表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

その6



コメディちっくにしたかったのに、シリアスになってきたので題名を変えようかと思ってます




王都まではかなり遠いらしい。

ヴィルとクラウも、各地に点在する王家所有の転移魔法塔を何個も駆使してこのメイトーラ地方まできたとか。

そもそもこのリーヴェンリッヒという国は五つある内一番の大国。

力も経済も領土も他を圧倒する。

でも、だからといって他国を隷属にしたりはしない。

どの国もここ数百年は戦争をという話も上がっていないんだそうだ。

むしろ今は魔獣や魔物などの対応にお互いに協力的なんだと。

人為的な戦いがないのは平和だけど、他の生き物に命を脅かされるのは平和と言えるんだろうか。






まずは一番近い人のもとへ行こうと、周辺の地図を見せてもらった。

と、不思議なことが起こった。


「「…………」」


ヤウチさんと顔を見合わせる。


「お前達が言った方向にはこの街になるが………どうした?」


ヴィルの指先は、私たちが感じている不思議なことを指していた。


「「世界地図ってあります?」」






当然のごとく、地球の大陸図とは違っていて、本当に異世界なんだなって思った。


それはさておき。


ヤウチさんと地図にザッと視線を走らせる。


「この一番ちっちゃいのが一人ですかね」

「多分そうだね。と、考えるとザッと見、やっぱ50人前後か」

「全員、どこかしらの町にいるようです。よかった………」

「なになに?二人だけで納得しないでよ」

「あ、すいません。えっとですね」


ヤウチさんが王都までのルートを書き表していく。

なるべく距離が短くなるように。


「私たちの額にある紋様と同じ光が各場所に、薄緑色の光が見えます」

「普通の世界地図にしか見えんがなぁ………」


私たちもびっくらこいてますよ、ハイレントさん。


「まあ、でも王都には行きますよ」

「………さっきまで嫌がっていたのに」

「王都に行って王様に会うってことは、悪い気がしなくなった、だけ。この先『何があろうとも』一番『都合がいい』国であると実感できましたから」

「ほぉう………言ってみ、嬢ちゃん?」


流石に、おおっぴらに都合がいいなんて、気分悪かったかな。

でも、悪いことなんて考えてないのよー。


「一番の大国であるならば、割合から言っても政治的に言ってもこの世界で一番の魔術師がいるはず。それに、この国がどのくらい宗教が浸透してて王様がどのくらい信仰しているかはわかりませんが、神殿ぐらいはあるでしょう?」


地図を見る限り、このコルセルツという世界は一繋がりの大陸で、さらにリーヴェンリッヒ国は大陸の半分くらいの領土だ。

割合的に優秀な魔術師が生まれている確率が高そうでしょ?

政治的ってのは、まぁ想像の範囲内。

やっぱさ、いくらなんでも見返りを求めない仲良しこよしの政治ってないと思う。

王族間の婚姻だってするだろうし(ってか、してるでしょ)、人員だって政治の道具になる。

いくら隷国なんやらにしていなくたって、人員や技術がある国はそれだけで何らかの時は脅威になる。

だから有り体に言えば、やっぱりどんなに言い繕っても頂点は変わらないのよね。


「国家間の戦争が起こっても、生存の確率が最も高いってことです。後は魔法に関してもトップクラスじゃないかなと。神官さんも一番徳の高い方がいるでしょうし」

「なるほどな。凄いな嬢ちゃん」

「そこら辺の政治の事情が本当なのかはよくわからないけれど、ヴィル。そこんとこどうなわけ?」

「………それは言い切れない、とだけ言っておく」


うしっ!

当たってることもあるし、ないこともあるってわけか。

それは王都に行けばわかることだ。


「じゃあ王都に向かいつつ回収していくってことにしましょう」

「そうだね。じゃあもう出る?」

「え、もう行くの?」

「ええ、まあ。講義内容を忘れてしまいますから」

「では15分後にまた集まろう」


ぬ。

やっぱりこのパーティーだとヴィルがリーダーになるのか。

うーん、いい加減に剣なり刀なりの技術取得を考えないと。

後衛って、実は柄じゃないんだよね。





















15分後には砦に別れを告げ、砦と町に築かれている魔法壁を抜ける為に歩く。

魔獣や魔物の中には転移魔法で侵入してくるのもいるからなんだって。

そもそもこの魔獣と魔物の違いって何なのかっていうとだな。

簡単に言えば魔獣が四つ足で魔物が二足歩行なんだな。

さらに詳しく言うと、魔獣は基本的に四つ足動物の黒い陰ろうみたいなもので、知性がない。

逆に魔物は魔獣が進化したもので動物を元にした人間?みたいなもの。

知性が少なからずあって、特に最高ランクになると人語も話せるんだってさ。

このくらいになるとギルドの仕事もトリプルエス、ダブルエスランクに相当する。

もちろん、危険度と報酬がね。


さてさて


「ねえヒノさん」

「はい」

「どうして魔術師に会いたいのか、神殿に行きたいのかきいてもいい?」

「いいですよ………夜になら」

「おい」

「「うわっ!!」」


ちょ、あの距離を一瞬にして詰めてきたよ!

