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愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に〜  作者: 暁 龍弥
少年編

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第33話

黒い召喚陣から出現した“瘴気の龍”は、

天井を突き破らんばかりの巨大な影だった。


骨のような外殻、

肉の代わりに瘴気が渦巻き、

裂けた顎から絶えず絶望の魔力が漏れ出している。


咆哮一つで空気が震え、耳が割れそうになる。


《――アァアァァアアアア!!!》


セレナが叫ぶ。


「全員、龍の正面から離れて!!」


ティノがすぐに風の結界で衝撃を受け流す。


ヴァイスは地面に術式を描いた。


「足を止めさせろ!奔流で足場を奪う!」


ザンが土属性強化を纏って突っ込む。


「行くぞォッ!!」


重い一撃が龍の脚に衝突し、地面が砕ける。

しかしダメージは浅い。


マリーヌが叫ぶ。


「核はどこ!? 弱点を探さないと……!」


エリシアが凄まじい速さで魔力解析。


「瘴気の濃さが一定じゃない……

 核は、位置を移動してる!」


セレナが息を呑む。


「狙い撃ちじゃ倒せないってこと……!?」


龍が尾を振り下ろす。

その一撃は質量兵器のような威力。


僕は叫ぶ。


「避けろォッ!!」


全員が散開。

床がクレーターのように陥没する。


ティノが震える声で言う。


「これ……勝てる相手なの……?」


本能が言っている。

“この敵はアルスを殺すためだけに強化されている”と。


ザンの胸が焦げるほどの炎で熱くなる。


「勝てるかじゃねぇ……勝つんだよッ!!!」


◆◆◆


セレナが詠唱に入る。

魔法陣が三重展開し、魔力が高熱を帯びる。


「――焼き尽くせッ!!」


龍の首元に炎の柱が炸裂する。

しかし、首が落ちない。


ヴァイスが冷静に指示を飛ばす。


「持久戦になる! 一撃必殺は捨てろ!

 魔力の配分を抑えろ!長期戦前提!」


エリシアが叫ぶ。


「核の動きを追う!見つけたら全員で集中砲火!」


作戦は分かりやすい。

だが問題は――


(俺は囮の役割……龍を引きつけるのは僕)


龍の赤い眼孔が、僕だけを捉えている。


《……アルス……滅ビノ子……》


またその呼び名。


(滅びの子……?救世主じゃなく……?)


黒フードが奥から声を放つ。


「戦えアルス。

 己の役割を果たすために。

 “全てを壊す力”を思い出せ」


胸が苦しくなる。


世界を救う力じゃなく、壊す力――

僕の中で眠るそれが、呼応して目覚めかける。


視界が白く濁り、

鼓動が痛いほど大きくなる。


(ダメだ……怒りでも憎しみでも戦わない……!)


でも、龍の攻撃が仲間に迫った瞬間――

迷いが吹き飛んだ。


「やめろォォッ!!!」


光が噴き出す。

けれどその光は、純粋な救いではなく――


“滅びの炎を孕んだ光”


ザンが驚愕する。


「アルス、危ねぇ! やめろ!!!」


セレナが必死に叫ぶ。


「その力は使っちゃダメ! あなたが壊れちゃう!!」


エリシアの声は震えていた。


「暴走したら……戻ってこられない……!」


マリーヌは涙をこぼしながら僕にしがみついた。


「アルス様……! 帰ってきてください……!!」


その瞬間――

暴走の光が、一気に揺らいだ。


マリーヌの震え、

セレナの悲痛な叫び、

エリシアの恐怖、

仲間全員の声が、僕をこの世界へ繋ぎ止める。


(守るための力が“滅ぼす力”になるのは――嫌だ)


僕は最後の力で暴走にブレーキをかけた。


光が形を変え、暴風ではなく一本の刃となる。


「――まだ、僕は壊れない!!」


その刃を龍の胸へ叩き込んだ。


傷口から核の光が漏れる。


エリシアが叫ぶ。


「核座標特定ッ!!今!!!」


全員が一斉に魔力を放つ。


ザンの拳

セレナの炎

ヴァイスの水

ティノの風

マリーヌの光支援

エリシアの雷と術式崩壊

そして僕の刃


すべてが一点へ収束した。


爆光。


龍は悲鳴も上げずに完全に消滅した。


◆◆◆


広間には荒い息だけが残る。


セレナが僕に駆け寄って抱きしめた。


「無事でよかった……ッ!」


マリーヌも涙をこぼしながら腕を回す。


「本当に……戻ってきてくれてよかった……!」


エリシアは震える手で僕の手を握る。


「怖かった……あなたがいなくなるかと思って……」


ザンが肩に手を置いて笑う。


「よく戻ってきたな……!」


ヴァイスは目を細めて静かに頷く。


「世界じゃなく、自分で選んだ道に帰ってきたね」


ティノは泣き笑いしながら叫ぶ。


「マジで心臓止まるかと思った!!生きろよバカ!!」


胸が締め付けられる。


(生きていたい理由が、こんなにある)


だが――戦いはまだ終わっていない。


黒フードが姿を現し、

静かに、悲しげに言う。


「これでも……帰ってきてくれないのか。

 ――我が“兄弟”よ」


兄弟。


その言葉が、脳を貫いた。


(兄弟……?

 俺に兄弟は……いなかったはずだ……前世では……)


影は続ける。


「救世主も滅びの子も――

 どちらも“運命”に殺される。

 わたしはそれが嫌だった。だから抗った。

 だが、お前は“抗うのではなく守る”と言うのか」


黒フードの声は、憎しみではなかった。


苦悩、喪失、そして――悲しみ。


エリシアが目を見開く。


「まさか……この黒フード……

 本当に“前世でアルスと並んで戦った者”……?」


黒フードは静かに言う。


「この世界はまだ知らぬ。

 “真の敵”は――人類でも魔でも神でもない」


そして、広間の奥の扉が開く。


「続きは――“最深部”で話そう」


その姿は、闇へと消えた。


僕たちは立っていられなかった。

恐怖ではなく――

確信を突き付けられたから。


(黒フードは、完全な悪じゃない……

 だけど正義でもない)


僕たちの戦いの意味が、

再び分からなくなる。


それでもひとつだけ、はっきりしていることがあった。


仲間の手を離さず前へ進む。

それ以外の選択肢は――もうない。

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