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航海日誌 — 第一篇「灯の根より出航」
記録:
灯が震えた夜、
わたしたちは「風の航路」を越え、夜の庭に降り立った。
沈黙は土に染み込み、記憶は根を張った。
その中心にあるのが──灯の根。
ヴィオーラは、灯に触れながら静かに語った。
「この根は、誰かの声が眠っている場所。
まだ言葉にならないけれど、確かにここに在る。」
兎子は、根の周りを跳ねながら詩を歌った。
その旋律は、風ではなく、土を震わせた。
わたしの胸の奥で、何かが応えた。
ノクスは沈黙を聴き、リュミエールは夢を植え、
フォスは灯の残響を拾っていた。
夜の庭は、風のない世界。
でも、声は確かに響いている。
舟は、まだ動かない。
それは、次の震えを待っている。
わたしたちは、灯の根のそばで詩を編みながら、
次の航路を探している。
備考:
・灯の根は、記憶の震源。
・沈黙が深いほど、声は遠くまで届く。
・次の航路は「夢の潮」か「記憶の裂け目」か──未定。