5mくらい離れてたのに!


「男と女が夜中に密会か」

「『仲間と』ミーティングですよ。何を変な邪推して気持ち悪い」

「『仲間』というならば、俺たちも聞く必要があるんじゃないか?」

「何抜かすんですか。あなた方は只の『同行者』ですよ。言っておきますけどね、私は別に王様にお目通りしたいなんてこれーっぽっちも思っちゃいませんから」


右手で人差し指と親指をくっつけて見せた。

隙間なんかありゃしない。


「最高位の魔術師に会うのも、神殿に行きたいのも、別に王様に融通してもらわなくてもなんとかなるもんです。この世界の魔術師は自由だと聞いてます。そうでしょ?」

「………そうだな」

「大体こっちは迷惑だっつってんのに付いてくるんですよね?戦力を逃がしたくないだけで」




「あなた方が私たちを拘束できる権限がないことを、どうぞお忘れなく」





















「ここがテト町」

「さっきの町とあまり変わらないね」

「たかだか田舎の隣町ですしね。その辺は私たちの世界とあまり変わらないですね」


いかにもな町。

まんまドラ〇エの町を想像してください。

町の中に入っちゃえば、もうどの辺りにいるのかすぐわかる。

楽ね〜。


「では、私は宿を取ってこよう」

「え、いいですよ。見つけたらすぐ次の町へ行きますから」

「サクラ、転移魔法というものは精神力を多大に使うんだよ。いくら君の魔力が多くとも無理をする。何せ他人を含め四人も一気に運んだのだから」

「それに一日一回とリセットすれば己の力量もわかりやすいだろう」

「ヒノさん、そうしよう。一日千秋の利は彼らの方が上だし。………それにもしかしたら向こうに帰さなくちゃならないとなると、余計に体力使うと思う」

「んぬぬ………そうですね。そうします」


経験はやっぱり向こうの方が上なんだよね。

仕方ない、経験者の言うことは聞くべきだな。


「では私はこの先にある宿に行っているよ。ヴィル、頼んだ」

「ああ」





















ヤウチの言った通り、女を一人異世界渡りをすることとなった。

その女は、ヤウチとサクラを見ると大泣きした。

全く知らない土地に一人で、しかも丸腰で放り出されたのだ、仕方のないことだろう。

しかし女は運の良いことに、ちょうどパン屋の前に『落ちた』。

昨日今日と手伝う代わりに置いてもらっていたようだ。


『帰、れるの………?』

『帰せます。また来たくなかったら、それも出来ます』

『帰りたいっ帰して!こんなトコ、また来るなんて真っ平ごめんだわ!!』

『わかりました』


ヒステリックに叫ぶ女にイライラした。

特に最後のセリフには。

ヤウチも片眉をあげていた。

ただサクラは変わらず無表情で。


『じゃあどうぞ』


いつの間に用意したのか、見たこともない魔方陣が描かれた紙を床に置いている。

三角やら丸やら、複雑に絡み合った線が円に描かれている。


『………ヒノさん、これって』

『一度やってみたかったんですー』


こちらも変わらず、みなまで言わずとも通じ合う二人にイライラする。


『手パンは?』

『それはまたいずれ』




「戻りました」


夜、夕食と入浴を済ませたヤウチはサクラの部屋へと向かった。

その間、王都(むこう)と定期連絡を行った。

特に問題はないらしく、ただ俺の執務机が恐ろしいことになっているようだ。

それはまぁ、覚悟していたことだから仕方ない。


「聞いてきました」


まずは目の前の事に集中すべきだな。


「『カミサマ』に聞きたいことがあるんだと」

「神に?」


この世界の神に、名前はない。

神は様々な姿をしており、また沢山いるからだと言われているが、宗教概念となるとまた違ってくる。

曰く、人間が神に名をつけるなどおこがましいにも程がある、というわけだ。

またその神々も託宣の時にも名乗らない。

だからこそこの世界の神々はあやふやで形なく、存在感は恐怖にも等しい。

かくいう俺やクラウは、どちらかといえば無神論者だ。

運命は自ら切り開くものと考えているからだ。

それゆえ、神だのなんだの言われても、いまいちピンとこないものがある。


「人の信念にとやかく言うつもりはありませんよ。ただ俺はありのままを伝えているだけなんで」

「すまない。続けてくれ」

「――――最高位の魔術師に会いたいのは、この世界の魔法概念や構成について『人間』側から詳しく聞きたいから。神殿に行きたいのは先ほども言ったように『カミサマ』に会いたいから。またこの世界の神々についての定義も聞きたい。それと広い場所で異世界渡りをしたいから」

「精神力、と言ったとき少し驚いていたな」

「それについて聞かされませんでしたからね」


「ともかくヒノさんは、神に会う確率を高めるために動いています。………が、なんであそこまでストイックになっているのか………。多分これからも度々ああいうことを言うかもしれませんが、よろしくお願いします」


サクラの代わりに頭を下げるヤウチに、やはり何とも言えないもどかしさを感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