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Seamripper  作者: レニュ 蘭世
第1アーク: 目的との邂逅
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第1章:箱の中の少年たち

「久美、そろそろ出発じゃぞ」


「んだ、じいちゃん!」


老人と孫娘は、静かな村から王都『星山』への旅の準備として、馬車の荷台を縛る縄をきつく締め直した。


そこは穏やかで平和な村だったが、いわゆる古臭いファンタジーの集落とは少し趣が違っていた。


どこか現代的な雰囲気が漂っている。道は車両が通れるようアスファルトで舗装され、建物はコンクリート製。


高さは控えめで、ありふれた外観をしていた。

村は王都からそう遠くない。馬車でも数時間もあれば着く距離だ。


現代的な乗り物が存在する時代ではあったが、老人と孫娘には小型トラックを買うような余裕はなかった。


孫娘の久美は十八歳ほどに見える、快活な顔立ちと輝く瞳の持ち主だ。


短い焦げ茶の髪を小さなポニーテールに結び、こぼれた毛先が顔を縁取っている。ほんのりと日焼けした白い肌は、いかにも外で元気に働く娘といった健康的な印象を与えていた。


白い半袖シャツに、ゆったりとした作業用のズボン。足元は農作業に適した丈夫な茶色のブーツで、手には作物を運ぶための薄手の手袋をはめている。


腰には緑色のジャケットが巻かれており、その実用的でカジュアルな出で立ちは、彼女の明るく朗らかな雰囲気にぴったりだった。


【祖父】「今年の収穫は、実に見事なもんじゃのう」


祖父が温かく微笑みながら言った。


【祖父】「これもお前のおかげじゃ、久美」


【久美】「えへへ、たいしたことしてねえってば」


彼女は照れくさそうに笑って答えた。


【祖父】「何を言うとる。お前が畑で汗水流してくれんかったら、収穫は半分もいってなかったはずじゃ。これならきっと、いい値で売れるぞ」


【久美】「ありがと、じいちゃん。よし、これで準備は全部できたはず―」


久美が振り返ったとき、何かが目に留まった。


「ん? また箱? さっきので最後だと思ったんだけどな……」


彼女はその大きな木箱を持ち上げようとした。それは他のどの箱よりも重く、精一杯の力を込めてようやく荷台へと運び上げることができた。


日々の農作業で鍛え上げた筋力がなければ、持ち上げることすら叶わなかったに違いない。


「ふぅ! よし! 準備万端だ、じいちゃん。行こう!」


二人はすぐに王都へと向けて出発した。


数時間後、草原の谷間を抜ける古びた道を走っていると、荷台の奥からガタガタと物音がした。木箱の中で何かが動いている。


【祖父】「なんじゃ、今の音は?」


自分たち以外には誰もいないはずの馬車の中で、老人は不安げに尋ねた。


【祖父】「久美、お前も聞こえたか?」


【久美】「んだ、聞こえた。ちょっと見てくる」


馬車を止め、久美は荷台に飛び降りると、積み上げられた木箱の山を調べ始めた。


「この箱からしてる」


彼女が指さしたのは、先ほどようやくの思いで運び込んだ、あの重い箱だった。


【祖父】「ネズミか……? もしそうなら、中の作物を全部食い荒らされとるかもしれんぞ!」


【久美】「なんだって?!」


久美は太い木の棒を掴み、怒りを滲ませた。


【久美】「逃がさねえぞ。一生懸命育てたんだ。タダじゃおカねえからな!」


久美は怒りにまかせて箱を乱暴に開け放つと、中を確認することさえせず、手にした太い棒を勢いよく振り回した。


【久美】「ほら! これでもくらえ! この、このっ!」


