤーの目の前で、なんとラスボスである魔王から直々にこのゲームについての説明があったからだ。

魔王は、全身真っ黒の鎧に手入れの悪い短い金髪という姿で、広場の上空に現れ、この世界についての説明をした。


曰く、これは間違いなく現実であり全てのプレイヤーはこの世界にやってきたのだと。

曰く、このゲームにおけるゲームオーバーは現実の死であると。

曰く、この世界から抜け出すには唯一つの方法――このゲームをクリアする――しかないと。


最後に、「倒せるものなら私を倒してみろ!」と言い笑った後、魔王らしくも無い快活な笑い声を残して魔王は飛び去った。

今でも、この事件の原因はウィルシリーズの開発部では無くあの魔王だと言われている。というか間違いなく奴だ。


ゲームの世界に入る。なんて言うと聞こえは良いが、最初の頃は本当に苦労した。

何せ街から一歩でも出れば目が合っただけで失禁するレベルのリアルモンスター達がうようよ居るのだ。とてもじゃないが歩けたものじゃ無い。

勇気を出して歩き出したと思ったら、現れたのは1メートルもあるイノシシ。なんて事すらあった。RPG的には雑魚だし、ステータスも低く確実に倒せる相手だが、迫力が違う。

始まってから1週間は無料開放されているボロッちい宿屋で他の犠牲者達と同じように布団をかぶって震えていた。

朝起きたら夢でありますようにと何度も祈った。いっそのこと死んでしまおうかと思った。


けれども、人間は慣れるものだ。なんだかんだ言いつつも1ヶ月後にはいっぱしのプレイヤーとしてこの世界でモンスターを屠っていた。

仕組みすら不明なゲームシステムの恩恵を受け、スキルを利用し、剣を振り、魔法を放つ。

そうして一部のゲームジャンキーやゲームに強い学生等を中心にこの世界(ゲーム)は攻略されていった。

4年の月日をかけて。

始まりから4年後。魔王城が攻略され魔王が打ち倒された。約8万人もの犠牲を出した挙句に魔王城は崩れ去った。


ゲームはクリアされたのだ。



だが、ここで思わぬシステムウインドウが全プレイヤーの前に現れた。

俺は魔王城攻略には関わらなかったが、あの瞬間は今でも覚えている。

あれは魔王を倒した後、攻略に向かっていたギルドメンバーと合流してギルドホームの大広場で飲めや歌えや騒げやのお祭り騒ぎをしていた最中に現れた。



“あなたは、この世界を去りますか?”

    Yes / No



まっとうな人間なら――例えばゲーム開始直後からゲームオーバーによる理不尽な死を恐れて始まりの村に引きこもったままだった人間なら――Yes以外の選択肢はない。

8万人の犠牲は、4年間の月日は、この世界から抜け出すための物だ。この命の危険がある世界にこれ以上とどまるなんて、ここでNoを選ぶなんて狂っている。


だが、俺はまっとうな人間では無く、狂った人間(ゲームジャンキー)だったらしい。

なんだかんだ言ってこの世界に馴染み、元の世界以上にこの世界を好きになっていた。

だから俺はあの時――No を選んだ。



そして俺は、今ここに立っている。

この世界、【終ってし(エンディッド)()った幻想(ファンタジア)】に諦め悪くしがみついている。

5万人の馬鹿野郎と共に。







……はい。

また始めちゃいました。懲りずに。

もう一個の方とかはきちんと終わらせますので。そちらのファン(本気でいるのか?)の人は待っててください。


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