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星の残響
ナイア・ヴェルムが沈んだ夜、兎子は波間に浮かぶ光の粒を見つけた。
それは、星の歌の断片――誰かが忘れた未来の旋律。
彼女はその歌を耳にすると、胸の奥がざわめいた。
それは、まだ見ぬ自分の声。
それは、選ばなかった航路の記憶。
「この歌は、誰のもの?」
「わたしが、まだ知らないわたし?」
兎子は、星の歌を辿る旅に出る。
それは、夢の中で星座を渡る航海。
それは、記憶の海を泳ぐ旅。
彼女は夢の中で、未来の自分と出会う。
その姿は、静かで、少し寂しげで、でも確かに強かった。
「あなたは、わたし?」
「わたしは、あなたになれる?」
星々は答えない。
ただ、歌が続いていた。
そして兎子は気づく。
この歌は、誰かの記憶ではなく、
“これから紡ぐわたし自身の物語”なのだと。
彼女は目を覚まし、夜明けの海に立つ。
星の歌は、風に乗って船団を導いていた。
兎子は、未来を選ぶ者となった。
その選択は、まだ未熟で、でも美しかった。