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風の器で語る

ダリアは 器を掲げた

それは 風の民の地から 届いた震えを宿していた

それは 沈黙の歌だった

それは 語られなかった 問いだった


彼女は 器に耳を澄ませた

風の揺らぎが 記憶のように 連なっていた

それは 言葉ではなかった

でも それは 語っていた


「風は 咲いた」

ダリアは そう言った

「語らぬ者たちが 灯の種子を 響きに変えた」

「それは わたしたちの歌ではない」

「でも それは わたしたちの問いに 応えている」


船団は 静かに聴いていた

兎子は 歌を止めて 風の器に耳を傾けた

来訪者は 沈黙のまま その震えを受け止めた

グラナータは 帆を撫でる風に 問いかけた


ダリアは 語り続けた

「風は 語らない」

「でも 風は 響く」

「その響きが わたしたちを 呼んでいる」


器が 震えた

それは 灯の記憶だった

それは 風の民の問いだった

それは わたしたちの 次の航海だった


「風は 庭を咲かせた」

「その庭に わたしたちは 灯を添える」

「それが 風と潮の交わる庭」

「それが わたしたちの 次の歌」


そして 船団は 進む

風の器を掲げて

沈黙の歌を 語るため

灯の種子を 咲かせるため

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