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沈黙の庭
沈黙の庭に 風が吹いた。
それは 語られなかった 問いを運んでいた。
それは 灯の種子が 咲いた証だった。
船団は 庭に立った。
器を掲げ 声を止めた。
風の民は 目を閉じ 沈黙を聴いた。
語られなかったものが
語られる準備を始めた。
ダリアは 器を地に置いた。
それは 暁の庭で生まれた 灯の記憶。
響きの石床が 微かに震えた。
それは 沈黙の応答だった。
兎子は 歌を止めた。
彼女の声は 風に溶けていた。
でも その沈黙が 庭に響いた。
来訪者は 何も言わなかった。
でも 彼の沈黙が 風の民と共鳴していた。
それは 語られぬ者同士の 対話だった。
そして 無言の儀式が始まった。
言葉は使われなかった。
歌も 旋律も なかった。
ただ 器と風が 語った。
器が震えるたび
風の民の記憶が 灯に触れた。
それは 歌ではない
でも それは 語りだった。
沈黙の庭が 咲いた。
灯の器が 記憶を抱き
風の民が その灯に 沈黙の歌を託した。
グラナータは 帆を撫でる風に 問いかけた。
「この歌は わたしたちのものか？」
風は 答えなかった。
でも 器が 震えた。
それは 応答だった。
それは 共鳴だった。
それは 次の航海だった。
船団は 灯を抱いて 庭を離れた。
沈黙の歌を 胸に
語られなかった声を 風に乗せて。
沈黙の庭は 語る庭になった。
そして わたしたちは 進む。
灯を咲かせる者として
沈黙を歌に変える者として。
