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愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に〜  作者: 暁 龍弥
少年編

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第24話

翌週、魔導学園の講堂では恒例の儀式――

新学期中盤で追加合流する生徒の“編入宣言式”が行われていた。


普段はざわざわした講堂も、今日は妙な静寂が流れている。

壇上には教師たちが並び、中央の導師が告げる。


「本年度、特別枠編入生を迎える。

 優秀かつ特殊な魔力適性者のため、学年は問わず配置する」


その言葉に、ざわっと空気が揺れる。


(特別枠編入……?珍しいな)


僕が疑問に思っていると――


壇上脇の扉が静かに開いた。


一歩、少女が現れた。


白銀の髪。

氷のように透き通った青い瞳。

体つきは華奢で細く、風に揺れる灯のように静か。


制服の上から白い研究者用のローブを纏い、

背には魔力装置のような奇妙な杖を背負っている。


彼女の足取りは迷いがなく、

けれど“ここに興味がない”ような淡さがあった。


導師が紹介を始める。


「新編入生――

 《エリシア・フロストレイン》」


名前を聞いた瞬間、講堂の空気が変わった。


「フロストレイン……?」「まさか、あの家の……?」

「魔術士の名門じゃないか」「天才の血統だろ」


ざわめく中、エリシアは無表情のまま立っている。


導師の声が響く。


「彼女は“属性融合魔術”の実験的適性を持つ。

 研究のため一時的に本学園に所属させる」


(属性融合……)


つい数日前、僕たちが授業で実演したあれだ。


先生がマイクを取った。


「えー……つまり異常な才能の持ち主です!扱いには注意しましょう!」


言い方!


周囲が笑い、緊張が緩む。

だが少女は一切笑わない。

目はただ、無機質に人々を眺めるだけ。


そして――


司会役の教師が言った。


「エリシア君、希望クラスは?」


これが一番ザワつく質問。

普通は “どのクラスでも” と答えるのに……


少女は遅滞なく言った。


「――1年A組。アルス・アドマイヤのいるクラスがいい」


時間が止まった。


講堂中の視線が、一気に僕へ向けられる。


僕は固まったまま。

隣のティノは「え???」と口を開け、

カイルは「ちょっと待てどういうことだ!!」と騒ぎ、

ザンは険しい顔で少女を見つめ、

セレナの指先がほんの少し震えた。


教師も驚いて慌てて確認する。


「え、えっと……どうして、彼のクラス指定?」


少女――エリシアは淡々と言った。


「彼の魔力波形は“普通ではない”。

 興味がある。解析したい」


完璧に研究対象扱いである。


だが問題はその“視線”だった。


感情に乏しいはずのその瞳が、

少しだけ熱を帯びて僕を捉えている。


(……なぜそんな目で見られているんだ)


僕は初対面のはずなのに、

なぜか“懐かしい気配”をほんの一瞬感じた。


(前世の……記憶……?)


少女が一歩だけ壇を降りたタイミングで、

ふっと空気が震えた。


魔力の波――それが僕のものと共鳴したのが、わかる。


ピシッ、と肌の表面が逆立つ感覚。


同じものを、エリシアも感じたのだろう。

唇がほとんど動かないまま呟いた。


「……やはり、あなた」


誰にも聞こえないほどの声。

けれど確かに僕には届いた。


ぞくりとした。


(“やはり”……?知っている、という意味か?)


千年前の記憶?

前世の縁?

黒フードと同じ系統?


答えはまだわからない。


講堂は大騒ぎだ。

先生が必死に場を収めようとしている。


「はいはい落ち着いてくださーい!本人に悪気はありませーん!

 個人的興味でクラス指定する優秀な変わり者は毎年いますからー!」


いるのかそんなの。


僕は席に戻り、両隣の気配に気づいた。


セレナは笑っているが、目が笑っていない。


「研究対象、ね……ふふ……賑やかになりそうね」


ザンは顎に手を当てて低く呟く。


「“興味”って言い方が逆にやべぇ」


ティノは不安そう。


「アルス……モテ期来てね?よかったな……いやよくないか……?」


カイルは何故か感動している。


「アルス!!公式に“主人公補正”が来てるぞ!!!」


違う意味で騒がしい。


◆◆◆


昼休み。


案の定、エリシアが僕の机の前に立った。


「アルス・アドマイヤ。

 今日の放課後、時間を確保して」


開口一番それ。


「え、えっと……何の用……?」


「あなたの魔力を測定したい。

 身体的な危険は出ない範囲で行う」


めちゃくちゃ危険そうな言い方なんだけど!?


セレナがすっと間に入る。


「エリシアさん。アルスは人間です。

 魔力だけの標本じゃありません」


エリシアは無表情のまま返す。


「わかっている。だから丁重に扱う。壊さない」


丁重で壊す可能性を感じるのやめてほしい。


ザンが腕を組んで立ちふさがる。


「俺たちが同行する。絶対にだ」


ヴァイスも付け加える。


「“研究”なら君だって否応なく危険を伴うはず。

 その場の安全を保証してもらう」


エリシアはわずかに黙り――

そして淡々と頷いた。


「……了承。全員同行可。

 ただしアルスへの干渉は最小限に」


(最小限って何!?)


しかしそれ以上突っ込む暇もなく、少女は席に戻っていった。


席についた彼女の姿は、

どこにでもあるただの静かな優等生に見える。


周囲の視線は僕とエリシアへ集中していた。


(……これからどうなるんだろう)


騒がしい、けど嫌じゃない。

怖い、けど不思議と胸があたたかい。


新しい誰かが現れるということは――

僕の日常が、またひとつ動きだすということだ。


どんな方向に進むのかは、まだ誰にもわからないけれど。


(守りたいって思うものが増えていく)


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