その11
大変お待たせした割りに、短くてスミマセン………(汗)
「そういえば、クーとルーの両親はどうしたの?」
っていうか何してる人たちなのかな?
子供が凄い魔術師なんだもん、同じように魔術師なのかなって思うけど。
「「ん〜今は息子夫婦と暮らしているはずだよ」」
「………クーとルーも息子だろ?」
「「元師匠だよ」」
いや、そんな。
天真爛漫な無垢の笑顔向けられても、理解不能だって。
「僕たちは、元々は稀代最高の魔術師クルーヴァン・ジルトニクスという一人の人間だったんだ」
「あんまりにも凄い魔力でさー千年くらい生きてきたんだけど、流石に飽きちゃって」
「魂と魔力を半分にしてみたんだけど、若返り過ぎちゃって赤ん坊になって」
「しかも魔方陣が転生の陣を参考にしたから、僕たちはクルーヴァンが前世になっちゃって」
えーとつまり、二人の前世が共通してその稀代最高の魔術師クルーヴァン・ジルトニクスなわけ。
んで、あくまでも前世は前世であるから、新しい性格が構築されてるってこと。
「これで、よかったの?」
「「強いて言うなら、名前をもうちょっとひねってくれたらよかったのになぁ、ってことぐらいかな」」
前世が同じで、でも今の自分はその人と違う人間であると自覚している。
それって、気が変にならないかな。
そりゃね、私たちの世界にだって前世の記憶があるって人はいるさ。
でもこの二人は誰かから生まれたわけでもない、無理矢理魂を分けた、いわゆる異質。
飽きたからじゃなくて、孤独だったから、自分の本質を誰も知らなくなった故の結果だ。
「「サク姉、そんな顔しないでよ」」
う、なんか変な顔してたかな。
「そりゃさ、最初の頃はわけわかんなかったけどさ」
「自業自得だしさ、それに悪いことばっかりじゃないし」
「「ただもう一つ挙げるなら、好きな子が被るってことかなー」」
「ああ………同じ魂だもんな」
そりゃ確かに弊害だわさね。
「「うん、やっぱり」」
ちょ、人の顔見てニヤニヤしないでほしいんだけど。
「「サク姉に眉間のシワは似合わないね」」
………ババアとでも言いたいのか。
※※※※※
「これが【テペロ】ね。ソースは甘めがオススメだよ」
「美味しそうね」
赤い粉がかかっている肉らしき者は割り箸的な物の半分くらいを包んでいくつもお皿に乗っていて、山になっている。
「肉は【ブゥブ】っていう鳥類なんだ。脂身たっぷりなんだけど、思うほどクドくないよ」
名前は豚っぽいのに鳥なんだ………思わず吹き出しそうになったけど、こっちのひとにしてみたら私たちの世界だっておかしいよね、と思い直す。
クーとルーと私で、お昼時の露店をあっち行ったりこっち行ったり。
その後ろをヤウチさんとヴィルがはぐれないでついてきている。
二人は落ち着いて話し込んでいて、ちょっと自分が恥ずかしくなる。
テンション高い双子と一緒になってウロウロしてる21って、どんなよ。
まぁ楽しいから気にしないようにしよう、うん。
さて。
絶世の美形の双子が、なぜ市井に出ていられるか、気になりませんか?
ちゃーんと対策してるんですよ、この子たち。
白いローブを頭からかぶってて、しかも魔法がかかっている。
気配を薄くさせるのと、顔の認識が見ている端からおぼろ気になる所謂、視角認識を曖昧にする魔法、さらにローブの外や天気に合わせて常に着用者の快適温度に合わせる魔法。
凄いなぁと思うのと同時に、ここまでしなくちゃ外に出られないのは大変だな、って思う。
本来なら足に絡まるような長いローブなんか脱ぎ捨てて駆け回りたいだろうになぁ。
「「サク姉、今度はこれ食べてみて!」」
うーん、今は暗いこと考えても仕方ないよね。
二人とも楽しそうだし、なら私に出来ることは一緒に楽しむことだ。
今までかなり殺伐だったからね。
「少し表情が柔らかくなってきた」
小さく安堵のため息をつくユーヤを見下ろす。
俺は純粋にそれを喜ぶことが出来ない。
なぜなら俺やクラウ、アランでさえサクラの緊張をほぐすことはできなかったのに、クーとルーはそれをやってみせた。
ユーヤが言う、魅力的な(そこまで言ってない)笑顔の欠片は弟子たちのみに向けられている。
欲しい、と強く思う。
せめて視線だけでも、警戒していない目元を向けてくれないかと。
「………全く、重症だ」
これほどに、乞い願う感情を持つのは初めてだった。