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愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に〜  作者: 暁 龍弥
少年編

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第41話

光が弾け、衝撃波が大聖堂前の瓦礫を押し流した。


白フードの剣と僕の剣がぶつかった一点を中心に、

空気ごと震えるような波が広がる。


地面が裂け、塔の一部が崩落する。

その衝撃の中で――白フードだけが微動だにせず立っていた。


対して僕は膝をつき、荒く息を吐いた。


「……はぁ、はぁ……っ」


覚醒の力は強烈だが、身体がまだ追いついていない。

筋肉が悲鳴を上げ、骨が軋む。


それでも剣を離さなかった。


白フードがゆっくりと剣を引き、構えを解く。


「十分だ」


氷のように冷たい声音なのに――

そこには失望でも嘲笑でもなく、“評価”があった。


「戦えば、君は死なない。

 そして僕も……君を殺したくない」


(……殺したくない? どういう意味だ)


白フードは周囲の状況を一瞥した。


王家軍・灰色フード・召喚獣。

大聖堂前の戦闘はまだ終わっていない。

むしろ――悪化している。


帝都全域を見渡すように、白フードは空を見上げた。


赤い炎。

黒煙。

倒壊した建物。

泣き叫ぶ人々。


「このまま帝都にいれば、君は“選ばされる”。

 英雄か、滅びか。

 どちらかだけの道を押し付けられる」


僕の胸が締めつけられた。


(わかってる。王家も灰色フードも、僕を“道具”にしようとしてる)


白フードは振り返らずに続けた。


「君の力は、まだ“第三の選択肢”を形にできていない。

 今のまま戦い続ければ――

 愛する者を守るために、いずれ暴走する」


(愛する者……)


その言葉が、胸の最奥を突き刺した。


セレナ。

マリーヌ。

エリシア。

ルクレツィア。

家族。仲間。


その全員の顔が一瞬で浮かんだ。


だからこそ――怖かった。


失えば、自分はどうなるのか。


白フードは初めて、声に温度を帯びさせた。


「アルス。君にとって最悪なのは――

 君が死ぬことでも、世界が滅ぶことでもない」


背中越しに静かに告げる。


「“守りたい誰かを自分の手で失うこと”だ」


息が止まった。


白フードは淡々と歩き出す。


「だから忠告する。

 帝都から離れろ。

 ここにいれば――君は奪われる」


「逃げろって言うのか……僕に?」


「逃げろ、ではない。

 “選べ”だ」


白い外套が翻り、瓦礫の中へと進む。


「帝都の戦いに勝っても負けても、

 王家も灰色フードも、君を諦めない。

 君が人々を救えば“英雄として利用する”。

 救わなければ“滅びの子として処刑する”」


(……どっちに転んでも救いがない)


白フードが最後に振り返った。


フードの影から覗くのは、瞳だけ。


その瞳は――奇妙なことに、優しい色をしていた。


「僕は君に、自由に生きてほしい。

 だから“今は”敵に回らない」


(今は……か)


次の言葉は、まるで祈りだった。


「――生き延びろ、アルス。

 君が“青年”になる日まで」


そう言い残し、白フードは崩れた瓦礫の奥へと姿を消した。


追おうと一歩踏み出した時――


「アルス!!!」


振り向くと、セレナが血まみれになりながら駆けてきた。


「大聖堂の東側が崩れる!!

 避難が追いつかなくて死傷者が出てるの!!

 あなたの判断を……!! 助けが必要なの!!!」


すぐ後ろを、マリーヌ・エリシア・ルクレツィアが走ってくる。


全員が限界寸前なのに、それでも立っている。


僕は剣を握り直した。


(離れろと言われた直後だ。

 でも、今ここで背を向けるなんて……できるはずがない)


白フードの警告は確かに正しい。

でも“選ぶ”のは僕だ。


震える膝に力を込め、叫ぶ。


「行くぞ!! 大聖堂東側の救助を最優先!!

 作戦は――俺が決める!!!」


全員の返事が重なる。


「了解!!!」


帝都全域の戦況を変えるための“決断”をしに、

僕たちは再び走り出した。


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