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風と潮の交わる庭
― グラナータの語り ―
風が 違っていた
それは 潮の匂いを持たず
それは 空の色を変えず
でも わたしの器を震わせた
わたしは 聴いた
それは 歌ではなかった
それは 語られなかった 声だった
暁の庭で 灯を咲かせたとき
わたしたちは 種子を風に託した
それが 今 戻ってきた
風の民――
語らぬ者たちが 響きを咲かせた
その歌が 海を越えて わたしに届いた
わたしは 帆を張る
それは 風に応えるため
それは 種子の咲いた地へ 向かうため
この航海は 記憶の回収ではない
これは 響きの継承
これは 沈黙との対話
わたしは 風の歌を 聴いた
だから わたしは 語る
だから わたしたちは 進む
風と潮が 交わる庭へ