「あだだっ! 痛い、痛ててっ!!」


普通、ネズミなら鳴き声や羽音がするものだ。

だが、聞こえてきたのは獣の類の声では断じてなかった。


それは、痛みに悶える人間の少年の声だった。


中には十四、十五歳ほどの少年が二人、丸くなって収まっており、執拗な連打を浴びていたのである。


【久美】「な、なんだぁ……?」


久美は凍り付いた。箱の中に子供がいるなんて、夢にも思わなかったからだ。


「なにするんだよ!? すっげー痛かっただろ……」


少年の一人が頭をさすりながら、恨みがましく文句を言った。


「マナーってものをご存じないんですか? 勝手に人の箱を開けないでください……」


もう一人が淡々とした口調で呟き、内側から再び蓋を閉めた。


【久美】「え? ご、ごめん、そんなつもりじゃ……」


久美は顔を真っ赤にして後ずさりした。まるで他人の家に無断で上がり込んでしまったかのような気まずさに襲われる。


【久美】「って、待て……っ!」


彼女は瞬きをし、今起きたことを冷静に理解した。


【久美】「おめえら、何者だぁ!? なんでそんなとこに入ってんだよっ!!」


再び蓋をひったくるように開けたが、すぐさま少年の一人がそれを閉め戻した。


【久美】「このっ……!」


久美の眉間がピクリと跳ねる。


開けて、閉めて、開けて、閉めて――そんな応酬を三度ほど繰り返しただろうか。


ついに堪忍袋の緒が切れた久美は、木箱に強烈な蹴りを見舞った。その衝撃で、二人の少年は地面へと転がり落ちる。


てっ!!」


「あの木箱、狭いし湿ってるし……体がバキバキだ。トゲも刺さったし……」


「お前の案だろ」


「他にどうしろってんだよ」


【久美】「いい加減にしろっ!!」


久美の怒声が二人の言い争いを切り裂いた。


【久美】「おめえら何者だ? ストーカーか? 泥棒か? それとも山賊か!? さっさと吐け!」


太い棒を突きつけ、二人を威嚇する。


「ち、違うって! 全然違うよ。説明させて―」


少年の一人がポケットに手を伸ばした。


武器を取り出すのだと直感した久美は、言葉を最後まで聞かずに即座に一撃を振り下ろした。


「ぐはぁっ!!」


少年は後ろへ吹き飛び、馬車の側面に激しく叩きつけられた。


「おい、閃光センコウ! ちょっと、あんた何す―?!」


――ガツッ!!


二人目の少年も叩き伏せられ、相棒のすぐ隣に転がった。二人は目を回し、揃ってうめき声を上げるしかなかった。



*************************


数分後、二人が意識を取り戻したとき、自分たちが道の真ん中で縄に縛り上げられていることに気づいた。


「あれ……?」


二人は一瞬、呆然と固まった。直後、自分たちの唯一の移動手段であった馬車が消えていることに気づき、その目を見開いた。


「えええええっ?!」


閃光センコウ――平均的な身長で、少しツンツンとしたミディアム丈の黒髪を持つ少年が、パニックに陥って周囲を見渡した。少し眠たげな濃い紫色の瞳の下にはうっすらと隈があり、左の頬には一本の傷跡が刻まれている。


人里離れた道端に放り出され、足代わりだった馬車も失ったという現実に、彼はひどく狼狽していた。


【閃光】「追い出されちゃった……ねえ、ネル、これからどうすんのさ?!」


【ネル】「全部お前のせいだ」


ネルは、閃光と同い年くらいの少年だった。根元が黒い、短く逆立った深紅の髪をしている。顎のあたりまで伸びた前髪の先には、黒い斑点のような模様が混じっていた。


醸し出す雰囲気はどこまでも静かで、冷静だ。その大きな黄緑色の瞳には感情の揺らぎがほとんど見えず、眉が髪に隠れていることもあって、何を考えているのか読み取らせない。


