航海日誌 — 第三篇「沈黙の泉の訪問記録」
記録者:グラナータ
日付:記憶の暦・霧晴の夜
位置:夜の庭・深層部「沈黙の泉」
天候:無音、微光、水面の震え
記録:
「沈黙の泉」は、夜の庭の最も静かな場所にある。
風も霧も届かず、ただ水面が、誰かの記憶に触れるように震えていた。
泉の周囲には、言葉にならなかった声が沈んでいる。
それらは、音ではなく、重さとして感じられた。
ヴィオーラは泉の縁に座り、
「ここでは、話すことが祈りになる」と言った。
彼女は声を出さず、ただ泉に手を浸した。
その瞬間、水面に微かな光の輪が広がった。
兎子は、泉のそばで静かに跳ねながら、
「この水は、誰かが泣いたあとに残したもの」と呟いた。
彼女の耳には、沈黙の奥で響く歌が聴こえていたらしい。
ノクスは泉の底を見つめ、
リュミエールは水面に夢を映し、
フォスは、泉の周囲に残された足跡を記録していた。
それらは、誰かがここに来て、何かを置いていった証。
詩的断章:
沈黙の泉にて
声は沈み、光は揺れる
語られぬ祈りが
水面に輪を描き
記憶は静かに息をする
備考:
・泉の水は、触れると微光を放つ。
・沈黙の中に、複数の未記録の声の痕跡あり。
・次の目的地候補:「灯の残響室」または「夢の潮の入り江」。