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Archive.01 初回限定版 中古ソフト

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【概要】

恋愛シミュレーションゲーム『Sweet Kiss』初回限定版。


某ネットオークションにて落札された中古品ソフト。


その外箱の底、説明書とアンケートハガキの間に、四つ折りにされた数枚のルーズリーフと、説明書そのものへの書き込みが残されていた。


筆跡はすべて同一。


かつての所有者が、攻略の軌跡と共に、ある「確信」に至るまでの個人的な備忘録であろう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

■ 説明書:キャラクター紹介「小鳥遊 妙子」のページ

(青いペンでの殴り書き。文字の周囲には丸囲みや強調の線がある)


タエちゃんマジ天使!!この天真爛漫な幼馴染感、最高すぎる。


声がちょっと甘ったるすぎてあざといけど、それがいい。


なによりこのマシュマロボディ!!制服のボタン弾けそう(笑)。


バブみに近い安心感。絶対に最初の攻略対象は妙子に決定!



おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい!



(同ページ下部。謎のシミ。少し時間が経ったような、別のインクでの追記)



立ち絵のむちむち感、神!! 特に太もも。


イベント12の『お腹、触っちゃダメ!』の台詞も、破壊力やばい。


癒やされる……。


これぞ、俺の至高の嫁!!!!


……………………………………………………………………………………………………

■ ルーズリーフ1枚目

(日付はない。プレイ日記のような形式)


妙子ルート、トゥルーエンド。幸せなんだけど……なんか引っかかる。


妙子の家の背景、よく見ると台所が荒れてないか?


CGだと綺麗だけど、通常背景の解像度だとシンクに洗い物が溜まってるように見える。


あと、夜に妙子と遭遇するシーン、いつも手に持ってるのスーパーのレジ袋だよな。


中身、半額シールのついた惣菜パックに見えるんだけど……。


設定を読み返してみた。


『父を失い、母を支える苦労人』。


これ、数行で済ませていい設定か?


妙子、学校の昼休みによく『パン一個でいいや』って言ってるけど、あれダイエットじゃなくて、食費削ってるんじゃないか……?


立ち絵でいつも同じカーディガン着てるのも、おしゃれじゃなくて買い替える時間がないだけかも。


俺の妄想だといいんだけど……。頼むから、妄想であってくれ!!!!


……………………………………………………………………………………………………

■ ルーズリーフ2枚目

(筆圧が強くなり、文字が尖り始めている)


おかしい。妙子の個別イベント、全24個中、親が出てくるシーンが一度もない。


美枝(妹)は出てくるけど、いつも『お姉ちゃん、お母さんまだ寝てるの?』って聞いてる。これ、母親、寝たきりなんじゃないか。


妙子のあのあざとい喋り方……あれ、無理してテンション上げているように聞こえてきた。


そうじゃないと、あの家で小学生の妹と二人、壊れちゃうからだ。


誰か気づいてる奴いないのか。


掲示板を見たけど、みんな『セリフがあざとすぎるから嫌い』だとか『妙子ちゃんのおっぱいとお腹触りたい』とか『巨乳好きには刺さる』とかしか言ってない。


これに気づいているのは、俺のような「やり込み勢」だけのようだ。


それから、妙子の指先のドット絵。よく見ると、他のヒロインより赤黒い。


これ、水仕事のしすぎによる『あかぎれ』だろ。


開発スタッフ、どんなつもりでこれ描いたんだよ!! クソが!!!!


……………………………………………………………………………………………………

■ 説明書の裏表紙(最終ページ)

(掠れた黒ペン。余白を埋め尽くすような筆致)


救いがない。


どの選択肢を選んでも、主人公(京)は妙子の家の中まで踏み込まない。


『大変だよな』って言うだけで、結局、主人公は妙子に甘えて、彼女の焼いたクッキーを食って終わる。


ゲーム内で、彼女の介護を代わってやる選択肢も、家庭の事情を訊く選択肢も、どこにもない。


男子生徒からの卑猥な視線と、女子生徒からの嫉妬や蔑みの視線に耐えながら。


妙子は今日も笑ってる。あざとい声で、むちむちの体を揺らして。


でも、その笑顔の裏で、彼女はいつ寝るんだろう。いつ休むんだろう。


俺はこのゲームを、もう起動できない。


彼女が『京くん!』って呼ぶたび、助けを求めている悲鳴にしか聞こえなくなった。


この子(タエ)は、誰にでも優しくて、本当にいい子なんだ!!


こんな惨めな扱い、ねぇよ!! ……あんまりだよ。


誰でもいいから、誰か、……誰かこの子(タエ)を救ってくれ。


           (文章はここで途切れている)

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