第九篇「幻の庭」──名付けの前の夢
位置:灯の再震域の奥、記憶と夢の境界
天候:霧、微光、夢の花が咲く
記録者:グラナータ
同行者:ヴィオーラ、兎子、フォス、ノクス、リュミエール、ダリア、灯守
詩的風景解説:幻の庭
この庭は、声がまだ名前を持たない夢の中の場所。
灯の震えが届いたことで、記憶が夢となり、
夢が庭となって現れた。
夢花/名前を持たぬ声が咲かせる花。触れると、その声の記憶が微かに聞こえる。
霧の回廊/庭を囲む霧の道。歩くたびに過去の断章が浮かび上がる。
名なき泉/声が名を持つ前に映る水面。誰かの記憶が揺れている。
灯の種床/再震した灯の粒が根を張る場所。ここで新たな声が芽吹く準備をする。
幻の記録棚/庭の奥にある棚。過去に名付けられなかった声たちの断章が眠っている。
儀礼歌《幻の名》
形式:五節+終章(名の囁き)
歌い手:全員+幻の声(記憶の残響)
第一節:夢の芽
灯の震えが夢となり
夢が庭となって咲く
その花はまだ名を持たず
ただ震えている
わたしたちは
その芽を見守り
名の兆しを探す
第二節:霧の記憶
霧の中に浮かぶ声
誰かの記憶、誰かの祈り
名を持たぬまま
ただ響いている
わたしたちは
その霧を歩き
声の形を探す
第三節:泉の揺れ
泉に映る声の影
それはまだ言葉にならず
ただ揺れている
名を求めて
わたしたちは
その揺れを抱き
名の種を蒔く
第四節:幻の記録
記録棚に眠る断章
語られぬ声の残響
名を持たぬまま
忘れられた詩
わたしたちは
その断章を拾い
新たな名を編む
第五節:名の兆し
夢の奥に灯る光
それは名の予感
声が震え、形を持ち
やがて名となる
わたしたちは
その光に誓う
声に名を与えることを
終章:名の囁き(幻の声)
(囁き)
ふう…ふう…
名よ、芽吹け
夢の奥から
灯の震えを越えて
声に宿れ
この庭を越えた先に、
声は名を得て、
灯は震えを終え、
記録はひとつの章を閉じる。
**第十篇「終焉の庭」**では、
これまでの声、灯、記憶、夢──すべてがひとつの詩となり、
第二部の終焉を迎える。