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愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に〜  作者: 暁 龍弥
少年編

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第49話

帝都防衛戦から三日後。


夜明けの剣戟も、死の咆哮も、もうどこにもない。

街はまだ傷だらけで、瓦礫も火の跡も残っている。


けれど――人々の声には、絶望の色がなかった。


笑う声もある。泣きながら笑っている人もいる。

それは、生きている人間の声だ。


王城の大広間。

戦後会議が開かれた。


王家軍、灰色フード、公爵家、騎士団――

四勢力が向かい合って座る緊張の場。


その中央に、僕が立っていた。


「今回の戦争の勝利は――アルス・アドマイヤの功績だ」


王国宰相がそう言うと、全員がざわめいた。


だがルクレツィアが立ち上がり、はっきり告げた。


「違うわ。

 アルスだけの勝利じゃない。

 ここにいる全員の勝利よ」


沈黙のあと、

王家軍の将校が拳を握って言った。


「……その通りだ。

 互いを疑わず戦っていたら――誰も生き残れなかった」


灰色フードの指揮官も頷く。


「今回だけは“同盟”だった。

 いつかは利害がまたぶつかるだろうが――

 帝都の民を守るためなら協力できることが証明された」


和解ではない。

ただ、“喧嘩しながらでも守れる”という証明。


歴史的な一歩だった。


そのあと、視線が僕に集まる。


「アルス殿。

 帝国の象徴となってほしいという声が多数上がっている」


「帝国を導く立場に立ってくれ」


「英雄として旗印になってほしい」


静かに、しかし確固として僕は答える。


「俺は――英雄になりたいんじゃない。

 ただ、大切な人と生きたいだけだ」


議場が静まり返る。


続けて言う。


「肩書きのために戦ったんじゃない。

 誰かを守れなくなるような未来は選ばない。

 それが俺の“答え”です」


王城に集った全員が、ゆっくりと立ち上がり――

静かに頭を下げた。


英雄の否定ではなく、

“選択した少年”への最大の敬意として。


会議は解散され、政治面での戦後処理は進む。

帝都は復興へと歩き始めた。


◆◆◆


城の回廊、夜。


窓から差す月明かりの下で――

四人の少女が僕を待っていた。


セレナ、マリーヌ、エリシア、ルクレツィア。


誰も何も言わない。

でも、表情を見ればすぐにわかった。


“決着をつける時間”が来ている。


セレナが最初に口を開いた。


「自分を犠牲にして守るのはやめて。

 私は――あなたと生きたい」


涙を我慢しながら、でも笑って。


「恋を諦めるつもりはないから」


マリーヌも強い瞳で言う。


「私もです。

 アルス様のそばにいたい。

 それが私の幸せです」


エリシアは手を胸に当てる。


「心で救われたの。

 理屈じゃなく、あなたを好きなのよ」


ルクレツィアは頰を赤らめながらも凛と言う。


「私は誰でもなく――あなたを選ぶために生きる」


それぞれの言葉が届いた。


だけど――僕の答えはひとつ。


「ありがとう。本当に、ありがとう。

 俺はみんなが大切で――全員が俺の世界を守ってくれた。

 だから、軽く扱いたくない。

 答えは――急がない」


四人は驚いたように、でも優しく頷いた。


「逃げないから。

 向き合うことから絶対に逃げない。

 その気持ちだけは信じてほしい」


その言葉に、四人が涙で笑った。


恋は始まったまま止まらない。

答えを急がず、未来へ持っていく。


◆◆◆


夜の城の裏庭。


眠るカイとアッシュのそばに、僕は座っていた。


二人の呼吸は安定している。

治癒師による診断では「長期の昏睡状態」――

つまり、いつか目を覚ます。


隣に来たエリシアが静かに言う。


「あなた、気づいているでしょう?

 アッシュとカイは――あなたの前世に深く関係している」


胸が締めつけられた。


アッシュが口にした「ノア」。

カイが怒りながらも絶対に否定しない名前。


僕は聞く。


「俺は……一体、何だったんだ?」


エリシアは首を振る。


「それは“今のあなた”が答えを作るもの。

 誰かに聞いて知るものじゃない」


その言葉で、心が少し軽くなった。


カイの手を強く握る。


「必ず迎えに行く。

 今度は“俺の意志で”」


アッシュの手も握る。


「青年になった時、答えを出す。

 だから――生きていてくれ」


月明かりの下、

二人の仲間は静かに眠り続けていた。


◆◆◆


数日後。


帝都の荒野の外れ。

修復されたばかりの大門の前に、僕は立っていた。


背後には、仲間たち。

ヒロイン四人もいて、みんな笑っている。


セレナが腕を組みながら言う。


「さぁ、次はどこに行くの?

 私はついて行くわよ?」


マリーヌは尻尾を揺らしながら元気に。


「私もです!! ずっとです!!」


エリシアは髪を耳にかけながら、優しく。


「未知なら歓迎よ。

 隣にあなたがいるなら」


ルクレツィアは胸を張って笑う。


「未来も恋も――この手で掴みに行くわ」


視線を前へ向ける。


帝都は守られた。

でも世界はまだ広い。

知らない敵も、真実も、未来もある。


それでも――怖くない。


守りたい人がいて、

守りたい未来がある。


「行こう」


僕は一歩、前へ踏み出した。


「俺たちの――青年期へ」


仲間たちが続き、笑い声が響く。


夜明けを迎えた世界の中へ。



少年編終了です!

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