【閃光】「ボクが何したってんだよぉ!」


【ネル】「お前が箱の中でぶつぶつ文句言わなきゃ、見つからなかった」


【閃光】「だってぇ! あの中すっごい窮屈だったし、ジメジメして痒いし、変な臭いもしたし、息だって苦しくて死にそうだったんだもん……っ!」


【ネル】「......めんどくさいな。」


*************************


【祖父】「本当にええんか、久美。あの子ら、そんな悪い連中には見えんかったが……」


老人は、置き去りにしてきた二人の少年のことが気がかりで、不安げな表情を浮かべていた。


【久美】「じいちゃん、人は見かけによらねえんだ。それに、縄はそんなにきつく縛ってねえよ。本気出せば自力で解いて、村まで戻れるはずだ」


それから数分後、谷間の人気のない脇道に差し掛かった時のことだ。道沿いに、何やら人相の悪い男たちが数人姿を現した。


彼らは集団で立ち尽くし、通り過ぎる馬車を不穏な眼差しでじっと見つめている。


老人と孫娘の間に不安がよぎった。二人は沈黙を保ち、あえて目を合わせないようにした。厄介事に関わりたい者など、どこにもいない。


だが、厄介事というのは向こうから勝手にやってくるものだ。


男たちの集団が突然路上へと踏み出し、行く手を阻んだ。馬が鼻を鳴らし、馬車は急停止を余儀なくされる。


【久美】「な、なんだぁ……っ?!」


祖父が手綱を引いた。一瞬のうちに、自分たちが四方を山賊に囲まれていることに気づかされた。


「へへへ……じいさん、どこへ行くんだ? 王都かい?」


一人が、粗野で威嚇的な声で言った。


【久美】「まずい……こいつら『谷の山賊団』だ」


「へっ、頭! この馬車、中身が詰まってますぜ」


一人の山賊が荷台を覗き込みながら声を上げる。


「おまけに、上等な女までいやがる」


「ははっ、今日はツイてるぜ」


山賊の頭が低く笑った。


【祖父】「欲しけりゃ、全部持っていってくれ……だから、わしらには構わんでくれんか」


「話が早くて助かるぜ、じいさん。残り少ない寿命を大事にしたいってか」


頭がニヤリと下品な笑みを浮かべた。


「よし野郎ども、全部奪え! 女も連れていけ。たっぷり可愛がってやるからよ」


【祖父】「そうは、させん……っ」


祖父の顔が悔しさで強張る。


「……あー、待て」


頭が顎をさすりながら言った。


「気が変わった。女は連れていくが、じいさんは殺せ。目撃者を生かしておいても、ろくなことにならねえからな」


【久美】「そ、そんな……。お願い、誰か……誰か助けて……っ!」


久美の声は震え、絶望的な叫びとなって漏れた。


「ひやーひやー! こいつは大変な状況だね」


突如として、馬車の荷台、久美のすぐ真後ろから閃光が声をかけた。


【久美】「ひいいっ?! な、なんなんだおめえら! どっから湧いて出たんだよっ!」


(まさか、ここまで走って追いかけてきたのか!?)


久美は衝撃のあまり、心の中で叫ばずにはいられなかった。


【閃光】「え、そんなに怖い? ボクの顔、そんなにヘンかなぁ」


閃光は本気で困惑したように尋ねた。自分のこの陰気な顔や、左頬の傷のせいで怖がられているのではないかと、彼は彼なりに気にしていたのだ。


このままだと女の子全員に振られてしまうのではないか――そんな恐怖すら抱いている。


【ネル】「たぶんな」


すぐ後ろに同じくひょっこりと現れたネルが、追い打ちをかけるように付け加えた。


【閃光】「それにしてもさ……今の時代に山賊ってどうなの? まだ絶滅してなかったんだ。なんかこう……時代遅れっていうか、ボクら、古いマンガの世界にでも迷い込んじゃったのかな?」


