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再び帆を張る
庭は 語った
沈黙は 響きになった
灯は 記憶を抱いた
わたしたちは 聴いた
風の民の声なき声を
石の震えを
灯の揺らぎを
でも 庭に留まることはできない
わたしたちは 旅の者
語りを運ぶ者
灯を咲かせる者
帆を張る
風が 応えてくれる
庭の響きを 背に受けて
わたしたちは 進む
次の地平へ
まだ語られていない庭へ
まだ響いていない沈黙へ
兎子は 旋律を整える
グラナータは 帆を撫でる
器は 微かに震えている
それは 庭の記憶
それは 風の民の祈り
それは わたしたちの灯
航海は 再び始まる
でも わたしたちは もう
沈黙を恐れない
それは 響きになると知っているから
それは 灯になると信じているから
風よ
次の海へ
わたしたちを 運んでくれ