月夜桜の岸辺
船団が辿り着いたのは、月夜に咲く桜の岸辺だった。
灯を流した海の記憶が、ここで花となって揺れていた。
兎子は、桜の下に立ち、風を感じていた。
その風は、言葉にならない声だった。
それは、灯の誓いが芽吹いた“風の庭”の始まり。
グラナータは、湖に手を伸ばした。
水面が揺れ、ダリアの声が響いた。
「あなたは、わたしを忘れたのではなく、抱いてくれた。」
乗組員たちは、それぞれの桜に触れた。
シルバーフォックスは、古代文字が花弁に浮かぶのを見た。
兎子は、星の歌が桜の中で響いているのを感じた。
桜は、記憶の花だった。
それは、痛みも、喜びも、選択も、すべてを抱いて咲いていた。
そして、風が吹いた。
その風は、庭をつくった。
言葉にならないものが、風として共鳴した。
グラナータは語った。
「この庭は、わたしたちの記憶。
この庭は、わたしたちの選択。
この庭は、わたしたちの存在。」
月が高く昇り、桜が光を放った。
それは、灯の誓いが咲いた瞬間だった。
そして、船団は知った。
この岸辺は、終着ではなく、始まりだった。
風の庭は、ここから広がっていく。