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その5 ヤウチ視点



基本的にサクラとヴィル視点なので、他の人の視点の際には表記します





「で、本当についてくるんですか………」


ヒノさんが心底嫌そうな顔と声をしている。

ヴィルは相変わらず無表情でクラウは苦笑だ。

二人とも曖昧に誤魔化してくれていて、よかった。




昨日、話したいことがあると二人を部屋に呼んだ。


「どうか、俺達の旅に………いや、ヒノさんに付き合ってほしい」


彼女との付き合いは、実はまだ一年にも満たない。

彼女が二年の夏に、真辺に誘われて入った。

それが彼女との付き合いの始まりだ。

それでも、彼女の人と成りを理解している。


出会った時から、彼女はよく笑う人だった。


ミーティングや会議でも、真剣な顔をしていても、ふと笑みがこぼれる。

普段の会話など、始終笑顔だ。

後輩に注意したり叱ったりする時も、最後には仕方ないと困ったように笑う。


そんな彼女がここにきてから、笑わない。


微笑んでいても、それは上っ面だけ。

心から笑っていない。

いや、楽しそうにはしていたけれど、心根から笑顔を作っていないのだ。

不安、なんだと思う。

そもそも50人近くの人間を広い世界から探し出すなんて、途方もない話で、なぜそんなにも一人で背負おうとするのだろう。

誰のせいでもないのに(むしろカミサマとやらのせいだというのに)、自分しか異世界渡りの能力を持っていないからとか思っているんだろう。

これは、自分では不安を取り除くことは出来ない。

彼女と同じ世界からきたから、俺だって不安だ。

世界のことを聞いたって、実際に体験しているわけではない。

予想は必要だけれども、百の言葉より一の事実は何にも叶わないことを知っている。

だから、この世界の人がいたらいいと思った。

俺達の常識ではなく、今いる世界の常識を知っている人間が。

問題としては、なぜヒノさんがヴィルを苦手としているのか?


「あれは嫌っているのではないか?」

「いや、あれは苦手な態度」

「ヴィルはお世辞にも愛想がいいわけじゃないしね」

「まぁヒノさんは男性より女性の方が好きだからね、人間性として」

「そのわりには、お前とは随分気心が知れているようだが?」

「本人が言いたくないことを深く追及しようと思わないから。ヒノさんの本当の深い悩みを知ろうと思っていないからさ。聞いて欲しくもないみたいだし」




「あの子が悩んでいるのは、家族のことだから」




仲間内で家族の話になると決まって彼女は口を閉ざし、ただ聞いているだけになる。

家族構成は知っている。

父が迎えに来てくれる。

両親が迎えにきた。

兄弟はいるかという話題で仲良くはない(というより、趣味が合わない)姉がいると言った。

あと猫が二匹。

それだけだ。






でもね、ヒノさん

君が助けを求めてきたら、いつでも助けに行こうと仲間内で決めているんだよ

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