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愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に〜  作者: 暁 龍弥
少年編

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第51話

迷宮都市ヴァルトリアの中心部――

円形の巨大建造物オベリスク・ホール


その内部は階段状の座席がいくつも重なり、

中央には楕円形の会議円卓が据えられている。


各国の王族・司教・魔導機関の代表・冒険者ギルド長・

そのほか正体が不明な勢力までもが、

一堂に会していた。


世界迷宮会議――

十年に一度の“最高警戒会合”。


だが今回は十年周期ではなく、

異例の“緊急招集”。


議題はひとつ。


《迷宮アトラ最深部に、“帝都を襲った存在と同質の気配”が確認された》


場に緊張が走る。


僕たちは団体席ではなく、

“特別指定席”へ案内された。


正面には、議長の視線がまっすぐ注がれる席。

逃げ場はない立ち位置。


セレナが小声で囁く。


「……視線が痛いわね。

 まるで“この状況全部お前が背負え”って空気」


「ま、世界はいつもわかりやすいですからね!」

マリーヌがケロっと笑う。


「興味、恐怖、迷い、期待。

 全部あなたに向いている」

エリシアが冷静に周囲を観察する。


「なら――胸を張って座ればいいのよ」

ルクレツィアはまっすぐ僕を見る。


僕は頷き、椅子に腰を下ろした。


ホール上段の扉が開き、

代表者たちが順番に入室してくる。


・大陸最強の剣国《ヴァレント王国》

・魔導の総本山《セリフィア魔導院》

・神聖国家《ユグド教国》

・傭兵国家《ガルド連邦》

・賢者の国《ヘイム学術都市》

・そしてヴァレリア帝国


これらは表の“国家勢力”だ。


だが、会場には普通ではない視線も混ざっていた。


影の中、笑みを浮かべる黒フードの集団。

素顔を隠し、仮面をつけた怪しげな代表者。

人外の雰囲気をまとった人物たち。


迷宮は世界を繋ぐ場所――

表と裏の区別など、ここではないに等しい。


議長が立ち上がり、杖で床を叩いた。


「――世界迷宮会議、開会」


荘厳な声が大ホールに響く。


最初の報告は迷宮探査機関《アルカディア局》の職員からだった。


「深層域――第七十以降の灰色階層にて

 《帝都を襲った存在の波長に酷似した反応》が確認されました。

 強度は当時の個体よりも上。

 単体ではなく“集合意識型”の可能性があります」


会場がざわめく。

ルクレツィアは口を引き結んだ。


次の報告は教国代表から。


「《災厄の胎動》という預言が降りています。

 中心となる存在は、“運命の導き手”と表記されていました」


その瞬間――

会場の視線が、一斉に僕へ向けられる。


セレナが杖を強く握り、立ち上がりかける。

だが僕は手で制した。


逃げないと決めたからだ。


議長は続ける。


「では、災厄と同質の反応を倒した前例――

 アルス・アドマイヤ殿。

 あなたの意見を伺いたい」


この一言で、

世界が僕の答えを待つ空気になる。


静寂が降りたなか、

僕ははっきり話す。


「――十年前の怪物は、世界の敵だった。

 だが、俺は“怪物を倒す”ために戦ったわけじゃない。

 守りたい人たちのために戦ったんだ」


ざわつきが止まる。


「今も同じだ。

 誰かの命が奪われるなら、止めたい。

 だが――“世界のために死ね”と言われるなら、断る」


場内が静まり返った。


僕は続ける。


「俺は英雄でも救世主でもない。

 “選んで戦う人間”だ。

 その結果守れるなら、それでいい」


議長は深く頷いた。


だが――

全員が納得したわけではない。


向かって左後方。

豪華な赤絨毯の通路から、ひとりの少女が歩み出た。


銀髪、蒼い瞳。

圧倒的な存在感。


十年前の会議でも姿を見せた“あの少女”。


会場がざわつく。


「《聖女候補》リズ・フィオーレ……!」


「教国の最高戦力だぞ……!」


彼女は壇上前まで歩き、僕の前で立ち止まった。


そして――迷いなく宣言した。


「私はあなたの婚約者。

 世界はあなたを必要としている。

 だから――置いていかない」


十年前の言葉が、

十年後の今も変わらず僕へ向けられていた。


セレナが低く呟く。


「……やっぱり出たわね、銀髪ヒロイン」


マリーヌはしょんぼりしながら抱きつく。


「アルス様は、誰のものでもありませんっ……!」


エリシアが冷静に分析するようでいて声が震える。


「……この子、あなたの“前世の秘密”を知ってる」


ルクレツィアは表情ひとつ変えず、

ただ静かに剣に手を添えた。


「――アルスを奪いたいなら、相応の覚悟を持ってきてね」


会場はもはや政治会議ではなく、

完全に“火種”と化した。


リズは一切怯まず、

セレナ・マリーヌ・エリシア・ルクレツィアを見渡した。


「誰が隣に立ってもいい。

 けれど――必ず私もその輪に入る」


そして、僕に向き直る。


「十年前に言った約束――覚えてる?」


僕は短く、呼吸を整えて言った。


「覚えてる。

 でも――“答えは急がない”」


リズは目を細め、微笑んだ。


「ふふ……それでいい。

 あなたは何も変わってない。

 だから――私はあなたを好きでいられる」


その瞬間だった。


会議場の天井――

巨大な光の結晶が砕け、

空間が歪み、黒い裂け目が走る。


外側の反応。

十年前と同じ、いや――それ以上。


エリシアが悲鳴のような声を上げた。


「最深部の反応――拡大してる!!

 このままじゃ会議場ごと飲み込まれる!!」


リズは手を広げ、強烈な光の魔法陣を展開する。


セレナも、

マリーヌも、

エリシアも、

ルクレツィアも――同時に構えた。


議員席も、王族席も、影の勢力も――

全員が戦闘姿勢。


世界規模の会戦が、

会議場の真上から始まる気配。


ギルド長が僕に叫ぶ。


「導け、アルス!!!!」


僕は――立ち上がる。


剣を握り、


十年前と同じ誓いのまま、


叫んだ。


「行くぞ!!!

 ――ここからが本当の“青年編”だ!!!!」


◆◆◆


天井の裂け目から黒い雨が降り注ぐ。


迷宮の深淵が世界へ滲みだす。


議場の全員が武器を構え、

十年の時を越えた戦いの第二幕が、

開こうとしていた。

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