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しあわせな話  作者: 正騎
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第三章 我々の敵



 部屋の中に、若い男が入ってきた。


「我々は、しあわせをついに見つけることができました……」


 そして、部屋の照明が突然消え、辺りは急に真っ暗になる。


「なんだ?」


 ハルヤは唖然とし、真っ暗になった部屋を見回す。


 目の前の黒板に、何かの映像が映し出される。


「これを見てください! これは、ある場所で撮られた映像です」


 その映像は誰かが空を、地上から撮ったものだった。黒板一面に、穏やかな、青空の映像が映し出されている。


「みなさん、ここを見てください!」


 急に映像が止まり、黒板に映像の停止画が映し出される。そこには、丸い小さな球体が、青空の中、金色に輝いていた。


「さらにもっと!」


 若い男の叫ぶ声が聞こえ、映像が丸い小さな球体にズームしていく。


「さらにもっと!」


 小さな丸い球体は、さらに大きさを増す。


「さらにもっと!」


 とうとう丸い球体が、画面いっぱいに映し出される。すると、その球体が、ただの球体ではないことが分かった。


 球体には、人の顔があった。


「これです! これがしあわせの正体です!」


 興奮気味な、若い男の声が聞こえる。部屋の電気は突然つき、皆、呆然とする。


「いいですか? 我々には、これが必要なんです! このしあわせの素が! そのためにはまず、手順が必要なんです!」


 若い男は興奮し、教卓に近づき、皆に説明しだす。ハルヤは何だこいつと思いながら、その様子を眺めている。


「このしあわせの素を手に入れるにはまず、我々の邪魔をする敵対組織と闘わなければなりません」


 後ろにある黒板に若い男は、白いチョークで何かを書いている。


「バルヴィーラの民です! 彼らは我々と同じ、しあわせの素を手に入れようとしています。それを阻止してください!」


 若い男は教卓に戻る。


「そして次に、愛する者たちに私たちは、別れを告げなければなりません。我々は、しあわせを共有することができないのです!」


 そして、興奮気味に大声を出す。


「最後に、我々とともに儀式を行うのです! これが、我々がしあわせになるための、唯一の方法なのです!」


 突然、周りから盛大な拍手が巻き起こり、ハルヤは唖然としながらその光景を眺めていた。左隣の席に座っているショートヘアの女子大学生が、ハルヤに囁く。


「ね? 素晴らしいでしょ?」


 ハルヤは、茫然とする。何と言ったらいいのか、馬鹿馬鹿しすぎる。


「俺、帰るわ……」


 ハルヤは、ショートヘアの女子大学生に別れを告げると、そそくさとその場から立ち去った。他の参加者たちは、若い男が配った白い紙に、何かを書いていた。


 ハルヤはすぐさま家に帰ると、二階の自分の部屋に入っていった。何と言っていいのかわからない。


「なんだったんだ……」


 すぐにベッドに倒れこむ。


 ハルヤは、いつの間にか夢を見ていた。


 その夢は、自分が何かのガラス製のカプセル状のものに、白い服を着て入っている夢だった。


 何とかカプセルから出ようと、ハルヤはもがく。


 すると、何者かがカプセルの前に立ち、目の前のカプセルのガラスが、上にスライドしていく。


「うわぁ!」


 急に外に放り出されたハルヤは、どこかの地面に倒れこむ。見ると、目の前には、あのショートヘアの女子大学生がいた。


「あんた。これを持って」


 目の前に、見たことない横長の銃のようなメカメカしい武器を渡される。


「なんだよこれ……」


「いいから受け取って!」


 女子大学生に促され、ハルヤはその横長の銃のようなものを受け取る。


「その持ち手についてる引き金に指をかけて引けばいいから」

 

 女子大学生が説明し、ハルヤは言われた通り銃のようなものの下についてる取っ手の横のレバーに指をかける。


「ここにある、全部のカプセルをそれで壊して」


 ハルヤは辺りを見回す。ただっ広い暗い空間の左右の壁に、上から下にぎっしりと、同じようなガラス製のカプセルが、所狭しと並んでいる。


「さあ、始めるわよ!」


 女子大学生は大声で叫び、ハルヤと同じような銃のようなものをカプセルに向けぶっ放す。壁中のカプセルというカプセルが爆発し、ガラスの破片が飛び散っていく。ハルヤも、わけがわからないまま、カプセルに向け銃のようなものをぶっ放していく。


 ハルヤと女子大学生は、叫びながら部屋中のカプセルを壊し始めた。


 しばらく時間が経った後、なぜかハルヤは自分がフラフラしていることに気づいた。


「あれ……」


 ハルヤは再び、地面に倒れる。そして、目を開ける。


「お兄ちゃん、ごはんだよ」


 目の前に、自分の妹がいた。どうやら、夢が覚めたらしい。


「わかった。食べるよ」


 ハルヤは起き上がり、一階に降りる。すると、一階のリビングには、父と母が二人とも、白いTシャツを着て立っていた。


「お兄ちゃんを起こしてくれたの?」


 母が尋ねると、妹は頷く。妹も、白いTシャツを着ている。


 ハルヤは、リビングの食卓で、家族とともに夕食を食べた。


 その日は何故か、家族との会話が弾み、皆楽しく食事をしていた。


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