確かに「山賊」という言葉は使い古されているし、現代的な街並みがあるこの世界で彼らが存在しているのは、どこか奇妙な光景でもあった。


【ネル】「普通に働けばいいのに。……めんどくさいな」


【久美】「おめえら、何しに来たんだよ! 逃げられるうちに早く逃げろっ!」


【閃光】「んー、助けてあげてもいいけど。……もしよかったら。その代わり、街まで乗せていってよ。お願い」


彼はこの絶好のチャンスを逃す手はないと考えていた。自分にとっては造作もない手間で、街までの足が手に入るのだから。


【久美】「はあ!? 子供のおめえらに何ができるっていうんだ!」


「あぁん? ガキまで乗せてやがったのか」


山賊の頭が苛立ちを隠さず吐き捨てた。


「ふん。まあいい、殺せ。そんなドブネズミどもに用はねえ。さっさと女をこっちへ連れてこい」


【閃光】「うわぁ……泥棒な上に変態とか、想像以上に最悪だね。あんな人たちに捕まったら、どんな酷い目に合わされることやら……。怖いなぁ、ねえ、ネル?」


閃光はドラマチックに肩をすくめて見せた。明らかに久美を煽っている。


【ネル】「同情するよ」


ネルも淡々とアシストを入れる。


その間にも山賊たちは武器を掲げ、じりじりと距離を詰めてくる。久美の緊張は限界に達していた。


【久美】「わかった、わかったよ! 乗せてってやるから、なんとかしてくれっ!」


相手がただの子供だと分かっていても、背に腹は代えられない。彼女は必死に叫んだ。


【閃光】「おっと、肝心な『魔法の言葉』が聞こえないなぁ」


【久美】「は、あぁ?!」


一人の山賊が、刃を振りかざして突っ込んできた。


「ヒャッハーー!!」


【久美】「わかったから、お願いだから助けてぇぇっ!!」


死の危険を前にして、本能的にその言葉が口をついて出た。


【閃光】「その言葉が聞きたかったんだ!」


次の瞬間、閃光はしなやかな動きで前方へと跳んだ。そのまま空中で膝を突き出し、山賊の顔面に真っ向から叩き込む。


「ぶふぉっ……!!!」


男は断末魔のような声を上げ、鼻から鮮血を撒き散らしながら地面へと転がった。


「な、なんだと……っ?!」


「てめえら! 今すぐそいつらをぶち殺せっ!」


頭の怒声に合わせ、残りの山賊全員が色めき立った。武器を手に、二人を包囲するように殺到する。


【ネル】「……行くぞ」


ネルが地を蹴った。信じられないほどの速度と滑らかな身のこなしで山賊たちの間を駆け抜け、手にした得物を――剣や銃といった武器の数々を、剃刀のような『爪』で次々と斬り裂いていく。


