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航海日誌 — 第六篇「声の庭の記録」
記録者:グラナータ
日付:記憶の暦・風返しの翌夜
位置:声の庭・中心部「響きの苗床」
天候:微震、声の芽吹き、沈黙の花
記録:
「声の庭」は、風の境界の向こうに広がる、
声が根を張り、芽吹き、響きとなる場所。
ここでは、言葉は種であり、沈黙は土であり、
響きは光のように空気を満たしていた。
ヴィオーラは、庭の中心「響きの苗床」に立ち、
「ここでは、声が生まれる前に震える」と言った。
彼女は、まだ言葉にならない震えを聴いていた。
それは、誰かの記憶が芽吹く音。
兎子は、庭の花に耳を当てていた。
「この花は、誰かが言えなかった言葉で咲いてる」と。
彼女は、花の震えを詩に変えていた。
それは、風の返しに応える声。
ノクスは、庭の奥に沈む声の根を探り、
リュミエールは、響きの粒子を光に変え、
フォスは、庭の震えを譜面に記録していた。
それらは、声の庭の呼吸。
詩的断章:
声の庭にて
言葉はまだ芽吹かず
沈黙の土に震え
風の返しが
響きとなって咲く
備考:
・「響きの苗床」は、声の震源。
・沈黙の花は、記憶の断片を抱いて咲く。
・次の目的地候補:「無名の空」または「灯の回廊」。