その指先から伸びているのは、鋭く長い爪。だがそれは、まるで何らかのエネルギーで形成されているかのように、不気味な深紅の光を放っていた。


「いつの間に――!?」


思考が追いつくよりも早く、ネルのなぎ払うような一撃が全員を捉える。


その一撃一撃はあまりに重く鋭く、山賊たちはたった一度の接触で次々と地に伏していった。


【ネル】「あ。……終わった。」


一方、閃光もまた包囲されていたが、その戦い方はネルとは根本的に異なっていた。


動く直前、彼の瞳が雷光のような速さで周囲を走る。瞬時に敵の数、配置、そして所持している武器の種類を正確に査定した。


それは特殊な能力や強化された知覚などではなく、純粋に彼自身の頭脳による超速演算だ。


山賊たちが一斉に飛びかかると、閃光は精密機械のような動きで応じた。ある攻撃は最小限の動きでかわし、ある攻撃は受け流し、残りは的確に弾き飛ばす。


それは、その場にいる誰も見たことがないほど洗練された武術の極致だった。


あらゆる斬撃、そして放たれた銃弾ですら、彼は流れるような優雅さで、造作もなく回避していく。


【閃光】「遅い」


回避と同時に、拳、蹴り、足払い、アッパー、フック、掌底。


襲いくる攻撃をことごとく空振らせながら、流れるような連撃で一人、また一人と沈めていく。


【久美】「す、すげえ……。なんて強さだ……」


久美はただ、驚愕に目を見開いて立ち尽くすことしかできなかった。


気づけば、立っているのは山賊の頭ただ一人。

だが、彼らが勝利の余韻に浸った一瞬の隙を、悪党は見逃さなかった。


「動くんじゃねえぞっ! さもねえと、この女の命はねえ!」


【久美】「た、助けて……っ」


【閃光】「心配ないよ。君はただ、もう一つの『魔法の言葉』を言えばいいだけさ」


閃光がどこまでも冷静に告げる。


【久美】「は、あぁ?!」


【ネル】「まだ頭が痛いんだ。……あの棒、本当に硬かったし」


ネルが後頭部をさすりながら、ぼやくように言った。


【久美】「次はもっと強く叩いてやるよっ!!」


久美は顔を真っ赤にして怒鳴り返した。


「動くなって言ってんだろ!!」


山賊の頭が、震える声で吠える。


【閃光】「ひやーひやー。ボクらみたいな子供から身を守るために、か弱い女性を人質にするなんてねぇ。……あまり男らしい振る舞いとは言えないよね」


「あぁん? 何が言いてえんだ!」


【閃光】「見ればわかるでしょ? バカなの? あ、ごめん、反語的な質問は無意味だったね。君はバカだ。でも、バカな上に……臆病者だ。見てよ、足がガクガク震えてるよ?」


【久美】「な、何してんだよおめえら! 黙れっ!」


久美が驚愕に目を見開く。


「誰が……誰が臆病者だってぇぇ!?」


頭の顔は怒りで真っ赤に染まり、全身に血管が浮き出た。あまりの屈辱に、脳の血管が沸騰する。


【閃光】「ボクが他に誰を指してるって言うんだい? 君、ボクが思っていた以上にバカなんだね」


あまりに刺さる侮辱に、彼は思考を停止させた。


「もういい! 女なんざ必要ねえッ!!」


怒り狂った彼は、短剣を久美の喉元へと振り抜こうとした。


その瞬間、閃光の口角が吊り上がる。――『煽り』成功だ。


【久美】「ひゃああああっ! ごめんなさぁぁぁいっ!!」


パニックに陥った久美が叫ぶ。


もう一つの魔法の言葉は――自分たちを叩いたことに対する「謝罪」だった。


その刹那。シュパッ! と鋭い音が響く。

頭が履いていたズボンが、音を立てて足元までずり落ちた。


「ひいいいっ?! な、ななななにごと――?!」


彼は反射的に久美を放し、両手で股間を隠そうとあがき、完全な屈辱に打ち震えた。


露わになった下着は――ピンク色で、ハートとウサギの柄で埋め尽くされていた。


【閃光】「やれやれだねぇ……」


閃光が呆れたように首を振る。


【ネル】「……見損なった」


いつの間にか武器と一緒にズボンの紐を切り裂いていたネルが、深く頷きながら追撃した。


「な、何がだよっ! 俺はウサギが好きなんだよ!!」


あまりの恥ずかしさに、頭の声が裏返る。


【閃光】「自分の姿をよく見てごらんよ」


閃光がゆっくりと一歩踏み出す。


「く、来るな……」


【閃光】「無職で、不潔で、デブで、盗みで食い繋いでる……」


「や、やめろ……来るな……お願いだ……」


【閃光】「その上、いい年した大人が、そんな……痛々しい下着を履いてるなんて」


少年たちが一歩近づくたびに、頭はもがき、身をすくませた。


【閃光】「どうせ家には、幼い女の子のポスターとかフィギュアが飾ってあるんだろ?」


【ネル】「最低だな」


ネルが首を横に振って、吐き捨てた。


【頭】「な、ななな……なんでそれを知ってるんだぁぁっ!?」


秘密を完全に暴かれ、頭の顔からは滝のような汗が流れ落ちる。


【閃光】「恥を知りなよ」


ついに目の前まで来ると、二人の少年は同時に指を突きつけた。


【二人】「「外に出て、働け!!」」


山賊の頭はその場に崩れ落ち、鼻水と涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、幼子のように泣きじゃくった。


「いやだぁ……お願いだ……それだけは勘弁してくれぇ……っ!」


他の山賊たちが肉体的に叩きのめされたのに対し、彼は精神的に完膚なきまで破壊されたのだ。


【久美】「え、えぇ……? はぁ……???」


久美はただ、呆然と立ち尽くしていた。山賊の頭が、子供二人の徹底的な羞恥プレイによって泣き崩れるという、理解不能な光景を目の当たりにして。


(いやいやいやいやいや。……こいつら、普通のガキじゃねえ。ありえねえ。絶対にありえねえ!)


[つづく]


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